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ナラ枯れ

2012年5月15日

町内の道路わきの斜面で,コナラの木が伐採されていました。[写真1]
以前からナラ枯れにかかって,立ち枯れしていたものです。
斜面に生えたかなり大きな木だったので,クレーンを使っての大がかりな作業でした。
全部で10本ほどのコナラの木が切られています。
切り株には,ビニールシートがかぶせてありました。[写真2]

[写真3]は,昨年の夏,自宅の窓から見た伐採箇所。
濃い緑のなかに,赤茶色に紅葉したように見える木が何本かあります。
[写真4]は,伐採後に同じ場所を写したもの。
赤茶色の木がなくなっています。
(丁度今はシイの花が咲く時期で,樹冠が黄色くモコモコとなっているのは,シイの木です。)

今年の3月にも,すぐ近くで枯れたナラの木が伐採されていました。
伐採した木は短く切って,積み重ね,シートをかぶせてありました。[写真5]
シートの内側は白く曇り水滴がたくさんついていたので,シートで覆うことにより太陽の熱で,ナラ枯れを媒介するカシナガキクイムシを蒸し殺しているのかと思いました。
しかしシートには次のステッカーが貼ってあります。

ご注意
林業用NCS(人畜毒性・普通物)による松くい虫(マツノマダラカミキリ,マツノザイセンチュウ),カシノナガキクイムシくん蒸駆除中です。

単にシートで覆っただけでなく,林業用NCSという薬剤を散布しているようです。

「林業用NCS」とは,ネットで検索すると次のような薬品でした。

有効成分:N-メチルジチオカルバミン酸アンモニウム
(PRTR・1種 433)・・・・・・・・50.0%

◎特徴 被害木の表面に散液し,1~2週間生分解性シート等で被覆する。低温でも容易にガス化して浸透し,林材部に穿孔したマツノマダラカミキリ老熟幼虫や,マツノザイセンチュウに100%の殺虫殺線虫効果を発揮します。

使用方法
加害された枯損木を配置し本剤を散布し,直ちにビニール等で密閉し,くん蒸する。

日本森林技術協会『ナラ枯被害対策マニュアル』(2012年)によると,ナラ枯れはカシノナガキクイムシがナラ菌を媒介することにより発症する「樹木の伝染病」です。

「ナラ枯れ(正式名称:ブナ科樹木萎凋病)」は,ナラ類,シイ・カシ類の樹木を枯らす病原菌と,その病原菌を媒介する昆虫とによる「樹木の伝染病」です。病原菌は「ナラ菌(ラファエレア菌)」と呼ばれる糸状菌(カビ)の仲間で,媒介昆虫は体長5mmほどの甲虫,カシノナガキクイムシ(以下「カシナガ」という)です。カシナガのメスの背中(前胸背)には,菌のうと呼ばれる貯蔵器官があり,この菌のうにナラ菌を入れて,被害木から健全木へと運びます。これまでは本州の日本海側を中心に被害が拡大していましたが,最近では太平洋側でも被害が広がっており,自然に被害が終息する状況にはありません。被害の拡大が著しいことから,カシナガは森林病害虫等防除法で法定害虫に指定されています。

伐採された木の断面は,直径70cmほどで,辺材部が黒褐色に変色しています。[写真6]

木材には,樹心に近い心材の部分(赤身)と,樹皮に近い辺材の部分(白身)があります。
心材は,細胞が死んで固定化された部分で,樹幹を支える役割をしています。
辺材は,水分や栄養分を通すパイプの役割をしています。

ナラ菌は生きた細胞から栄養を吸収する菌なので,心材には広がらず,辺材に広がります。
菌が感染すると,細胞は防御のために二次代謝産物を放出し,それが道管を詰まらせます。
二次代謝産物が大量に生産された部分は黒褐色に変色,同時に細胞は壊死します。
変色した部分が辺材部の大半を占めるようになると,水不足をおこし,枯葉を枝に付けたまま枯死してしまう,というのがナラ枯れの仕組みのようです。

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