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サルスベリの花粉

2010年9月10日
  • サルスベリ
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サルスベリの花が咲いています。
枝先に紅い花をたくさんつけている独特の樹形は,遠くからでもよくわかります。[写真1]

サルスベリの名は,木のはだがつるつるしてサルもすべり落ちるというところからきています。[写真3]
この話は一度聞くと忘れられませんね。

表皮がはがれ落ちて,肌がつるつるしている木は,サルスベリだけではありません。
昔はそうした木もサルスベリと呼んでいたようです。
小学館の『日本国語大辞典』(1981年)には,「ねじき」「やまこうばし」「なつつばき」「ひめしゃら」「りょうぶ」の異名としてあります。
方言としても,これらの植物の名があげられています。
京都の方言としては「なつつばき」を「さるすべり」というようです。

[写真4]は南禅寺天授庵のサルスベリの木。
とても背の高い木で,6~7mはありそうです。
サルスベリはあまり大きくなるイメージがなかったのですが,結構大きくなるものですね。

[写真2]は花の断面です。
雄しべは,花の中心部に密集している丈の短いものと,外側にひょろひょろと伸びている細長いものと2種類あります。
雌しべは1本,長い方の雄しべと同じような形をしています。

中心部の雄しべは黄色い色鮮やかな花粉をたくさん付けていますが,これは虫をおびき寄せるための偽物らしいです。
本物の花粉は,外側の細長い方の雄しべから放出されます。

多田多恵子著『したたかな植物たち』(2002年)には次のように書いてありました。

サルスベリの花を観察すると,長短2種頬の雄しべがある。花の中心部でよく目立つ多数の黄色い雄しべと,長く突き出しているがあまり目立たない紫色の雄しべ,の2タイプだ。受精に役立つのは,目立たない長い雄しべが出す花粉だけ。短くて目立つ雄しべは,花粉は出すものの,それは肝心の染色体(DNA)を含んでいない見かけ倒しの二セ花粉。虫をおびき寄せるための,安物のイミテーションなのである。

サルスベリの花粉に関する話題をもう一つ。

サルスベリは中国原産で,日本へは室町時代後半に渡来したとされていましたが,平等院鳳凰堂の阿字池を土壌調査したところ,940年頃の地層にサルスベリの花粉が見つかり,渡来時期が600年ほど早まる可能性があることが分かったそうです。

2010年5月25日付けの京都新聞に次のような記事が載っていました。

 京都府立大の高原光教授(森林科学)が昨年9月,阿字池の池底堆積土を採集した。土に含まれる花粉などを分析し,放射性炭素年代測定調査を行った。その結果,堆積土の泥が940年ごろを境に変わり,花粉の主流はカシ類とイネ科からマツに急激に変化していた。以降にはサルスベリや力エデなど庭園樹木の花粉も―定量確認された。
 平安京ができた8世紀末以降,都や周辺の人口が増え,建材や燃料などとしで利用するため,自然林(照葉樹林)の伐採が進み,アカマツ中心の二次林に変わったとみられる。

サルスベリは江戸時代に入ってから文献に登場するようになることから,従来は室町後半ごろに渡来したと考えられていた。年代の特定にはさらに研究が必要だが,今回の調査で,渡来時期は約6OO年ほど早まる可能性がある。

940年ごろといえば,平安時代中期,摂関政治が成熟した頃です。
894年に遣唐使は廃止されているので,それ以前に遣唐使が持ち帰ったものなのでしょうか。

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