歩道にクモが死んでいました。[写真1]
結構,大きなクモです。
アシダカグモでしょうか。
持ち帰って調べてみると,体形はよく似ているのですが,体の模様が違いました。

体長は22mm。[写真3]
触肢の先がふくらんでいないので♀ですね。[写真6]
右第1脚が失われています。
体の大きさと,頭胸部にある放射状の模様を手掛かりに,新海栄一著『日本のクモ』(2006年)を一枚ずつめくって調べてみましたが,該当するものがありません。
体長が20mmを越える大型のクモの種類は,そんなに多くないと思いますが。

ネットで探しまわっていると,キクメハシリグモに行きあたりました。
体の大きさといい,体の模様といい,多分間違いないと思います。
珍しいクモのようで,「水面をスイスイ『キクメハシリグモ』 神奈川県内で初確認」という新聞記事が載っていました。

 神奈川県大和市内の森林公園の水辺で今月12日,自然観察をしていた男性が大きなクモを見つけた。専門家による鑑定の結果,県内で見つかるのは初めてという「キクメハシリグモ」であることが判明。28日発行の日本蜘蛛(くも)学会のニュースレター「遊絲(ゆうし)」で報告される。
 キクメハシリグモは主に水辺に生息し,足を広げると10センチ程度ある大型のクモ。放射状の模様がある。網は張らず、アメンボのように水面に浮いてメダカやオタマジャクシ,水面に落ちた虫などに飛びかかり,食べる。日本や朝鮮半島,中国に分布しており,国内ではこれまでに東京や千葉,秋田,大阪,福岡など1都1府7県で発見されたとの報告がある。(2012/5/23 産経新聞)

水辺に生息するようです。
発見場所の近くにも水路があります。

八木沼健夫著『原色日本クモ類図鑑』(1986年)には,キクメハシリグモについて次のように書いてありました。

原記載には図のみ掲げられていて記述がないので本種の標徴は明瞭でない。アオグロハシリグモの一型とも思われる。過去の記録によれば本州,四国,(韓国)に産するという。

図の掲載はありません。

小野展嗣編著『日本産クモ類』(2009年)には,キクメハシリグモについて次のように書いてありました。

体長雌1827mm,雄14~18mm。アオグロハシリグモに似るが,次の点で区別できる。キクメの頭胸部には放射状の白線模様がある(図4)が,アオグロではそのような斑紋は見られない。キクメの外雌器中央にはM字状のキチン化した部分がある(図6)がアオグロにはない。キクメの雄触肢脛節は附節と同じくらいの長さがあるが(図5),アオグロでは附節長の半分ほどしかない。分布:日本(本州,九州),中国および韓国。 Dolomedes stellatus Kishida,1936およびホシモノハシリグモは本種の異名。

(「体長雌1827mm」は「体長雌18~27mm」の誤植かと思います)

ハシリグモ属については,次のように書いてあります。

体長9~39mm。中眼域は長さ<幅で,前中眼は前側眼より大きい。上顎の後牙堤に4歯がある。歩脚は日本産のほかの属のクモより太くて頑丈である。ハシリグモ属では,雄触肢器官の形態や外雌器の形態がよく似ていて同定のキーにならない場合が多い。色彩斑紋や歩脚の長さ,雄触肢の脛節長や脛節突起の形態などが同定の際のキーになる。世界におよそ100種が知られ,日本には11種が生息している。

やはり頭胸部の「放射状の白線模様」が「同定の際のキー」になるようです。
[写真8]で測ってみると,中眼域の長さと幅はほぼ同じでした。
前中眼は前側眼より大きいです。