歩道にトンボがとまっていました。[写真1]
死んではいないのですが,かなり弱っています。
指でつまむと簡単につかまえることができました。

長いこと放浪生活をしてきたかのように,全体的に薄汚れた感じがします。
体の地の色がまっ黒ではなく,褐色をおびているせいかもしれません。
黄色の紋も薄くて,色があせたような感じがします。

腹部のつけねがくびれて細くなっています。
図鑑で調べてみると,その特徴そのままにコシボソヤンマという名前でした。
北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)には,コシボソヤンマについて次のように書いてありました。

大型のヤンマで,腹長55mm内外,後翅50mm内外。褐色の地色で,特に腹部第3節がくびれている。複眼は大きく広く接着する。頭部黄色で前額に大黒斑がある。翅胸前面には黄緑の「八」字紋,側面には中胸後側板および後胸後側板に広い2黄緑帯がある。腹節2~8には黄帯があり,第2節のものは基部を占めて,♂では小耳突起がある。翅脈は褐色,縁紋は黄褐色で♂の後翅端には淡褐色紋がある(図)。本州・四国・九州に分布し, 7~9月に出現する。幼虫は平地低山地の流水に生息し,成虫には黄昏飛翔性があり,また屋内に侵入することもある。

・腹長55mm内外,後翅50mm内外
この個体は,復長62mm,後翅57mmでした。[写真3]

・褐色の地色で,特に腹部第3節がくびれている
[写真4]

・複眼は大きく広く接着する
前翅,後翅の三角室が同じ向きで[写真8],左右の複眼が広く接するのがヤンマ科の特徴です。[写真5]

・頭部黄色で前額に大黒斑がある
[写真5]

・翅胸前面には黄緑の「八」字紋,側面には中胸後側板および後胸後側板に広い2黄緑帯がある
[写真6][写真7]

・腹節2~8には黄帯があり,第2節のものは基部を占めて,♂では小耳突起がある
[写真4]
この個体は♀なので,小耳突起はありません。

・翅脈は褐色,縁紋は黄褐色で♂の後翅端には淡褐色紋がある
[写真8]

北海道大学図書刊行会『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑 』(1999年)に,コシボソヤンマの翅の図が載っていました。
[写真8]と見比べてみると,後翅の形がかなり違います。
同定を誤ったかなと,解説を読んでみると

♂は後翅の基部がくびれて肛角が尖る。

とありました。
同書の図は♂で,本個体は♀だからだったのですね。
ひと安心です。