水路の石垣に,妙なカタツムリがくっ付いていました。[写真1]
普段見かけるカタツムリのような大きな殻がなく,一見ナメクジに平べったい甲羅を載せたように見えます。
写真をよく見ると,端っこのほうに殻頂が見えるので,いびつな形ですが殻は巻いているようです。

とても小さく,殻も薄いので,この個体は幼貝で,これから殻が大きくなるのだろうと思っていました。
しかし,これで成貝かもしれません。
図鑑に載っていた,ナガオカモノアラガイとよく似ているのです。
ナガオカモノアラガイは1.5cmほどの大きさのカタツムリです。
東正雄著『原色日本陸産貝類図鑑』(1995年)には,ナガオカモノアラガイについて,次のように書いてありました。

殻はうすく,やや輝き,卵~紡錘形で鋭い。螺塔は高く短く,体層はやや長い。

殻の特徴や解剖の結果,関西地方に分布するカンサイオカモノアラガイとまったく同じなので,区別する必要がない。殻高12.5mm,殻径6.5mm,2 1/2層。関東地方から関西地方に分布する。

「ナガオカモノアラガイ」というのは,どこで区切るのか分かりにくい名前ですが,「長」+「丘」+「物洗貝」です。
「モノアラガイ(物洗貝)」は田圃などの淡水にすむ巻貝です。
「モノアラガイ(物洗貝)」によく似て,陸に棲むので「オカモノアラガイ(丘物洗貝)」。
「オカノモアラガイ(丘物洗貝)」より長いので(多分),「ナガオカモノアラガイ(長丘物洗貝)」。

ナガオカモノアラガイは京都府のレッドデータブックでは,「絶滅危惧種」に指定されています。
京都府レッドデータブックには次のように書いてありました。

形態:殻は細長い滴形(いわゆる細長いモノアラガイ形)で,殻高15mm程度まで。螺管の増大が著しく殻口は殻高の3/4程度を占め螺塔部分は小さい。殻は非常に薄く半透明で黄色を帯びた褐色を呈する。同じ科のヒメモノオカモノアラガイは,より小型で螺層縫合部のくびれが顕著で,殻口が相対的に小さく(殻高の2/3程度),より乾燥した環境に生息する。カンサイオカモノアラガイは異名。

分布:北海道から九州まで広く分布し,府内では京都市内の平野部でわずかに記録がある。

生態的特性:水田地帯の用水路や側溝など,陸域と水域をつなぐ水際の推移環境(エコトーン)に生息するが,水中に入ることはない。こうした環境は従来,十分な陸貝調査がされてこなかったため,今後,本種の生息が各地で確認される可能性がある。