降り積もった落ち葉のなかに,ぽつぽつとキノコの傘が開いているのを見つけました。[写真6]
黒白の地味な色合いは,落ち葉に紛れて目立ちません。
しかし,よく見るとあたりには結構な数が発生しています。

毎年,この場所に発生しているのは気付いていましたが,今までは名前を調べる気も起きなくて,そのまま見過ごしていました。
手に取ってみると,虫食いもなくきれいで,意外においしそうなキノコです。
冬が間近に迫った今の時期には,さすがにキノコを食べる虫も活動がにぶるようです。

図鑑で調べてみると,シモフリシメジのようです。
シモフリシメジなら食べられるキノコです。
それも地方によってはマツタケより人気があるというキノコです。
意外なお宝発見かと思ったのですが……。

『山渓カラー名鑑 日本のキノコ』(1988年)には,シモフリシメジについて次のように書いてありました。

傘は径4~10cm,表面はすす色の繊維で密におおわれ,地色は淡黄色,やや粘性がある。ひだは帯黄色。柄も帯黄色,繊維状,中実。秋ややおそく,マツ・モミなどの針葉樹林や広葉樹との混生林に発生する。食。北半球温帯以北に分布。
比較的もろい傘も,柄の肉質も,ゆでると弾力が出て歯切れがよく,うま味のあるよいだしが出る。

保育社『原色日本新菌類図鑑(Ⅰ)』(1987年)には,次のように書いてありました。

傘は径4~7cm,まんじゅう形から多少中高の平らに開く。表面はすす色の内生繊維で密におおわれ,地は淡黄色~白色,湿っているときやや粘性をおぴる。肉は堅く,くすんだ白色であるが,表皮直下は黄色をおぴ,無味無臭。ひだは離生状に湾生し帯黄色,幅広く疎,ふちはやや欠刻状。柄は8~10cm×1.5~2cm,ほとんど上下同大,表面は平滑,帯黄白色,中実。胞子は広楕円形~類球形, 5~6×4~5μm。秋ややおそく,マツ,モミなどの針葉樹林内に群生し,食用にされる。分布:北半球温帯以北。

・発生時期は「秋ややおそく」で,今の時期に当てはまります。
・傘の大きさは大きなもので7cmくらいなので,「傘は径4~10cm」に当てはまります。
・発生していた場所の周囲にはヒノキ,シイなどが生えており,「マツ・モミなどの針葉樹林や広葉樹との混生林に発生する」に当てはまります。
・傘の表面は「表面はすす色の繊維で密におおわれ,地色は淡黄色」
→[写真2]
・「ひだは離生状に湾生し帯黄色,幅広く疎」
→[写真3][写真4]
・「柄は8~10cm×1.5~2cm,ほとんど上下同大,表面は平滑,帯黄白色,中実」
→[写真1][写真4]

ネット上の写真などと見比べても,シモフリシメジに間違いないような気がします。
ただ似たキノコにネズミシメジがあり,そちらには毒があるとか。
ネズミシメジは,傘が成長して平らに開いても中央部がとがっているそうです。
それに苦味があり食用に適さないとあります。

『山渓カラー名鑑 日本のキノコ』(1988年)には,ネズミシメジについて次のように書いてありました。

傘は径4~8cm,初め円錐形で開展後も中央部は山形に突出する。表面は灰色の地に暗色の放射状の繊維紋を密につけ,中央部はほとんど黒色。ひだは灰白色,湾生。柄は長さ6~9cm,白色。肉は白色,表皮下は灰色を帯び,苦味と辛味がある。胞子は6~7.5×4.5~5.5μm,広楕円形。秋,マツ・モミなどの針葉樹林,時にブナ林にも発生する。

厚生労働省のサイトにある「自然毒のリスクプロファイル」によると,中毒症状は「食後30分から数時間で嘔吐,下痢,腹痛を起こす。」とあります。

食べることができるのかできないのか。
キノコ類の同定には,虫や植物とは違う喜悦や逡巡がありますね。
一個の半分をゆでて,醤油をかけて食べてみました。
無味無臭。
気のせいか,かすかな苦味があるような。
4~5時間たっても,お腹が痛くなることはありませんでした。

夕食の粕汁を一人分だけ取り分けて,キノコを入れて食べてみました。
でも,何かおいしくありません。
キノコ自体にうまみがないのです。

ネットで調べてみると,シモフリシメジはとてもおいしいキノコで,そのおいしさを讃える記事がたくさん出ています。
もう一度挑戦しようと,ホイル焼きにして見たのですが,やはりおいしくありません。

シモフリシメジではないのかもしれません。
ネズミシメジでもないと思うのですが,よくわかりません。
結論としていえるのは,今後はこのキノコは食べないだろうということです。
おいしくありません。