ようやく方々で,ウメの花が咲いているのを見るようになりました。
今年は例年より2週間ほど開花が遅れています。
京都の今年の開花宣言は3月7日でした。
新聞の「梅だより」によると3月12日現在,隋心院は「咲き始め」,二条城は「五分咲き」,北野天満宮は「七分咲き」となっています。

ウメの花は当たり前すぎて,今まで構造を調べたことはなかったのですが,半分に切って中を見てみました。
[写真3]が断面です。
1本の雌しべに多数の雄しべ,花弁は5個,萼片は5個で下部は合着して筒状になっています。

平凡社『日本の野生植物 木本Ⅰ』(1999年)には,ウメの花について次のように書いてありました。

花期は2-3月。花は前年の枝の葉腋に1-3個つき,柄はほとんどなく,径2.5cmほどで,葉より先に開き,芳香がある。萼筒は広い鐘形で,萼裂片とほぼ同長。萼裂片は紅紫色または緑色で,広楕円形,先は円形,花時に平開し反り返らない。花弁は広倒卵形または広卵形で,先は円形,基部は広いくさび形でごく短い爪状の柄があり,紅色または白色。雄蕊は多数で,花弁や花柱より短く,花糸は無毛。子房は狭卵形で毛を密生し,花柱は無毛で,子房よりも明らかに長い。

・柄がほとんどない
ウメには花柄がほとんどないので,枝にくっつくようにして花が咲いています。
それに対してサクラには長い花柄があり,房状に垂れさがる花を咲かせます。

・萼筒は広い鐘形
萼筒(がくとう・がくつつ)とは,萼が合着し筒状になったものをいいます。(花床筒(かしょうとう)ともいう)
萼筒が子房と合着しないのは,サクラ属の特徴です。

・萼裂片は「花時に平開し反り返らない」
萼裂片(がくれっぺん)とは,萼筒の先につく裂片をいいます。
[写真4]を見ると,萼裂片は反り返っていません。
ウメの花によく似た,アンズの花ではこの萼裂片が反り返っています。
前書に載っていたサクラ属の検索表では,ウメとアンズの相違点は次の通りでした。

A.果実には縦方向に浅い溝あるいはくぼみがある。葉の芽型は片巻きか2つ折。頂芽があるものとないものがある。
 B.葉の芽型はふつう片巻き,まれに2つ折。葉腋につく芽は1個。頂芽はない。《スモモ亜属 Subgen.Prunus》
  C.子房と果実は有毛。花にはほとんど柄がない。くアンズ節 Sect.Armeniaca〉
   D.葉は広卵形または卵円形で,基部は円形。萼裂片は花時に反り返る。核果には網目がある……1.アンズ
   D.葉は倒卵形または楕円形で,基部は広いくさび形。萼裂片は花時に反り返らない。核果には小さな穴がある……2.ウメ

牧野富太郎は『牧野富太郎植物記』(1974年)で,ウメを英語で呼ぶ場合は,ジャパニーズ・アプリコットと呼ぶべきだと力説しています。
ウメのことをプラムと呼ぶのは,イヌをネコと呼ぶにひとしいとまで言っています。

 なお,ウメのことを英語でプラムとよんでいますが,これは誤りです。英語でいうプラムとはスモモ(李)のことでウメのことではありません。ウメをプラムとよぶのは,イヌをネコとよぶにひとしいものです。ウメはむしろアンズ(杏)に近い種類ですから,しいて英語名をつけるなら,ジャパニーズ・アプリコットとすべきでしょう。アプリコットはアンズの英語名です。

ウメの語源については,同書に次のように書いてありました。

 ウメという名は中国名からきているという説と,日本でつけられた名であるという説と二つあります。梅は中国音でメイといいますが,これがウメに変じたともいわれ,また,中国でいう烏梅(うばい 中国音ウメイ)からきたともいわれています。烏梅とはウメの実をかわかしてくすぺたものです。日本でつけられた名という説では,ウメのウは太い意,メは実,すなわちミで,この大きな実をあらわすウミが変じてウメになったといわれ,またウミミ(熟実)からウメに変じたともいわれています。