キンイロジョウカイ,漢字で書くと「金色浄海」。
ジョウカイボン(浄海坊)という虫を知らなければ,虫の名だとはとても思えませんね。
見た感じは,「金色をしたジョウカイボン」というよりは,「金属光沢がある紫色のジョウカイボン」です。

翅の色には地域差があるようで,保育社『原色日本昆虫図鑑(上)・甲虫編』(1956年)には次のように書いてありました。

上翅は紫銅色が多いが,九州では藍色または緑色をおびることがある。分布:本州(中部以南)・四国・九州。

ジョウカイボンが全国に分布しているの対し,キンイロジョウカイは西日本だけにいるようです。

北隆館『日本昆虫図鑑』(昭和31年・1956年)には,キンイロジョウカイの体の特徴について,次のように詳しく書いてありました。(原文は旧漢字)

体は黒色,触角・口器・前背板の両側・翅鞘の末端前胸腹板・腹部腹板の後縁及び末端節・脛節・跗節等は黄褐色,翅鞘(翅端を除き)は青銅乃至紫銅色で美しい金属光沢を有する。頭部は大きく,頭頂に微小の点刻を密布し,褐色の短毛が生えている。触角は長く,第2節は第1節より少し短く,第3節は第2節よりもさらに短く,第4節は第3節のほとんど2倍の長さを有する。雄では第6-第9節に弱く短い溝を具えている。前背板は横矩形を呈し,前・後両縁角とも鈍,外縁は上反し,板上は全面に微小の点刻と軟毛とを疎布している。翅鞘は全面にやや粗い点刻と微小の顆粒からなる縮刻を有し,褐色毛をやや疎らに生じ,2-3の判然しない縦隆線を具えている。体長20-30mm。本種は本州南部及び四国・九州に分布する。

[写真3]はキンイロジョウカイとジョウカイボンを並べて比較したもの。
並べてみると,キンイロジョウカイの方が随分大きく感じます。
1.5倍ほどの大きさがありますね。
キンイロジョウカイはジョウカイボンのなかまの中では一番大きな体形をしています。

その他の点では翅の色が異なるだけで,姿かたちがよく似ています。
両者だけでなく,ジョウカイボンのなかまは互いによく似ていて,これはたまたま似ているのではなく,ミューラー型の擬態だという説もあるようです。

『新装版山渓フィールドブックス6 甲虫』(2006年)には,ジョウカイボンについて次のように書いてありました。

甲虫としては例外的に軟らかい体をしているが,性質はどう猛で,他の虫を捕食する。ベニボタル類とともにホタル類に近い仲間なので,体に毒があるらしく,鳥に嫌われるが,まだそれを調べた人はいない。鳥に嫌われるため,ヒメハナカミキリをはじめとするハナカミキリ類,クビナガムシなどの花に来る甲虫とジョウカイボン類との間に複雑な擬態現象が現れる。また同じジョウカイボン類の間でも似通った色や模様をしている傾向がある。これはミューラーの擬態といって,同じような模様をしていると,鳥は1匹ついばんだだけで他の虫を攻撃するのを止め,それだけ被害が少なくなるためである。