家の外壁に大きなゾウムシがくっついていました。
大きいといっても2cmほどの大きさですが,ほとんどのゾウムシの体長が数ミリという世界にあっては巨大ともいえます。
名前もオオゾウムシ。
本邦最大のゾウムシです。

北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 甲虫篇』(2007年)には,オオゾウムシについて,次のように書いてありました。

体長12~24mm。地色は黒色,灰褐色粉で密におおわれ,上翅はビロード状の小黒紋を散らしている。本邦最大のゾウムシで,成虫は夏季広葉樹の樹液に集来し,幼虫はマツ類・ヒノキ・スギ・ナラ・カシ類・ブナノキ等の材部に穿入する害虫である。分布:北海道・本州・四国・九州;朝鮮半島・中国・台湾・フィリピン・ボルネオ・ジャワ・ニューギニア・マライ・ミャンマー・インド・セイロン等。

保育社『原色日本甲虫図鑑 4』(1984年)には,オオゾウムシについて次のように書いてありました。

12~29mm。地色は黒く,灰褐色粉で密に覆われるが,1 ~ 2年生存した個体ではこれが脱落して黒色光沢を帯び,別種の感じになる。日本・朝鮮半島・中国・インドシナ・インドに広く分布し,フィリピン・ボルネオ・ジャワ・オーストラリアには別亜種がいる。幼虫は広葉樹や針葉樹の枯木中を食害し,土場でスギなどの丸太に大害を与えることがある。

どちらの図鑑にも,地色は黒色で,灰褐色粉で密に覆われていると書いてあります。
しかし全身が樹皮に擬態しており,褐色で凸凹,「灰褐色粉で密に覆われている」という感じがしません。

「1 ~ 2年生存した個体ではこれが脱落して黒色光沢を帯び,別種の感じになる」と書いてあるので,試しに,上翅をカミソリで削ってみました。
簡単に表面が剥がれるのかと思ったら,意外にしっかりとしています。
ようやく表面を削って,地色をあらわしたのが[写真5]です。

その間,オオゾウムシは逃げることもなく,肢を突き立てて,指をしっかりとつかんでいました。
脛節の末端には鉤型の爪があり,かなりくいこんでいます。[写真6]

オオゾウムシは本当におとなしくて,おっとりとしていて,ペットとして飼育している人の気持ちがわかります。