• ヒガンバナ
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今の時期いたる所で,ヒガンバナの花を見ます。
人知れず潜み,まるでしめし合わせたごとく一斉に花を咲かます。

同じ時期に一斉に花を咲かせるのはソメイヨシノと同じですね。
ソメイヨシノの開花はサクラ前線といわれ,南から北上しますが,ヒガンバナの開花前線は北から南へ下がってゆきます。

ヒガンバナもソメイヨシノと同じく3倍体で,種子で繁殖できません。
どの個体もクローンで,同じ遺伝子を持っていることになります。
それで開花時期が揃うのでしょうか。

葉が出るのに先立って花を咲かせるところも一緒です。

違うのは,ソメイヨシノは国内でつくり出されたものですが,ヒガンバナは大陸から海を渡ってやって来たところです。

『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,ヒガンバナについて次のように書いてありました。

江戸時代以降には多くの本草書や文学作品に書き記され,1000以上の里呼び名(方言名)をもつほど日本人の心をとらえ親しまれている花なのに,「古事記」や「日本書紀」に始まる古典に現れていないのはなぜだろうか。照葉樹林を生活の場とした縄文時代の人びとが大陸から持ち込んだ史前帰化植物という説,稲作にともなって伝来した救荒植物のひとつという説,海流に運ばれた漂着植物とする説など,さまざまな説がとなえられている。

日本に分布するものはすべて3倍体(2n=33)で,もっぱら鱗茎の分裂によって繁殖しているが,中国には3倍体(9月開花)とともに種子で繁殖できる2倍体(2n-22,8月開花)が分布している。そこで日本のものは有史前,縄文時代または弥生時代に救荒植物として大陸から持ち込まれたものと考える人が多い.鱗茎にアルカロイドを含む有毒植物だが,水でさらせば良質のデンプンがとれる。秋の彼岸ごろに咲き,墓地に多く咲くことから「彼岸花(ひがんばな)」「死人花(しびとばな)」「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」などとよばれる。