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ヌルデの実とsumac

2013年12月14日

ヌルデの実を舐めてみました。
酸っぱさが混じった,さわやかな塩味がします。
シオノミという別名があることに納得しました。

ヌルデはシオノミの他にも,フシノキ,カツノキ,キブシ,シホノキなど,地方々々で様々な名で呼ばれています。
方言の多さは,それだけ人々の暮らしに身近にかかわってきたことを表しているようです。
『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,次のように書いてありました。

 ヌルデにはきわめて多数の方言名があり,その数は100を超え,民俗植物学的にも注目される植物である。それらをまとめると,ヌルデに似たもの以外では,シオノキ,フシノキ,カツノキの3系統に分けられる。いずれもヌルデという植物のもつ性質,特徴や,ヌルデに寄せる人びとの思いに由来するものである。
シオノキ系統の方言名の由来は,果実が熟すと湿っぽい塩のような粒でおおわれるからである。実際にこの粒をなめてみると,少し酸っぱいが塩辛い。第二次世界大戦中の物資の乏しい時期に,これをなめて塩分補給に役立てたという話もある。中国名の「塩麩子」もこれと同様の起源の名前だろう。
 ヌルデの葉に,奇妙な形の袋状の虫こぶができているのをしばしば見かける。これはアブラムシの仲間が寄生したためにできる虫こぶで,ヌルデノミミフシとよばれる。これを乾燥させたものが「五倍子」で,多量のタンニンを含み,染料,写真現像液のピロガロールなどに用いられる。また,かつては日本の既婚婦人の風習であったお歯黒(鉄漿)の媒染材としても用いられたという。五倍子は「付子」ともよばれ,これがフシノキ系統の方言名の由来である。
 一方,カツノキ系統の方言名の由来は,少し異質である。古代の蘇我氏と物部氏の争いのおり,聖徳太子はヌルデの材で四天王像を彫り,蘇我氏の勝利を祈ったとされ,これが「勝つの木」に転じたらしい。ヌルデは霊力の宿る木として崇められていたようで,オッカドノキ(御門の木),ショウグンボク(勝軍木)など,それにちなんだ名前が日本各地に伝わっている。

実の表面にへばりついている白い物質が,塩味の正体のようです。
この物質について,ネットでは「リンゴ酸カルシウム」だと出ていました。
確かめようと本を色々と探したのですが,「リンゴ酸カルシウム」だと明確に書いてあるものを見つけることができませんでした。(多分,どこかに載っているのでしょうが)
小学館『日本大百科全書』(1994年)には「カリウム塩」となっています。

ヌルデの果実はカリウム塩を含み,かつては塩の代用にされた。台湾のツオウ族などでは戦前まで利用していた。

実際になめてみると,塩の代用品というプアなイメージとは異なり,意外に爽やかな上品な味がします。
酸味を生かしてサラダに使えば,高級な食材に化けるのかもしれません。

ヌルデの実を香辛料として使う例はないのか,ネットで検索して見ると,アラブ諸国ではヌルデのなかまの実をスパイスとして使用するそうです。
Sumacといい,さわやかな酸味で中東料理のサラダにはかかせないとか。
Sumacについて,香辛料やハーブの事典などを色々と調べてみたのですが,載っていませんでした。
日本ではなじみのない香辛料のようです。

英語版のウイキペディアに「Sumac」という項目がありました。
訳してみました(正確かどうかは保証の限りではありませんが)。

Sumac(Sumachとも綴る)は,約250種あるウルシ科ウルシ属の植物の一つです。世界中(特にアフリカや北米)の亜熱帯や温和な気候の地域に育ちます。

一般的に低木ですが,高さ10mに達することもあります。葉はらせん状に生えます。若干の種類が三出複葉あるいは単葉ですが,通常は羽状複葉です。花は,5~30cmの密集した円錐花序あるいは穂状花序で,それぞれの花はとても小さく,緑がかった乳白色あるいは赤色,5個の花弁があります。果実は密集した房状の核果で,スマックボブと呼ばれています。いくつかの種は,乾燥させた実をすりつぶして風味の強い深紅のスパイスにします。

種(鳥や動物の糞を通してばらまかれる)と根茎からの萌芽の両方で繁殖します。

sumacという名前は,「赤」を意味する,フランス古語のsumac(13世紀),中世ラテン語のsumach,アラビア語のsummāq,シリア語のsummāqを語源としています。

栽培と利用
フラグラント・スマック(R. aromatica),リトルリーフ・スマック(R. microphylla),スカンクブッシュ・スマック(R. trilobata),スムーズ・スマック,スタッグホーン・スマックを含む種が,野生種としてあるいは栽培種として,観賞用に栽培されています。

