南禅寺橋近くの浅瀬に,シジミと一緒にカワニナがいました。(→2014年5月20日
持って帰り水をはった皿にいれていたところ,いつの間にか水中から抜け出し,机の上を這い回っていました。
動き回る姿はまさにカタツムリと同じです。
カタツムリが陸上で生活する貝なのだと,あらためて納得しました。
[写真3]を見ると,目つきが鋭くて,意外に悪人顔ですね。

ピーシーズ『日本産淡水貝類図鑑 ①琵琶湖・淀川産の淡水貝類改訂版』(2009年)によると,

琵琶湖・淀川水系に生息するカワニナ科貝類には1 8種類が知られている。これらはすべて卵胎生であるが,胎児殻の大きさや数は種によって異なる。また,カワニナ科の貝殻の殻底には螺肋(殻底肋)があり,この殻底肋の本数は成貝において分類の大きな目安となる。

カワニナのなかまは,殻底肋(かくていろく)の数と,縦肋(じょうろく)の形態で分類できるようです。
殻底肋とは殻底にある横筋で,縦肋とは貝の成長にともなってできる縦筋です。[写真2]

[写真1]は同所で採取した空殻を並べたものです。
大きいもので殻高30mmほど。
殻底肋は9~10本ほど。
縦肋は顕著なものもあればあまり目立たなものもありますが,体層から上にあります。

同書によると,殻底肋が多数あるものは「カワニナ」か「チリメンカワニナ」です。
「カワニナ」には縦肋がなく,「チリメンカワニナ」には縦肋が体層や次体層より上にある。
この貝には縦肋があることから「チリメンカワニナ」のようです。

チリメンカワニナについて,同書には次のように書いてありました。

本州,四国,九州に分布。流れの緩やかな川や池沼などの砂泥底・泥底に生息する。棟,木杭,水草などに付着するほか,砂泥底や泥底にもみられる。京都の嵐山のように山間部から急にひらけた平地になるような場所ではカワニナと混生する。また,同じ場所でも浅い川の流心部はカワニナが,岸近くの水際ではチリメンカワニナが生息する。

成貝は殻高25~35mmで41mmに達するものもあり,ほぼカワニナと同じ大きさになる。また形態もさまざまで地方変異が著しい。殻底肋は6~12本で9本前後の個体が多く,カワニナよりやや少ない。全面に螺肋があり,カワニナと異なるところは,とくに縦肋が著しいことである。縦肋が体層からあるものが多く,ない場合でも次体層から上部には必ずある。

[写真5]は,殻高6mmほどの稚貝。
[写真6]は,生きている個体を10秒ほど電子レンジで加熱してから,取り出した本体です。

料理をする時にはたくさんの貝を熱湯にいれても何も思わないのに,1個だけを電子レンジに入れて加熱すると,生き物を殺しているという罪悪感を感じてしまうのは不思議なものです。