エンマコオロギの雌が,歩道の上にひっくり返り,肢をばたつかせていました。
手にとると,意外に大きく感じます。
産卵管を含めた体長は4cmほど。

保育社『原色日本昆虫図鑑 下』(1977年)には,エンマコオロギについて,次のように書いてありました。

体長26~40mm。頭は球形で白色の眉状斑があり,複眼の背後方でせばまりほとんど消失する。産卵管は20.5~21mm,後脛節とふ節を合わせた長さにほぼ等しい。短翅型は未知。草地や畑にすみ,「コロコロ……リー」と美しい声で鳴く。卵越冬,年1化。成虫期8~11月。

・頭は球形で白色の眉状斑があり,複眼の背後方でせばまりほとんど消失する
[写真3]を見ると,頭は本当に丸くて球形ですね。
白色の眉状斑は,他の図鑑では褐色と表現されています。
この顔つきが閻魔大王に似ていることからエンマの名がついたといわれていますが,翅が重なる意味の古語「重羽(えんば)」に由来するという説もあるそうです。
[写真4]を見ると,眉状斑は複眼の後方で消失しています。

・産卵管は20.5~21mm,後脛節とふ節を合わせた長さにほぼ等しい
[写真1]に定規を当てて測ってみるとどちらも18mmほどですが,実際に測ってみると,産卵管は21mm,後脛節とふ節を合わせた長さも21mmでした。
後脛節とふ節を合わせた長さにほぼ等しい」という表現に,何の意味があるのだろうと思いますが,近似種との比較のため使われるようです。
近似種のエゾエンマコオロギの産卵管は「後脚の腿節と脛節をあわせた長さに等し」く,タイワンエンマコオロギの産卵管は「ほぼ後腿節と同長」だそうです。

・卵越冬,年1化
卵で越冬し,春に孵化,8~10回脱皮して成虫になります。
平凡社『日本動物大百科 第8巻 昆虫Ⅰ』(1996年)には,卵越冬1化型について次のように書いてありました。

卵越冬1化型ではまず遺伝的に固定された卵休眠が見られ,そして羽化(成虫への形態変化)が盛夏の長日によって抑制される。いいかえると,晩夏から秋の短日によって若虫の成長(成熟)が促進されるのである。昆虫類のこのような反応を「短日型」の光周反応という。この型の代表はエンマコオロギ,スズムシ,マツムシ,カンタンなどで,日本の秋の鳴く虫の代表といえる。