• スミレ
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スミレの花。「スミレ」はViola mandshurica(マンジュリカ)の種名であり,スミレ一般をあらわす名前でもあります。種名が普通の植物名と一緒という例は少なくて,例えば,タンポポの場合,タンポポという種名をもつものはなく,カンサイタンポポ,トウカイタンポポ,セイヨウタンポポなどが種名となります。サクラやウメ,バラなども種名としては存在しません。

「スミレ」という種名があることは,スミレ科を代表する種名があるということでシンプルでよいことのようですが,それはそれで不便なことでもあります。スミレといった場合,マンジュリカをさすのか,スミレ一般をさすのかわからないからです。
似た例としては,アゲハチョウがあります。アゲハチョウ科,アゲハチョウ属という科名,属名とともに,種名としてもアゲハチョウが存在します。種名としてのアゲハチョウは単にアゲハと呼ばれることが多く,紛らわしい場合はナミアゲハと呼ぶことが定着しています。
といって,マンジュリカを「並スミレ」とすることはスミレ属の代表にふさわしくありませんし,「本スミレ」とすれば他のスミレが偽者のようです。
園芸上では,種としてのスミレをさす場合は「マンジュリカ」とよんでいるそうです。

日本を代表するスミレのようですが,学名のマンジュリカ(mandshurica)は「満州の」という意味で,朝鮮,中国に広く分布しています。

「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」による,スミレの特徴は次のとおり。
・草丈…7~15cm
・葉…へら形で斜め上に展開する。
 花期の葉身は長さ5~8cmで,葉柄には,はっきりとした翼がある。
 毛の有無には変化が多く,無毛のものから全体が微毛におおわれるものまである。
 葉の表面は緑色,裏面は白っぽい緑色のものが普通だが,紫色を帯びるものもある。
・花…直径2cm前後で濃紫色。
 唇弁の中央部は白地に紫色のすじが入り,側弁の基部には毛がある。
 距はふつう細長いが,変化が多い。
 萼片の付属体には切れ込みはない。
・根…褐色(重要な特徴)