• イボテングタケ
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南禅寺山門周りの松林にテングタケが生えていました。
毎年のことで珍しくもなんともないのですが,テングタケについてネットを調べていたところ,意外なことを知りました。
今までテングタケと呼んでいたものは数年前に,「テングタケ」と「イボテングタケ」の2種類に分けることになったそうなのです。

従来日本でテングタケと呼ばれていたものを遺伝子解析した結果,Amanita pantherinaともう一つ別な種が混同していることがわかり,Amanita pantherinaをそのままテングタケといい,もう一つの種を新しくAmanita ibotengutakeと名づけ,和名をイボテングタケというそうです。

すこし前の図鑑である,「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(1990年)のテングタケの解説には次のように書いてあります。
『テングタケ A.pantherina(DC.:Fr.)Krombh
傘は径4~25cm,生長すれば平らとなり,ついには中央部がややくぼむ。表面は灰褐色~オリーブ褐色で,白色のいぼを多数散りばめ,周辺には放射状の溝線がある。ひだは白色で密。柄は5~35cm×6~30mm,白色,根もとはふくらみ,つぼの名残りが指輪状となって残る。つばは白色,膜質。
胞子は9.5~12×7~9μm,広楕円形,非アミロイド。夏~秋,針葉樹林(アカマツ,クロマツ,トウヒ),広葉樹林(ブナ,クヌギ,コナラ)ともに発生するきのこで,ベニテングタケと同様ハエ捕りに用いられてきた。』

これらの特徴は今となっては「テングタケ」と「イボテングタケ」を混同したものとなっており,写真も現在は「イボテングタケ」と呼ばれているもののようです。

この件に関する研究論文(→要旨)は2002年に発表されたそうですが,2003年発行の学習研究社「日本の毒きのこ」では早速二つを分けて書いてあります。

『テングタケ Amanita pantherina
夏~秋に,針葉樹林や広葉樹林の地上に発生する。中型で,傘は灰褐色~オリーブ褐色,表面には白色のいぼが多数散在し,ふちには条線がある。ひだは白色で,密。柄の表面は小鱗片~ささくれ状となり,上部にはつばがある。柄の基部は球根状に膨らみ,つぼの名残がえり状となって残る。日本でも古くから認識されてきた毒このこで,傘の表面の模様が豹柄(ひょうがら)に見えることから,昔は「ヒョウタケ」とも呼ばれていた。なお,長らくイボテングタケと混同されてきたが,最近両者は異なる種であることが明らかとなった。……』

『イボテングタケ Amanita ibotengutake
夏~秋に,針葉樹林や広葉樹林の地上に発生する。大型で,傘は灰褐色~オリーブ褐色,表面には白色のいぼが多数ついており,ふちには条線がある。ひだは白色。柄は白色~淡黄色をしており,小鱗片からささくれ状となる。つぼはとれやすい。球根状の柄の基部には,つぼの名残が何重かの環状となって残る。このきのこから有名な毒成分であるイボテン酸が発見された。長らく混同されてきたテングタケと比べると,「大型である」,「つばがとれやすい」,「柄の部分のつぼが何重かの環状になる」などの違いが見られる。しかし,外見上の違いが明瞭でないこともあり,その場合には顕微鏡による組織の比較が必要である。』

南禅寺山門まわりに生えているものは,どうやらイボテングタケの方のようです。
従来の図鑑にテングタケとして載っている写真は,イボテングタケであるものの方が多いので,しばらくは混乱しそうですね。

テングタケに似たものには,さらにテングタケダマシもあります。
特徴は,傘やつぼにあるいぼが「細かく砕いたピーナッツ」のように角錐状になっていることとだとか。