今回は11年前の写真の再録です。
前回ツグミについて書いた際に過去の記事を検索したところ,2002年にクロツグミについて書いていました。(→2002年11月8日
クロツグミ(♀)が死んでいて,手に持つとまだ温かったという話です。
11年前にはファイルサイズはできるだけ小さくする必要があったので,載せている写真は小さなサイズのものが1枚だけです。
現在のブロードバンド環境ではもっと多くの写真を載せることができるので,他の写真をあらためて掲載するとともに,クロツグミについて少し調べてみました。

クロツグミは日本と中国にのみ棲み,夏鳥として中国から渡ってくる鳥です。
全長約22cm,翼長11~12cm,体重50~70g。
クロツグミのオスは名前のとおり全身が黒い鳥ですが,メスは褐色をしています。
オスもメスも腹側は白く,黒い斑点が目立ちます。
日本のツグミ属の鳥の中で,「ツグミ」の名がついているのは,ツグミ,クロツグミ,トラツグミの3種です。
他のツグミ属の鳥たちと比較して,この3種に共通して目立つ特徴は,腹部に黒色の斑点があることです。

ツグミは漢字では「鶫」と書きますが,この字は日本でつくられた漢字いわゆる国字で,本来の漢字は「鶇」です。
編を「東」ではなく「柬」とつくりかえてあるのは,黒斑を表したものだそうです。
江副水城著『鳥名源』(2010年)には,次のように書いてありました。

つまり,柬の字に点々が入るのは,斑の意味を文字で表すためであり,そのために作成された象形文字なのであって,その名称の一部にツグミの言葉が使われる鳥だけに使うべき字になっているのです。

クロツグミのさえずりは,小鳥のなかで最も美しいものの一つとされています。
平凡社『日本動物大百科 第4巻 鳥類Ⅱ』(1997年)には,次のように書いてありました。

日本の鳥のなかで抜群の歌い手のひとつがクロツグミである。

独身のオスは木の梢付近で終日よくさえずるが,つがいになったオスは日中は森のなかで鳴くことが多くなり,さえずりの速さも遅くなる。さえずりの最初に用いられる音節の種類だけでも1個体が5~15種類もっており,その後に続く音節との組み合わせにより,変化に富んださえずりのタイプを多数もつことになる。

ツグミの名の語源については色々とあるようですが,この美しいさえずりからきているという説もあります。
『鳥名源』には,次のように書いてありました。

 ツグミの名称は,そのような特徴から付けられているのです。
玼の字は,一音節読みでツと読み形容詞では,「美しい」という意味で使われます。穀の字はグと読み「素晴らしい」,鳴の字はミンと読み「鳴く」という意味です。
 つまり,ツグミとは,玼穀鳴であり,直訳すると「美しく,素晴らしく,鳴く(鳥)」の意味であり,少し表現を変えると「美しい,素晴らしい声で囀る(鳥)」の意味になっており,これがこの鳥の語源です。

写真を見ていると,当時の手の感触を思い出しました。
手に持った時にはまだ温かく,ずしりと重たくて,垂れた頭が首のすわらない赤子のようでした。
クロツグミの寿命は,繁殖地での個体識別にもとづく調査では,ほとんどが満3歳以下だったそうです。
この鳥は,たくさんのさえずりを聞いたでしょうか。