ハシブトガラスが,サクラの木に生えたキクラゲをつついていました。
カメラを向けると,引き抜いたキクラゲを口にくわえて,飛び立ちました。
近くの電線にとまり,こちらをうかがっています。

木の実を食べる鳥は多いですが,木に生えているキノコを採って食べるとは,カラスというのは本当に何でも食べるのですね。

日本で一般的にいうカラスには,ハシブトガラスとハシボソガラスの2種類がいます。
それぞれを漢字で書くと「嘴太鴉(はしぶとがらす)」「嘴細鴉(はしぼそがらす)」。
くちばしが太い種類がハシブトガラス,細い種類がハシボソガラスです。
ハシブトガラスはもともと森林性のカラスで,「カー,カー」と澄んだ声で鳴きます。
一方,ハシボソガラスは開けた環境を好む草原性のカラスで,「ガー,ガー」と濁った声で鳴きます。

昭和30年代,40年代ころまでは,全国的にハシブトガラスよりもハシボソガラスの方が多かったそうですが,現在では都市部でハシブトガラスが増えすぎて問題化しています。

町内で見かけるカラスもハシブトガラスばかりです。
といっても,九条山周辺は山なので,もともとハシボソガラスはいなかったのではないかと思います。
10年ほど前に,ご近所のお婆さんがゴミ置き場に寄ってくるカラスを見て,この頃はアメリカガラスが増えて困ると言っていたのを思い出します。
アメリカガラスは,意地汚く,何でも食べるのだそうです。
アメリカガラスというのは「ハシブトガラス」のことを言っているようです。
「ハシブトガラス」を「アメリカガラス」と呼ぶ例があるのか,ネットで調べてみましたが見つけることはできませんでした。
(「アメリカガラス」というカラスは実際にアメリカにいて,ハシボソガラスに似た北米ではもっとも一般的なカラスらしいです。)

ハシブトガラスはハシボソガラスよりも体が大きくて,くちばしも大きく,額が出っ張っているので,つるりとした東洋人的な風貌のハシボソガラスに対して,欧米人的風貌であるとはいえます。
私は,ハシブトガラスの横顔を見ると何となくグラマン戦闘機を連想してしまうので,アメリカガラスとはよく言ったなと思いますが,ただアメリカガラスを意地汚いことに結び付けることには,鬼畜米兵的な悪意を感じてしまいました。

『山渓カラー名鑑 日本の野鳥』(1996年)には,ハシブトガラスについて次のように書いてあります。

ハシボソガラスとともに全国に広く分布するが,主な棲息場所はやや違っており,林の続いている所にはハシブトガラス,木立ちの点在する農村部にはハシポソガラス,市街地や都市部にはハシブトガラスという棲み分けの傾向が見られる。市街地などでは人間の出すゴミを主要な餌にしており,ゴミ処理場などには特にたくさんの個体が集まる。もともと雑食性で,動物の死体を好んで食べるほか,鳥の卵や雛をとったり,弱った鳥やけものを襲ったりし,また木の実なども食べる。餌を物陰に貯える性質がある。繁殖期にはつがいで生活し,縄張りを持つ。高い木の梢に小枝で椀形の大きな巣を作る。古巣を修理して使うことも多い。産卵期は3~6月,卵数は3~5個,抱卵日数は19~20日位,巣立ちまでの日数は30~35日位である。巣立ち後も長期にわたって家族群で生活する。非繁殖期には数羽~数十羽の群れで行動し,竹やぶ,よく茂った林などに集団ねぐらを持つ。