• ビロードツリアブ
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  • ゴウダソウ
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ムラサキケマンの花に奇妙な虫がとまっていました。
花の蜜を吸っているわけでもなく,じっと動きません。
朝早くて体が温まっていないのでしょうか。

ハチかガの仲間かなと思ったのですが,アブのなかまでした。
ビロードツリアブといいます。

保育社「原色日本昆虫図鑑(下)」(1990年)には次のように書いてありました。

ビロウドツリアブ Bombylius major LINNAEUS
体長7~11mm。翅長9~13mm。体は太短く,地色は黒色で,白色長毛と淡黄褐色毛を密生する。触覚は黒色で細い。口吻は黒色で長く体長の7割の長さ。胸部背面には黒色長毛がまじる。あしは細い。翅は細く,基部と前半部は黒褐色。腹部は幅広く,側面と尾端には黒色長毛がまじる。成虫は春に現れる。幼虫はヒメハナバチ科の幼虫に寄生する。分布 日本全国;北半球。

口吻は体長の7割の長さと書いてあります。確かに長い口吻です。
しかも先がとがっていて,刺されたら痛そうな感じがします。
でも刺すことはないようです。

アブのなかまには,動物の血を吸うもの,昆虫の体液を吸うもの,花の蜜や花粉を食べるものがいます。
ビロードツリアブは花の蜜を食べるタイプです。
長い口吻をつかって,飛びながら花の蜜を吸うのです。
[写真3]を見ると,口のまわりに花粉がついているのがわかります。

花の蜜を吸うときに,ホバリングしながら空中に静止している姿が,吊り下げられているように見えることから「吊りアブ」の名がつけられています。

「学研生物図鑑 昆虫Ⅲ」(1999年)には,ビロードツリアブについて次のように書いてありました。

春にあらわれ,日当たりのよい林縁部などでよく見かけるふつう種。外見はマルハナバチとそっくりで,全面に黄色の軟長毛を密生し,腹部背板(第1節をのぞく)の各後縁には黒色の太い毛の列がある。雄の複眼は上部で接する。長い口吻(こうふん)は飛びながら花蜜を吸うのに適している。幼虫はAndrena属,Halictus属などのヒメハナバチ科の幼虫に寄生する。

「雄の複眼は上部で接する」ので,複眼が離れているこの個体は雌ですね。