町内を流れている小さな川の土手で,タゴガエルの卵を見つけました。
流れにえぐられて穴のようになっているところに,大粒の卵塊が産み付けられていました。[写真1]

近くの土の中からタゴガエルの鳴き声がさかんに聞こえているですが,姿は見えません。
まわりを見回しても,カエルらしき姿は見当たりませんでした。

周辺を撮影した動画です。
グオッ,グオッというタゴガエルの鳴き声が入っています。

卵塊の半分を持ち帰って,孵化を観察することにしました。
卵塊を持ち上げると,容易に二つに分かれました。
卵を包むゼリー層同士は,それほど強くはくっついていないようです。

メジャーを飼育ケース底に沈めて写した[写真3]で計測すると,卵の大きさは径約3mm,周りのゼリー層の大きさは径約7mm。
文一総合出版『改訂版 日本カエル図鑑』(1999年)には,タゴガエルの卵について次のように書いてありました。

蔵卵数は30 ― 160(平均128)個,卵径は2.7 ― 3.0mmで,動物極は淡い黒色,卵黄に富む。

繁殖活動については,次のよう書いてありました。

主に山地に見られ標高2,000m以上にも分布する。しかし,地方によっては低地でも丘陵地帯に分布する。繁殖期は4 ― 5月がふつうだが,暖地では3月に始まり,寒冷地では6月下旬となる。 10月や1 ― 2月に産卵するという報告もあり,同一地域で繁殖期を異にする2集団が見つかっている。繁殖場所は小渓流の緑にある岩の隙間や,湿地帯の地下にある,ゆるい流れをもつ伏流水中であるが,寒冷地では小川や用水路の石下,落葉の間などに産卵することもある。繁殖期の水温は9 ― 14℃ほどである。♀を待つ♂は,巣穴の中で鳴いていることが多いが,集団によっては開けた水たまりで繁殖活動を行う。卵は一時に球形の卵塊として産み出される。

採集した日には,まん丸の球形をしていた卵は,翌日の朝見ると微妙に形がゆがんでいました。[写真4]
それから日に日に形を変え,あっという間にオタマジャクシになってしまいました。
採集した日から孵化までに4日間しかかかっていません。

カエルの卵は受精から2~3時間で卵割が始まるそうです。
偕成社『カエル観察事典』(1996年)に載っていたヒキガエルの例では,受精後60時間で卵の背面に脊髄になる神経板ができています。
65時間で,神経板のふちが盛り上がってふさがり,脊髄がつくられます。
70時間後には,神経板の脳の部分がふくらんで,卵が楕円形に長くなっています。

[写真4]が受精後70時間後くらいの段階だと思います。
[写真3]をよく見ると,卵にうっすらと線が入っています。
これが神経板ではないでしょうか。

卵塊から誕生したオタマジャクシは38匹,孵化しなかった卵が4個残っていました。
産みつけられた卵塊には80~100個ほどの卵が含まれていたのではないかと思います。
[写真10]は,孵化しなかった卵を周りのゼリー層を取り除いて写したものです。
卵割が途中で止まっているようです。

[写真9]は孵化直後のオタマジャクシ。
頭のわきの,枝分かれしたひらひらしたものはエラです。
成長するとこのエラはエラぶたに覆われ,口や鼻から吸い込んだ水を内えらに取り込んで,呼吸するようになります。

オタマジャクシがカエルになるには1月半ほどかかるそうです。
続きは,また次回。

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孵化してからカエルになるのに21日しか,かかりませんでした。(2014/6/17追記)
タゴガエルのオタマジャクシ(1)
タゴガエルのオタマジャクシ(2)
タゴガエルのオタマジャクシ(3)