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シモフリヤチグモの触肢

2013年2月6日

クモの触肢について調べてみました。
クモの触肢は小さいうえにつくりが複雑なので,図鑑と照らし合わせて見ても構造がよく理解できません。
前回のクモ(→2013/1/22)の名前を調べていた時も,図鑑の検索表には「栓子は著しく糸状または鞭状」「指示器は弱く曲がる」とあるのですが,どこが栓子か指示器がよくわかりませんでした。

触肢の役割について,吉倉眞著『クモの生物学』(1987年)には,次のように書いてありました。

触肢は感覚器官であるとともに,また口器の一部として餌を保持する働きもする。触肢はメスおよび未熟のオスではひげのようであるが,成熟したオスでは,複雑な構造をした一種の交尾器官―移精器官(organ of sperm transfer)に変化している。

成熟したオスの触肢が「交尾器官」ではなく「一種の交尾器官」とあるのは,オスは触肢を使ってメスに精子を渡すものの,触肢にペニスがあるわけではなく,触肢と精巣とは繋がっておらず,一度体外に射精された精液を一時的に貯蔵してからメスに渡す「移精器官」だからです。

ペニスを持たないクモの雌雄間の精子の受け渡しは,すこし特殊です。
まず最終脱皮を終えたオスは「精網(せいもう)」と呼ばれる小さな網を張り,それに精液をたらします。
次にオスは,触肢の移精器官で精液を吸い取り,基部に貯えます。
交接の際に,オスは移精器官をメスの生殖口にあてがい,貯えている精液をメスの受精嚢の中へ注入します。

同書には,移精器官の構造について,次のように書いてありました。

まず,構造の簡単なものから述べることにする。イトグモの移精器官を見ると,跗節の内側面にクワイの球茎のような形をしたものがついている。これが移精器官の本体をなすもので,生殖球(genital bulb)と呼ばれる(図20.9)。その壁は硬い。細長く伸び出している部分は移精針(射精針)で,これは真っすぐでなく,らせんを描くように少し曲がっている。生殖球は先跗節器官(pretarsus organ)とも言われるように,先跗節の変化したものである。跗節は小さいが,脛節は大きくふくらんでいる。
イトグモの触肢

こういう,構造が簡単なものならば理解しやすいのですが,ほとんどのクモはもっと複雑な構造になります。
前書では,サラグモを例に複雑な移精器官について解説してありました。

触肢
 まず,基部には基部血嚢がある。その嚢壁は,跗節と先跗節との間の関節膜が変化したもので,平常は収縮し,らせん状に巻いているが,交尾のときは大きくふくらむ。基部血嚢には,亜盾と称する硬板がついていて,内部にある容精体を保護している。
 生殖球の中部には中部血嚢があり,その壁には大きな,湾曲した盾がついている。容精体のらせん状に巻いている部分は,盾の内側に接しつつ,屈曲して外方へ走っている。なお,この部に見る顕著なものに中部突片がある。これは細長い硬板で,やや湾曲し,先端に二つの小突起をそなえている。把持器とも言われ,生殖球を外雌器に固定する働きをするものと考えられている。
 端部は移精管の通っている所で,その構造は最も複雑である。端部血嚢の壁には,かなり大きな厚い硬板がある。これは栓子部の根部である。それに続いて茎部があり,さらに栓子がある。栓子の末端に移精管の開口がある。このクモでは,栓子は針状になっていない。端部にある付属物として重要なものは指示器で,その縁は膜質である。精液移注の際,栓子がうまく外雌器の交尾口に当てがわれるよう,誘導,支持する働きをしているらしい。なお端部には,端部突片,側亜端部突片などと呼ばれる硬板がついている。
 杯葉の基端には,釣状に曲がった顕著な1突起がある。これを側杯葉(paracymbium)という。脛節や膝節はいずれも小さい。

この解説を元に,シモフリヤチグモ(と思う)の生殖球の構造を読み解こうとしたのですが,結局よくわかりませんでした。
[写真2]に示している,「盾」「中部血嚢」「基部血嚢」は不確かです。
前回(→2013/1/22)では分からなかった「移精針」は,色々な角度から写真を撮り,ようやくわかりました。
形から見て「側杯葉」かなと思っていた部分から,長い糸のような「移精管」が出ていました。

同定のための重要な部分である「指示器」についても,どの部分なのか確信がもてません。
[写真3]に示している部分が「指示器」ではないかと思うのですが,検索表ではシモフリヤチグモの「指示器は弱く曲がる」と書いてあるのが気になります。
[写真3]を見ると,指示器は90度に曲がっているように見えるからです。
指示器は突き出ている部分だけで,90度に曲がっているように見える根もとの部分は指示器に含めないのでしょうか。
突き出た部分だけを見ると,先の方は確かに「弱く曲がって」います。

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