たぶん同じペア同士だと思うのですが,マガモとカルガモの2組のペアが一緒にいるところをよく見かけます。
お互いに気が合うのか,他のカモの集団とは離れて,一緒に行動しています。[写真7][写真8]
どちらも仲よく餌をつつく姿は,ほのぼのとしていて心がなごみます。

カモ類は雌雄で著しく体色が異なり,だいたいオスが派手な特徴のある色彩,メスが地味な色彩をしています。
マガモの雌雄もすぐに見分けられるのですが,カルガモに限ってはどういう訳か雌雄ともよく似た地味な体色がしています。

『山渓ハンディ図鑑7 増補改訂新版 日本の野鳥』(2011年)には,カルガモの雌雄の見分け方について次のように書いてありました。

成鳥雄は,雌よりも体が少し大きく,顔の羽色が雌よりもはっきりしていること,上・下尾筒が雌よりも濃いことなどでわかるが難しい。

(雌は)雄に比べて全体が淡色のものが多い。しかし,中には色の濃いものもいる。三列風切の外弁は,雄は白く,雌は褐色混じりのものが多い。雄の若鳥と雌との識別は難しい。

雄の上・下尾筒は全体が真黒に見える。雌は上・下尾筒ともに黒褐色だが,中には雄のように黒っぽい個体もいるので注意が必要。

尾筒(びとう)とは,鳥の尾羽(おばね)のつけね部分をいい,背側を上尾筒(じょうびとう),腹側を下尾筒(かびとう)といいます。
[写真5]雄と[写真6]雌を見比べると,確かに雄の尾筒がまっ黒なのに対して,雌の尾筒は若干うすい色をしています。
(というか,2羽を見比べて,尾筒がより黒い方を雄,もう片方を雌としているだけですが。)

頭部も[写真3]と[写真4]を見比べると,雄の方が濃い色をしています。

カルガモの雌雄の体色が似ていることについて,平凡社『日本動物大百科』(1996年)には次のように書いてありました。

 カルガモは,日本では1年中ふつうに見られる唯一のカモである。冬鳥として渡来するカモたちともっとも異なる点は,オスとメスが同じ羽色をしていることである。カルガモは,他種のカモがいない状態で繁殖するため,オスは目立つ羽色を必要としないのではないかという説明が考えられる。
 たしかに,大陸から離れた島に1種のみで定住するカモ類の場合には,もともと渡りをしてオスが特有の羽色をもっていた種に由来していても,雌雄同色となるから,オスの目立つ羽色がつがいの相手を選ぶのに役立つという仮説を裏づけている。しかしながら,カルガモの場合はつがい形成時に,他種のカモがいる場合もあり,オスが目立つ羽色をまったく必要としないわけではない。カルガモばかりでなく,低緯度の温帯から熱帯に定住するカモ類にはオスの羽色がメスに似る傾向があり,その理由はよくわかっていない。