• カワトンボ

カワトンボの雄。何回もシャッターを押しながら,そっと近づきました。じっとこちらを見て警戒しています。あと1メートルにまで近づくとさすがに飛び立ちました。

雌の翅は透明ですが,雄の翅は透明型とだいだい色型があります。

家にあった,ちょっと古い昆虫図鑑(北隆館「日本昆虫図鑑」(1956年))には,次のように書いてありました。

『かわとんぼ Mnais strigata Selys

雄は体金属緑色であるが,老いたものは表面一様に白粉を装う。
雌は体色黄味を帯びた金属緑色である。
翅色は型によって著しく異る。
・・・・・・
近畿以西には雄雌に淡橙色型を,南九州には雄の褐色型を産する。
この両型の雄には翅の前縁に沿った不透明部を欠く。
腹長46mm内外,後翅長40mm内外。
北海道・本州・四国・九州に分布し,春季流水附近に見られる。
本種の型に関する問題は今後なお慎重な考究を必要とする。〔朝比奈〕』

執筆者の「朝比奈」とは,日本蜻蛉学会初代会長の朝比奈正二郎氏です。
その後,朝比奈氏は1976年に,カワトンボをヒガシカワトンボ,ニシカワトンボ,オオカワトンボの3亜種に分けました。以降の図鑑はこの説によったものが多いようです。

学習研究社「学研生物図鑑 昆虫Ⅲ」(1990年)では,ニシカワトンボ(Mnais pruinosa pruinosa),ヒガシカワトンボ(Mnais pruinosa costalis),オオカワトンボ(Mnais pruinosa nawai)に分け,ヒガシカワトンボ,オオカワトンボはニシカワトンボの亜種としてありました。

さらに2004年12月に,DNA分析の結果により,ヒガシカワトンボとオオカワトンボをあわせてオオカワトンボ(Mnais costalis)とし,ニシカワトンボはカワトンボ(Mnais pruinosa)とされました。

さらにさらに2007年3月,和名の混乱を避けるため日本蜻蛉学会の和名検討委員会から,オオカワトンボはニホンカワトンボ(Mnais costalis),カワトンボはアサヒナカワトンボ(Mnais pruinosa)とすることが提唱されています。

(和名の変遷については,ネットで調べた情報をまとめました。誤りがあるかもしれません。)