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クリの花

2012年6月12日

世の人の見付ぬ花や軒の栗(芭蕉)

竹垣を越えて大きく枝を伸ばしたクリの木に,白い花穂が満開です。[写真1]
クリは花を愛でる木ではありません。
芭蕉は「おくのほそ道」で,目立たないクリの花の風情が,かえって庵主のわび住まいにふさわしいと詠んでいます。

長く垂れ下がった花穂は,3~5個の雄花の集まりが螺旋状に並んだものです。[写真4]
雌花は雄花序(ゆうかじょ)の基部につきますが,全ての雄花序にあるものでもないようです。[写真3]

『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,クリの花について次のように書いてありました。

6月頃虫媒花を開く。雌雄同株。おばなの尾状花穂は新枝の下部の葉腋につき直上し,長さ15cmぐらい,多数の黄白色の細花をつけ,あまい香がある。おばなはかくが6個に深裂しおしべは10本ぐらいで長く外に出ている。めばなの集まりは無柄で,おすの花穂の下部につき,普通3個が集まって鱗片のある総包につつまれている。めばなのがくは6個に深く裂け,子房は下位で5~9の細い線形の花柱がある。

わざわざ「虫媒花を開く」と書いてあります。
花びらのない花の形を見ると風媒花のような気もしますし,かなり強い匂いを発しているところは虫を誘っているようにも思えます。
基本は虫媒花ですが,風による花粉散布もおこなっているようです。
『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,次のように書いてありました。

虫媒花で,ハエの仲間や甲虫類などが多く集まるが,チョウもよく見かける。かなり蜜を出しているものと思われる。しかし,ネットをかけて虫が来ないようにしてもかなり結実するので,風による花粉散布も行われていると推定されている。

一個一個の雄花は,「かくが6個に深裂し」「おしべは10本ぐらいで長く外に出ている」いるそうです。
雄花一個を切り離して写真を撮ろうとしたのですが,小さすぎてうまくゆかず断念しました。
また次の機会に試みたいと思います。

雌花は「普通3個が集まって鱗片のある総包につつまれて」います。
「がくは6個に深く裂け,子房は下位で5~9の細い線形の花柱」があります。
[写真5]を見ると,確かに3個の花が集まって一つになっているのがわかります。
3個の雌花を包み込んでいる「鱗片のある総包」は,とげ状に発達して「いが」になります。

クリのいがの中にある3個の実は,もともと3個の雌花だったのですね。

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