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ヤマガラの雛

2012年5月4日

ついに,巣立ちの時がやってきました。
その日,巣箱の蓋をあけて中をのぞくと,ヒナたちが1羽もいません。
空っぽです。[写真15]
3月にベランダの巣箱にヤマガラが巣作りを始めて以来,毎朝,脚立を立てて,巣箱の蓋をあけ,なかを撮影するのが日課になっていました。
巣立ちはまだまだ先だと思っていたので,突然空っぽになった巣箱を見たときは,とても意外でした。

ヤマガラのヒナが孵化してから巣立つまでの期間は約12日~17日です。
日にちを数えてみると,ヒナがかえってから既に16日経っており,十分な日が過ぎています。
平和な巣箱の中を離れ,ヒナたちがこれからも無事に生き抜いてくれることを祈るばかりです。

[写真1]~[写真15]に,ヒナの様子をまとめてみました。
以前のエントリー「ヤマガラの卵」では,「今日,4月18日20:40に巣箱の中を確認したところ,親鳥がいました。 ヒナはまだ孵っていないようです。」と書いていますが,翌日の朝見るとヒナがいた[写真1]ので,孵化したのは前日の4月18日のようです。

晩成性であるヤマガラのヒナは,生まれたては丸裸です。
ヒナを寒さから守るため,親鳥は生まれてから1週間ほどは,夜はヒナを抱いて温めなければなりません。
4月18日の夜に親鳥がいたのは,生まれたてのヒナを温めていたからのようです。

晩成性のヒナと,早成性のヒナについて,清棲幸保著『野鳥の事典』(1966年)には次のように書いてありました。

燕雀目の鳥やカワセミ類・カッコウ類・キツツキ類の鳥のようにほとんど赤裸の皮膚のままで孵化する晩成性の雛と,カモ・ガン・キジ・ライチョウなどのように綿羽でおおわれた早成型の雛とがある。雛が卵の殻をやぶって自由になったとき,その雛がすぐ巣を離れる早成性でない晩成性のときには親鳥はその卵殻をくわえて離れたところに運んでいって捨てるのが常である。孵化後ただちに雛が歩き出す早成性のウズラ・ヤマドリ・ライチョウ・カモ類などでは,卵殻はそのまま巣の場所に放置される。晩成性の雛ではロを開閉したり排便するだけであり,小鳥ではほとんど全身が赤裸で毛のような産毛が生えているだけで,体温の調節作用も不完全なので親鳥が少なくも1週間は温める必要がある。このような雛では餌をねだって大口をあける。口中は黄・赤・燈などそれぞれ独とくの鮮明な色をもっていて,親鳥が給餌をするときにこれがよい目標となるのである。雛は親鳥が飛来すると反射的に大口を開けて餌をねだるが,孵化後1週間の間は親鳥の抱温がないと体温が急降下して餌をねだる反応さえなくなるのが常である。

「雛が卵の殻をやぶって自由になったとき」「親鳥はその卵殻をくわえて離れたところに運んでいって捨てるのが常である」と書いてあります。
[写真1]を見ると,確かに卵の殻がどこにも見当たりません。
巣箱の外に運び出したようです。

巣箱の蓋をあけて,初めてヒナがいるのを見つけたとき[写真1],全てのヒナがくたりと動かず,全滅していると思ってしまいました。
死んだヒナをそのままにして親鳥は巣を放棄したのではと。
「孵化後1週間の間は親鳥の抱温がないと体温が急降下して餌をねだる反応さえなくなるのが常である。」そうなので,親鳥が巣を離れ,体温が下がっていたのですね。

[写真2][写真5][写真9][写真10]には,親鳥が写っています。
巣箱の蓋をあけたときに,たまたま親鳥がいたためです。
写真を撮るときには,できるだけ素早く写すようにしていますが,鳥の種類によっては,こんなことをすると,子育てを放棄してしまいます。
シジュウカラやヤマガラは割と平気なようです。
それでもシジュウカラは,蓋をあけて覗くと,尾羽を広げて威嚇してきますが,ヤマガラはきょとんと見上げるだけで,攻撃的なところがありません。

昔から,ヤマガラは人なつこくて芸をする鳥として知られていたようです。
平凡社『世界大百科事典』(2005年)には,ヤマガラについて次のように書いてありました。

人によく慣れるので,古来飼烏とされてきた。反り身になって宙返りする性質があるので,かつては種々の芸を仕込んで見世物とし,金銭を得る者もあった。その演目には,水くみ,宙返り,おみくじ引きなどがある。このように芸を覚える小利口な鳥として知られるので,こざかしいが実際の役には立たない者を評して〈山雀利根やがらりこん〉といったりする。

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