スパイスと飲料香料
ウルシ属の実(核果)は,中東料理で肉やサラダにレモン風味を加えるためのスパイスとして,赤紫色の粉に挽かれます。アラブ料理ではハムスのように前菜の付け合わせとして用いられ,レバント地方ではサラダに加えられます。イラン(ペルシア人とクルド人)料理では,米あるいはケバブに加えられます。ヨルダンとトルコ料理では,ケバブとラフマジュンのサラダに加えられます。Rhus coriariaはハーブミックス・ザータルに加えられます。

北米では,スムーズ・スマック(R. glabra)とスタッグホーン・スマック(R. typhina)は時々,「スマック・エイド」「インデアン・レモネード」「ラウス・ジュース」と呼ばれる飲み物をつくるために用いられます。この飲み物は,実を冷たい水に浸し,エキスを引き出すためにこすって,液体をコットンでこして,甘みを加えてつくられます。アメリカ先住民もまた,伝統的な煙草の配合に,スムーズとスタッグホーン・スマックの葉と実をタバコと混ぜて用いました。

蝋燭
東アジア,特に日本では伝統的な蝋燭は,蜜蝋や動物の脂ではなく,スマック植物のなかの特にウルシ(Rhus verniciflua)とハゼノキ(Rhus succedanea/Toxicodendron succedaneumと同義)からつくられました。スマック蝋は伝統的な漆生産の副産物でした。スマック蝋からつくられた円錐形の蝋燭は無煙の炎で燃えます。徳川幕府の時代は蜜蝋やラードからつくられた蝋燭よりは多くの点で好まれました。日本蝋自身は本当のワックスではなく,10-15%のパルミチン,ステアリンと約1%の日本酸(1,21‐ヘンエイコサンジカルボン酸)を持つオレインを含む,固形の油脂です。それはまだ熱帯や亜熱帯の国々で,ワックスのマッチ棒をつくるのに使用されています。

染料となめし剤
いく種かのスマックの葉は,タンニン(多くはピロガロール・タイプ)―植物なめしで使われる物質―を生じます。R. coriariaの葉,R. chinensisの五倍子,そしてR. pentaphyllaの材と根に多く含まれています。スマックでなめされた革は柔軟で,軽く,色が明るい。スマックでなめされた革の一つの典型がモロッコ革です。

薬の用途
スマックは中世の薬として,主に中東の国々(ヨーロッパのなかでは容易に利用可能な国々)で多くの病気の治療に使われました。1970年代に考古学者によって発掘された,ロードス島沖の11世紀の難破船には,商売用の量のスマックの実がありました。これらは薬として,料理のスパイスとして,あるいは染料として使用するつもりだったのかもしれません。スタッグホーン・スマックは,ORACが1500μmol TE/g以上の強力な酸化防止剤です。

他の用途
養蜂家は乾燥したスマックボブを燻煙器の燃料源として使用しています
アメリカ北部では一般的にパイプの柄として用いられます。乾燥したスマックの木は,一般的にブラックライトとして知られている長波紫外線の下で,蛍光を発します。

毒性と管理
ツタウルシ (Rhus toxicodendron, syn.Toxicodendron radicans),アメリカツタウルシ(Rhus diversiloba, syn. Toxicodendron diversilobum),ドクウルシ (Rhus vernix, syn. Toxicodendron vernix)のような種類は,アレルギー源であるウルシオールを持っていて,ひどいアレルギー反応を引きおこします。ドクウルシはその白い実で識別されるかもしれません。

スマックは芽吹きやすいので刈り取ることはよい防除方法ではありません。ギザギザの鋭い切り株になるだけで,刈り取った後ですぐに新しく成長し回復するでしょう。ヤギを使って彼らに木の皮を食べてもらい,新たな芽吹きを妨げるのが,効率的で速い除去方法だと思われています。

「Sumac」は,香辛料としてではなく(香辛料としての用途も記されていますが),もっと広く「ウルシ属」とほぼ同義として解説してあります。
(平凡社『日本の野生植物 木本』(1989年)をみると,「Sumac」はウルシ属のなかのヌルデ節をさしています。ウルシ属(Rhus L.)―― ・ツタウルシ節(Sect. Toxicodendron) ・ヌルデ節(Sect. Sumac) ・ウルシ節(Sect. Vernix))

色々と興味深いことが書かれていますね。
北米では飲み物にされているとか(レモネードのようなものでしょうか),ブラックライトを当てると蛍光を発するとか,語源は「赤」に由来するとか。
sumacの写真を見ると,確かに赤い実をしています。
成熟したヌルデの実は赤くないですが[写真3],子房が膨らみはじめたばかりの時期には赤い色をしています[写真5]。

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