アオサギが,コンクリートの縁に嘴をこすり付けていました。
まるで嘴を研いでいるかのように,何度もこすり付けています。
この様子は初めて見ました。
よほど嫌なものでもくっついていたのでしょうか。

それとも本当に嘴を研いでいたのでしょうか。
アオサギは魚を捕るときに突き刺すこともありますが,基本的には嘴で挟みます。
突き刺してしまうと,飲み込むのが大変です。
魚を突き刺すために嘴を鋭くしているとは考え難いと思います。

「鳥 嘴 研ぐ」でweb検索してみると,インコの嘴の手入れのページがたくさんヒットしました。
インコは嘴が伸びてくるので,定期的に嘴の先を研いであげなければならないそうです。

鳥は元来,嘴が伸びてくるもののようです。
野生の鳥はエサを捕るなどして自然に摩耗しますが,石などにこすりつけて研ぐこともあるとか。
アオサギも伸びた角質層を手入れするために,を研いでいたようです。

鳥の嘴は骨の表面を角質層が覆ったものです。
松岡廣繁他著『鳥の骨探』(2009年)には,鳥の嘴について次のように書いてありました。

鳥の嘴は,顔面骨が角質層で覆われたものである。角質は軽いうえに,新陳代謝により常に鋭く磨かれるし,硬さと粘り強さを兼ね備えた,嘴にとって最高の建材である。

平凡社『世界大百科事典』(2007年)には,次のように書いてありました。

これらの骨格の外表面(後端の一部を除く)を覆う厚い角質は表皮の変形したもので,骨の表面に固く結合している。鳥のくちばしは鋭敏な触覚をもっていて,人の手のように多様な作業を器用にこなすことができる。鳥の顎骨の構成は爬虫類のそれと基本的に同様だが,歯は完全に失っている。そのため食物に対して切断やそしゃくは行わず,つつくこと,ついばむこと,かみつくこと,くわえること,引っ張ること,吸うことなどに使われる。くちばしの外形は種子食,果実食,肉食,魚食,昆虫食,花蜜食などの食性に適応して,いくつかの型に分化している。

「嘴が伸びる」といっても骨の部分は伸びないので,角質の部分だけが伸びます。
爪が伸びるようなものですね。
角質が伸びないと,嘴の先はすぐに摩耗して骨にまで達するでしょう。

そういえば,家にアオサギ頭部の骨格標本があります。
15,6年前にほとんど白骨化したアオサギの死骸を見つけて持ち帰ったものです。
全身を骨格標本にしようとしたのですが,手に余ったので,頭部だけを骨格標本にしました。

次回に,アオサギの頭骨について書きたいと思います。
2014/12/30