九条山の道を,黒いカタツムリが歩いていました。[写真1]
2日後に同じ場所に,また黒いカタツムリが。[写真12]
ニッポンマイマイでしょうか。
この黒いカタツムリについては,5年前にも書いています。(→2010年6月5日

家に持ち帰り調べると,意外なことがわかりました。
殻自身は黒色ではなく,半透明の褐色なのです。
中身(軟体)の黒色が透けて見えて,全体が黒色に見えていたのでした。

[写真5]~[写真7]:中身の入っている殻
[写真8]~[写真10]:中身の入っていない殻

殻の大きさ18mm,高さ17mm,右巻き,殻高が高くて山形の形,林縁に生息,地域は京都となると,ニッポンマイマイが該当しそうなのですが,はっきりしません。

小学館『日本大百科全書』(1994年)には,ニッポンマイマイについて次のように書いてありました。

軟体動物門腹足綱ニッポンマイマイ科の巻き貝。陸生種で,本州と四国東部の低木の林などにすむ。殻高15ミリ,殻径20ミリに達する円錐形のカタツムリで,殻は淡黄色と赤褐色の二型がある。螺層は六階で,体層の周囲に弱い角があり,その上に通常細い褐色帯を巡らす。殻ロは親貝では縁が厚くなってわずかに外方へ開く。殻底の中央の臍孔(へそあな)は小さくて深い。殻の大きさや形には地方的変異があり,関東地方の基本型に対し,関西地方のものはスジイリニッポンマイマイ S.j.granulosa,伊吹山付近のものは大形でカドバリニッポンマイマイ S.j.carinataとよばれている。

保育社『原色日本陸産貝類図鑑』(1995年)には,ニッポンマイマイについて,次のように書いてありました。

殻はやや小形で,殻高17mm,殻径19mm, 5 1/2~6 1/2層。うすく半透明,黄褐~濃褐色。周縁に不明瞭な色帯があるか,または消失してその下に淡色帯がある。螺塔は円味のある円錐形。螺管は緩やかに太くなる。周縁は角がる。殻口は下降して斜位。唇緑は内部に厚く白色。軸唇は反転する。底唇には小さな滑層肥厚がある。臍孔の1/2は軸唇におおわれる。軟体は淡黄~灰黄~黄褐色。本州(東北,関東,北陸,関西)に分布する。

・殻高17mm
……この個体の殻高は17mm

・殻径19mm
……この個体の殻径は18mm

・5 1/2~6 1/2層
……この個体の殻は6 1/2層

・うすく半透明,黄褐~濃褐色
……殻はうすく半透明で,褐色

・周縁に不明瞭な色帯があるか,または消失してその下に淡色帯がある
……周縁に,色帯はありません

・螺塔は円味のある円錐形
……螺塔は円味のある円錐形です

・螺管は緩やかに太くなる
……螺管は緩やかに太くなっています

・周縁は角がる
……「角がる」という表現がよくわからないのですが,周縁は角ばっています

・殻口は下降して斜位
……殻口は斜めに開いています

・唇緑は内部に厚く白色
……唇緑は白くなっています

・軸唇は反転する
……軸唇はめくれて,反転しています

・底唇には小さな滑層肥厚がある
……底唇に,小さなふくらみがあります

・臍孔の1/2は軸唇におおわれる
……臍孔は小さく深く,めくれた軸唇が半分をおおっています[写真6]

・軟体は淡黄~灰黄~黄褐色
黒色とは書いてありません。
カタツムリには黒化するタイプもいるそうなので,これらもそうではないかと思います。
[写真11](2015/5/24)と[写真12](2015/5/26)を見比べると,[写真12]の方がより黒いですね。

・本州(東北,関東,北陸,関西)に分布する
ニッポンマイマイは本州に広く分布する普通種で,九条山でもよく見かけます。[写真14]

カタツムリの種を特定するには,生殖器を調べるしかないそうですが,殻から抜き出した軟体は複雑な構造をしていて,どれが生殖器なのかさっぱりわかりません。
もうすこし,勉強する必要があるようです。