近所の家の塀に,すこし大きな黒いクモが張りついていました。
寒いせいか動こうとしません。
簡単に捕まえることができました。

全部の脚を縮めて体に引き寄せ,防御体勢をとっています。
クモの脚は左右4本ずつで8本のはずですが,触肢が長いので10本あるように見えます。[写真4]
触肢が歩脚のように見えるクモを以前に調べたことがあります。(→2012年10月5日2007年10月2日
キシノウエトタテグモです。
このクモもキシノウエトタテグモのようです。

キシノウエトタテグモは環境省レッドデータブックでは準絶滅危惧種になっていますが,京都にはわりと多く生息しているようです。
それも都心部に多く,郊外に行くほど数が減るそうです。
京都府レッドデータブックには,キシノウエトタテグモの生態的特性として次のように書いてありました。

人家近くの崖地や、神社・仏閣の石垣の間、旧家の庭先などに、横穴を掘って棲む。横穴の入口には、糸で裏打ちされた開閉式の蓋がある。近くを通る昆虫やワラジムシを捕獲し、住居に引き込んで摂食する。東京、横浜、京都など大都市の中心部に多く、郊外に行くに従って減少する。愛知県では名古屋市、犬山市、岡崎市の標高60m以下の地域に分布する。

「近くを通る昆虫やワラジムシを捕獲し、住居に引き込んで摂食する。」ということは,見つけた場所の近くに巣穴があるのでしょうか。
「トタテ」グモの名前の由来となっている,蓋付きの巣穴を見てみたいものです。

体長は15mm。[写真3]
触肢の先がふくらんでいないので,♀です。
クモの雌雄の見分け方について,八木沼健夫著『原色日本クモ類図鑑』(1986年)には次のように書いてありました。

雌(female)触肢の先が細く終わり,何らの構造がない。体はいっぱんに大きい。
雄(male)触肢の先がふくらみ,複雑な構造を具える。体はいっぱんに小さい。

小野展嗣編著『日本産クモ類』(2009年)には,トタテグモ科について次のように書いてありました。

 体長10~40mmの中型ないし大型のクモで, 8眼, 3爪,4肺,体は灰色,褐色,赤褐色または黒色,背甲は長さ>幅または長さ=幅で,中央部で最も幅広く,前縁中央は上方から見てやや前方に突き出る。中窩は横長(前曲)で明瞭。頭部は胸部よりやや高く,眼は中央に集合するが限丘は顕著でなく,側眼は中眼より大きい。上顎はよく発達し,馬鍬を有し,牙溝は明瞭で両牙堤にそれぞれ7~10歯がある。下唇は胸板と境をなし,歯状突起を有する群と。それを欠く群がある。胸板は長さ>幅で,1対または癒合した大きい印刻があるか,あるいは不明瞭。触肢基節(下顎)に歯状突起を有し,前側面の先端はやや膨れる。雌の触肢は歩脚状で長い。雄触肢器官は単純で,指示器が明瞭でなく,硬化した栓子を備える。前脚の脛節,蹠節,附節側面に多数の刺を有し,後脚背面にも,多数の刺や剛毛を備える。末端毛束を欠く。雌の附節に歩脚毛束を欠く(雄にはある)。腹部に硬化した背板を欠き,対になった白斑や横条のある種がある。2対の糸疣を有し,中疣は小さく,互いに離れ,後疣は3節で太短く,先端は丸い。雌の生殖器に1対の受精嚢を有する。
 地中によく糸で裏打ちされた管状住居を造り,入り口に扉を付ける。