• ヒメヤママユ
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歩道にヒメヤママユがひっくり返っていました。[写真3]
動いていないので,死んでいるのかと思いましたが,小枝で触ると,肢を動かします。
ひっくり返して表を向けると,後翅の目玉模様が見えています。[写真1]
ヒメヤママユの後翅の目玉模様は,普段は前翅に隠れていて,身に危険が迫った時にふいに相手に見せて威かすのに使われます。
威嚇のポーズをとるだけの元気は,まだあるようです。

翅の模様はかなり派手ですが,渋い美しさがありますね。
東南アジアの民芸品を連想させます。

恐る恐る棒の先に乗せて,顔を撮っているとき,意外な感情が湧きおこりました。
カワイイのです。[写真4]
くりくりとした大きな目,大きな耳のような触覚,もこもことした体。
ガに対して,カワイイと思ったのは初めてです。(ついに一線を越えてしまったのでしょうか?)

今まで見たヒメヤママユは,腹部がぽってりと太くて,生理的に受け付けないものがありました。
[写真5]は過去に写したヒメヤママユです。
(上:2004年11月6日,下:2005年11月2日)
どちらも腹部が太くて,地色も今回のものよりは薄い色をしています。
これらは雌で,今回のものは雄のようです。

保育社『原色日本蛾類図鑑(下)』(1971年)には,ヒメヤママユについて次のように書いてありました。

 開張♂85~90mm.♀90~105mm.♂の触角は羽毛状。♀の触角は両櫛歯状。♂の地色はオリーブ褐色であるが♂(♀の誤植?)は明るい。成虫は10~11月に出現し燈火に飛来する。幼虫はサクラ・ナシ・ウメ・クリ・クヌギ・ケヤキ・アカシデ・エゴノキ・ガマズミ・クルミ・ミズキ・ウツギ・イタヤカエデ・タカオカエデ等の葉を食し,1令幼虫は黒色であるが成長するに従い黒色部が少なくなり,中令では背面のみ黒色,終令に於ては体長55mm位になり,体は円筒形黄緑色で淡緑色の短毛を密生し,体側に黄白色の気門下線を走らせる。気門は淡褐色である。5月中旬頃老熟し営繭する。繭は落葉間或は枝間に作られ楕円形,網目状でややクスサンの繭に似るが軟弱である。卵は樹皮上に不規則に産付され,扁幼な楕円形で長さ2.5mm位。卵越冬。分布:北海道・本州・四国・九州・対馬・屋久島。

雄と雌の違いをまとめると,
・雄は雌より小柄。雄は開張85~90mm,雌は90~105mm。
今回の個体は開張87mm。
・雄の触角は羽毛状,雌の触角は両櫛歯状。
雄の触覚の方が幅広く,雌の方が狭い。
・雄の地色はオリーブ褐色,雌は明るい色。
同書では「♂の地色はオリーブ褐色であるが♂は明るい」とありますが,後の「♂」は「♀」の誤植ではないかと思います。

じっくりと写真撮影するため,膨らませたビニール袋に入れて持って帰りました。
袋から取り出すと,翅をふるわせています。
ずいぶん弱っているのだなと思ったのは勘違いで,実は威嚇していたようです。
写真を撮ろうとしていると,そのまま飛んで行ってしまいました。