雨上がりの朝,道に黒っぽいヤモリのような,トカゲのようなものがいました。
イモリ?
イモリなら,実際に見るのは初めてです。
近くに水路があるので,そこから這い出てきたのでしょうか。

しゃがんで写真を撮っていると,横を通り過ぎたお婆さんが,「ここにも,同じもんがいるえー」と教えてくれました。
見ると,すぐそばにもう1匹います。[写真4]
[写真1]の個体は体がぬれているのに,[写真2]の個体はぬれていませんね。

イモリかどうか自信がなかったのですが,横から撮った[写真2]を拡大して見ると,腹面に鮮やかな赤い斑紋があります。
イモリで間違いないようです。

京都府レッドデーターブックでは,今後の動向を注目すべき「要注目種」となっています。
次のように書いてありました。

選定理由 かつては普通に見られたが、近年著しく減少している。環境指標性が高い。
形態 全長はオス99mm、メス113mm程度。背は黒褐色、腹は赤~橙色で黒斑がある。
分布 本州、四国、九州に分布。
◎府内の分布区域
北~南部地域。
生態的特性 低地から山地の水田や河川に生息し、4~6月に卵を1粒ずつ水草に産みつける。
現状・脅威・保全 都市近郊で減少が著しく、1970~80年代に各地で激減ないし、絶滅した。止水環境と周辺の陸環境を、一括して保全していく必要がある。
その他 日本固有種

形態として,「腹は赤~橙色で黒斑がある」とあります。
「黒い腹面に赤い斑紋がある」と思っていましたが,「赤い腹面に黒い斑紋がある」というのが正しいようです。

しかし,この腹面の赤い色も上から見ると,背中の黒い色しか見えません。
こうした赤色と黒色の使い分けは,イモリの生存戦略のようです。
朝倉書店『知られざる動物の世界』(2011年)には,次のように書いてありました。

アカハライモリは,隠蔽色と警告色の両方をうまく身につけることに成功している。上から見た場合(たとえば鳥からの目線),暗い背面の色は,生息環境である岩や泥からなる池の底,水田,または緩やかな流れにとけ込んでしまう。しかし下からは(捕食者である魚類からの目線),毒腺で生産される強い毒があることを警告する鮮やかな色が見える。本種はさらに防御行動も行う。すなわち外敵に対して,顎と尾をもち上げて,鮮やかな腹面を見せる。