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岡崎付近のソメイヨシノ,今朝時点の開花状況は3分咲きといったところでした。
3月19日に開花宣言が出たものの,寒の戻りで,開くのを躊躇しているつぼみが多いようです。
通常,開花宣言から1週間後頃が満開の時期とされているのですが,満開にはまだ日がかかりそうです。
今週末あたりが見ごろかもしれません。

岡崎付近の街路樹は古いものはソメイヨシノで,比較的新しく植えられたものはオオシマザクラのようです。

『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,ソメイヨシノについて次のように書いてありました。

葉は有柄で互生,倒卵形,長い鋭尖頭,ふちには針状の重きょ歯があり長さ10Cm内外,葉身葉柄は無毛,上面は緑色,裏面は白味をおびた淡緑色。葉柄上部に通常2腺がある。4月初め,新葉より先に散形状に密集した淡紅白色の数個の花を開き,全枝が花でうずまり美しい。花柄は長く細毛がある。がくは短い筒形で下部がふくれ細毛があり, 5がく片は水平に開出する。花弁は5,楕円形,凹頭,雄しべは多数。花柱には微毛がある。

オオシマザクラについては,次のように書いてありました。

葉は有柄,互生し倒卵状長楕円形あるいは倒卵状楕円形,先は長く伸びてとがる。基部は円形,長さ10Cm内外。ふちには先がのげ状にとがったきょ歯があり,両面とも無毛でなめらかで裏面は白色をおびず,緑色。花は4月に淡緑色またはやや赤褐色の新葉と同時に出て開き,大形で径3~4cmにもなり,芳香を放つことがある。白色あるいはかすかに紅色をおび枝上一杯につく。花序の花軸はヤマザクラよりも長く,がくとともに淡緑色で紫色をおびず,毛もない。がく筒は筒状,下部はふくらまず,がく片は皮針形で水平に開き,多少ともきょ歯がある。花弁は5,水平に開き,楕円形,凹頭 雄しべは多数,雌しべは1本。子房,花柱ともに無毛,核果は球形,ヤマザクラよりも大形で紫黒色に熟する。

ソメイヨシノは「4月初め,新葉より先に散形状に密集した淡紅白色の数個の花を開き,全枝が花でうずまり美しい」ですが,オオシマザクラは「花は4月に淡緑色またはやや赤褐色の新葉と同時に出て開き」ます。

[写真1]のソメイヨシノは花だけが開き,[写真2]のオオシマザクラは花と同時に葉も伸びています。

花と葉が同時に伸びるのは,ヤマザクラの特徴でもあります。
仁王門通りの植えられているサクラの木は,花と葉が一緒に出ていたので,はじめヤマザクラだろうと思っていました。
しかし,よく調べてみるとヤマザクラではなくオオシマザクラのようです。

ヤマザクラの若葉は赤褐色をしていますが,このサクラの若葉は緑色をしています。
オオシマザクラの若葉は「淡緑色またはやや赤褐色」で,「ふちには先がのげ状にとがったきょ歯があり,両面とも無毛でなめらかで裏面は白色をおびず,緑色」です。

[写真7]はオオシマザクラの若葉。
表裏とも緑色で無毛です。葉の鋸歯は細く鋭くて,先はのぎ状になっています。
写真にある「腺体(せんたい)」とは,蜜液を分泌する突起です。
ここから蜜を出してアリを誘引し,葉を食い荒らすガの幼虫などから守ってもらっているといわれています。

[写真3]は,オオシマザクラとソメイヨシノの花を並べたところ。
[写真4」は,切断面を並べたもの。
一見して,オオシマザクラの花の方が大きいですね。
写真ではよくわかりませんが,花の色はオオシマザクラのほうが白く,ソメイヨシノは少し紅みを帯びた,いわゆるサクラ色をしています。

花をたくさんつけている状態をみると,ソメイヨシノは萼やつぼみも紅みを帯びているので一層サクラ色の印象が強まります。
オオシマザクラの方は花びらが白く大きくて,薄緑色の若葉も一緒に出ているので,色としてはサクラ色という印象はうけませんね。

[写真5]はソメイヨシノの萼と花柄,[写真6]はオオシマザクラの萼と花柄。
ソメイヨシノは「花柄は長く細毛がある。がくは短い筒形で下部がふくれ細毛があり」ます。
オオシマザクラは「がく筒は筒状,下部はふくらまず,がく片は皮針形で水平に開き,多少ともきょ歯があ」ります。

ソメイヨシノは萼,花柄ともに細毛がありますが,オオシマザクラには毛がありません。
オオシマザクラは葉にも毛がなく,柔らかく食べやすいので,塩漬けにした葉をサクラモチに使用します。

萼筒の形もよく見ると違います。
ソメイヨシノは萼筒の付け根部分がふくれていますが,オオシマザクラはふくれずにそのまま細くなって花柄につながっています。

ソメイヨシノの名前について,前書には次のように書いてありました。

染井吉野。はじめ東京の染井の植木屋から世にひろがったためである。 元来植木屋では本種を吉野と呼んで桜の名所,吉野山の桜になぞらえていたが,単に吉野といったのでは,吉野の山桜と混同するので,明治5年(1872)にはじめて染井吉野の名がつけられた。 本種は明治維新直前頃にはじめて東京に出現したもので,江戸の桜ではないであろうから, これにyedoensisの種名をつけたのは適切ではない。 朝鮮の済州島に本種が自生することがわかっているが,一般に栽植されているものは,系統を異にしているであろう。 ウバヒガンとオオシマザクラの雑種であろうというのが一番可能性がある。

(ソメイヨシノの系統については2007年に,DNA解析に結果,コマツオトメのようなエドヒガン系品種を母親に,オオシマザクラを父親として起源したことを示唆している,との研究結果が発表されています。→ここに少し詳しく書いています

オオシマザクラの名前については,次のように書いてありました。

大島桜は伊豆大島に産するからである。 ヤマザクラに近縁であるが,葉のきょ歯の先端がのげ状にとがること,葉の裏が白色をおびないこと等によって区別することが出来る。 ソメイヨシノは本種とエドヒガンの雑種であるという。 本種から園芸品としていろいろな品種ができたのが,サトザクラである。