• アリドオシ
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アリドオシの花。
4本の雄しべと,先が4つに割れた雌しべが1本あります。花を縦に切って中を見てみると,長い筒のなかには短毛が密生していました。

この株の花では,花柱が長く柱頭が飛び出ています(長花柱花)が,同じアリドオシでも花柱が短い花(短花柱花)を咲かせる株もあります。
こうした,同じ種のなかで花柱の長さの異なる花を異形花柱花といい, アリドオシのほか,ナス,サクラソウ,アサザ,サツマイナモリなどにも見られます。

これは,できるだけ自家受粉を避け他家受粉をするための仕掛けとなっています。
昆虫が花から花へ渡り歩くと,長花柱花の柱頭には短花柱花の花粉が,短花柱花の柱頭には長花柱花の花粉がつくことになります。

新しい花が咲いているのに,去年の実が赤いまま,いくつかついていました。アリドオシが赤い実をいつまでもつけているのは,昔からよくしられており,名前の由来になったとする説もあるようです。

「牧野新日本植物図鑑」には次のように書いてありました。
『液果は丸くて赤く熟し,径5~6mm,長い間着いたままになっており,翌年の花時にさえまだくっついている。
・・・
〔日本名〕針のするどさを蟻を刺し通すほどだといったものである。果実が永く茎についているから在通しというのは俗説である。』