灯りに誘われて入り込んだのでしょうか,壁にアオカミキリモドキがとまっていました。
この虫は体液に有毒なカンタリジンが含まれていることで有名です。
体液が皮膚につくと,やけどに似た水ぶくれになるそうです。

小学館の古い昆虫図鑑に「しるがつくとおそろしくかゆい」と,男の子が痒そうにしている挿絵が載っていたのを覚えています。
この虫のことだったような気がしたのですが,見かえしてみると違いました。
図鑑に載っていたのは,アオバアリガタハネカクシの方でした。

害虫あおばありがたはねかくし
たんぼのあぜなど,湿地にすむが,あかりにもとんでくる。ひふに,しるがつくと,赤くはれて,おそろしくかゆい。

昔の家は,夏は窓を開け放していたので,こうした虫がよく入り込んできました。
両種は,灯火に集まる虫の中で,皮膚炎をおこす有毒成分をもっている害虫の代表種です。
有毒成分はアオカミキリモドキがカンタリジン,アオバアリガタハネカクシがペデリンです。

平凡社『世界大百科事典』(2005年)には,「アオカミキリモドキ」について,次のように書いてありました。

成虫の体は橙黄色で上翅は緑色または金緑色。体長10~16mm。平地に比較的多く生息し, 5月ごろから出現する。6月ごろにもっとも多く発生し,主として雄が灯火に飛来する。体液にカンタリジンと呼ばれる有毒物質を含み,この液による水泡性皮膚炎が知られている。 6~7月ごろスギなどの針葉樹の朽木に乳白色でバナナ形の卵を固めて産みつける。幼虫は朽木の中へ潜り込み,朽木を食べて育つ。幼虫で越冬し初夏のころ朽木中で成虫となる。

「カミキリモドキ」については,次のように書いてありました。

形がカミキリムシに似るところからカミキリモドキと呼ばれるが,ヒラタムシ上科の異節群に属し,カミキリムシとは系統的に異なる。体は一般に細長く,触角も細長く,カミキリムシよりも軟弱で,前・中脚の跗節は5節,後脚の跗節は4節からなる。

カミキリモドキの「前・中脚の跗節は5節,後脚の跗節は4節」となっています。
それではカミキリムシの跗節は何節あるのでしょうか。
[写真3]は,カミキリモドキ(アオカミキリモドキ)とカミキリムシ(ベニカミキリ)の中脚の跗節を比較したもの。
[写真4]は,後脚の跗節を比較したもの。

カミキリムシの跗節は,前・中・後脚とも5節からなっています。
しかし一見したところ,4節にしか見えません。
実はカミキリムシの第4節は小さくて見えにくく,擬4節といわれています。
『日本産カミキリムシ検索図説』(東海大学出版会・1992年)には,カミキリムシの跗節について,次のように書いてありました。

跗節は5節からなるが,第4節は小さくなって第5節基部につき,ハート型になった第3節の間に隠れてみえにくい。これを擬4節という。