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アオマツムシ

2012年10月8日

動物園の塀に,緑色の虫がとまっていました。[写真1]
またクダマキモドキかクビキリギスだろうと思って,通り過ぎようとしたのですが,よく見ると違います。
すこし小さくて,背中が平らになっています。

調べてみると,アオマツムシでした。
緑色の体色はキリギリスのなかまのように見えますが,アオマツムシはキリギリス科ではなく,コオロギのなかま(コオロギ科マツムシモドキ亜科)です。

草原にすむキリギリスが緑色をしているのに対し,地表を主な生活の場としているコオロギは褐色の体をしています。
手元にある図鑑をめくって調べた範囲では,日本産のコオロギ科の虫のなかで,緑色の体色はアオマツムシだけでした。
アオマツムシは他のコオロギのなかまと違い,木の上で生活するため緑色が保護色になっているのです。
また,アオマツムシは脚の跗節が短くなっていて,樹上生活により適応した体になっています。
[写真4]は,エンマコオロギの脚と比較したもの。

アオマツムシは明治時代に日本に入ってきた外来種で,原産地には諸説あるようです。
平凡社『世界大百科事典』(2006年)には,アオマツムシについて次のように書いてありました。

直翅目マツムシ科の昆虫。美しい鮮やかな緑色をした樹上にすむコオロギ。体型がマツムシに似ているのでこの名がある。体長15mm内外。1917年に東京で発見されて以来,神奈川,愛知,京都,山口,福岡などの,とくに大都会で見いだされていたが,-時はかなり減少した。70年代半ばころからまた少しずつ街路樹を中心に発生地が広がり,あっという間に群馬県から九州に至る地域で大発生を見た。おそらくこの虫は,明治年間に,卵の産み込まれた苗木によって外国から東京へ持ち込まれ定着した,いわゆる帰化動物の一つで,原産地は中国大陸の南部であろうと推定されている。

「原産地は中国大陸の南部であろうと推定」と書いてありますが,保育社『原色日本昆虫図鑑(下)』(1977年)には,「熱帯アジアからの侵入種」と書いてありました。

属はインドからオーストラリアにかけて20種が分布し,マレーに最も種の数が多い(7種)ことから熱帯アジアからの侵入種と考えられている。1898年東京赤坂で発見され,苗木についた卵で南日本都市近郊にひろがっている。分布:水戸・横浜・静岡・名古屋・津・伊勢・京都・奈良・大阪・高槻・箕面・池田・枚方・八尾・広島・山口・福岡などから発見されている。伊勢市では台風の被害を受けて明るくなった照葉樹林に侵入している。

また,日本で発見された年についても,前書では「1917年に東京で発見」と書いてありますが,後書では「1898年東京赤坂で発見」とあります。
初記録年月日にも諸説あるようですね。

アオマツムシが都会に分布を広げていることについて,平凡社『日本動物大百科 第8巻 昆虫Ⅰ』(1996年)には,次のように書いてありました。

アオマツムシの分布は関東以西の都市部に集中しているが,自然林には進出していない。一般に帰化昆虫は人工的な環境へ侵入し繁栄するのがつねで,彼らも例外ではない。カネタタキなどのような樹上生活をする在来種はいるが,いずれもアオマツムシの競争相手にはならない。有力な競合種や捕食者もない都会の人工環境は,彼らにとって格好の生活場所なのである。

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