疏水の石垣に羽化したばかりの小さなトンボがとまっていました。
体全体が白っぽく,まだ飛べる状態ではありません。
羽化殻も小さくて半透明で,それも水面近くにくっついていたので,かがんで覗き込んでようやく見つけることができました。

羽化殻と成虫を持ち帰り,『近畿のトンボ図鑑』で調べてみました。
イトトンボの仲間なのは分かるのですが,似た種類が多くて,それから先を見分けるのはなかなか難しいです。

近畿地方に生息するイトトンポ科の中てはキイトトンボのようにすぐに見分けられるものもあるが,よく似ていて見分けにくいものが多く,未熟,成熟で大きく色が変わる種があるのでいっそう紛らわしい。ポイントとして大きさ,体色や腹端の斑紋,眼後紋の形,翅胸前面などの黒条,淡色条,♂は尾部付属器の形などがある。特に尾部付属はP.211のセスジイトトンボ,ムスジイトトンボ,オオイトトンボ,クロイトトンボではチェックしておきたい。また生息場所も見分けるポイントとなる。

「セスジイトトンボ」「ムスジイトトンボ」「オオイトトンボ」のどれかだと思うのですが。
(「ムスジ」は「無筋」で線が無いのかと思ったら,古い図鑑では「六条糸蜻蛉」とあり,線が6本あることを意味するようです。)
ミナミヤンマ・クラブ『近畿のトンボ図鑑 』(2009年)に載っていた,3種の成虫の相違点をまとめると,次のようになります。

セスジイトトンボ ムスジイトトンボ オオイトトンボ
体長 27-37mm 30-38mm 27-39mm
眼後紋 三角形で大きい 細い。ほとんど消えている個体もある 大きい
後頭条 ある
(♂にはない個体もある)
ある
背隆線の黒条に淡色条 ♀にはある。
♂にはない。
♀にはある。
♂にはない。
ない
肩縫線の黒条に淡色条 ある
(♂にはない個体もある)
♀にはある。
♂にはない。(稀にわずかに現れる個体もある)
ない
尾部付属器 八の字に開いていて先はとがる 上付属器は小さい 下付属器は上付属器より明らかに長い
♀は前胸の後縁が富士山型にえぐられている

・体長35mmなので,3種のいずれにも該当します。
・[写真7]を見ると,眼後紋は大きく,ムスジイトトンボではありません。
・背隆線の黒条と肩縫線の黒条に淡色条があるので,オオイトトンボではありません。
したがって,このトンボはセスジイトトンボということになるようです。

[写真8]は近くの草むらにいた交尾中のイトトンボ。
多分,セスジイトトンボだと思うのですが。