道にタマムシが落ちていました。
飛んでいる最中に,不運にも車とぶつかったようです。
衝撃で,翅が曲がってしまっています。[写真1]
車に轢かれなかったのが不幸中の幸いだったようで,拾った時には動いていなかったのですが,しばらくすると動き出しました。

平凡社『世界大百科事典』(2005年)には,タマムシについて次のように書いてありました。

タマムシChrysochroa fulgidissima は日本産の種の中ではもっとも大きく,体長は4cmに達する。別名ヤマトタマムシ。緑色の体は,背面に銅紫色の幅広い縦紋があり,美しい金属性の光沢がある。英名もtwo-striped green buprestid。本州(北部を除く),四国,九州のほか,朝鮮半島や台湾にも分布する。成虫は7~8月ころに多く出現し,日中は活発に飛ぶ。サクラ,モモ,エノキ,ケヤキ,カシ,カキなどの衰弱木や枯木の樹皮に産卵管を挿入して卵を産みつける。孵化した幼虫は材の中へ穿孔し,2~3年後の初夏のころ材の中で蛹化する。約2~3週間後に成虫となり,やがて穴をあけて脱出する。このような生態から樹木の害虫とみなされているが,健全な樹木に穿孔することはない。タマムシはその美しさで昔から親しまれてきた。また堅い翅は工芸にも適し,法隆寺の〈玉虫厨子>は有名である。

大きいものは「体長は4cmに達する」のですが,この個体は体長3.2cm。若干小ぶりです。
体の表も裏も肢も,見事に全身,金属色で覆われていますね。
写真で見ると,金属製の虫のようです。
以前拾ったものは,体の中身はアリに食べられててしまって空洞になっているものの,外側の殻は美しい金属色を保っていました。[写真6](→2003年8月11日

タマムシのなかまには,金属色をしていない種類もいます。
[写真2]の左側は,ウバタマムシです。
タマムシがキラキラと輝く金属色で鳥の目をくらませるという奇策をとったのに対して,ウバタマムシは樹皮に擬態するというオーソドックスな方法をとったようです。
その分,人の注目度は確実に減らすことができています。

ウバタマムシの雌雄は,腹部末端で見分けます。(→2009年8月25日
雄は腹部末端が「深くえぐられ」,雌は「まるい」。

タマムシはどうなのか調べてみると,同じ特徴があるようです。(『原色日本昆虫図鑑 甲虫編』(1955年))

♀は腹端末節が円く,♂は三角形に弯入する。

[写真3]の左側が今回の個体。
腹端末節が「三角形に弯入」しているので,雄です。
右側の雌は,「腹端末節が円く」なっています。

[写真5]は,腹端から産卵管のようなものが出ているタマムシ。(→2009年8月16日
3年前は産卵管が出ているのだから雌だろうと安易に判断したのですが,今回もう一度見直してみると,腹端末節が「三角形に弯入」しています。[写真5]
ということは,突き出ているのは産卵管ではなく,雄の生殖器だったようです。