道の真ん中をミノムシが,もそもそと歩いていました。(2015/5/12)[写真1]
ミノのまわりには,大ぶりに切られた色々な種類の葉っぱがくっ付いていて,ピンク色の柔らかそうな葉っぱなどもあり,なかなかファッショナブルです。[写真2]

持ち帰ってよく見ると,幼虫が頭を出しているそばに,もう一つ頭があります。[写真3]
頭部の脱皮殻です。
あまり趣味のいい装飾ではありませんが,ミノの入り口に頭部の脱皮殻をつけるのはニトベミノガの特徴です。
このミノムシはニトベミノガのようです。

カエデの葉を与えてみると,よく食べます。
成虫になるまで飼ってみることにしました。

学研教育出版『日本産蛾類標準図鑑3』(2013年)には,ニトベミノガの生態について次のように書いてありました。

低地から山地にかけて生息する。年1化,6齢幼虫越冬。羽化期は6月中旬から8月上旬。幼虫期は8月中旬から翌年5月下旬まで。森林性の種であるが,果樹園,都市公園,郊外の人家の庭などでも観察される。幼虫は紡錘形のミノを背負って生活する。終齢幼虫のミノの表面には,餌植物から大きくかじり取った葉片を多数つけており,外観はミノの本体よりかなり大きく見える。ミノ本体は柔らかく紡がれ。人の手で容易に引き裂ける。ミノの前開口部周辺にこれまで脱皮した頭部の脱皮殻をつけているのが,本種を同定するもっとも重要な形質である。蛹化するときに幼虫は,餌植物の枝や葉などにミノを固着させ,下垂させる。固定部はオオミノガやチヤミノガのように強固ではない。若齢幼虫のミノは円錐形,盛岡では中齢(6齢)で越冬のために枝や樹幹に移動してミノ(約llmm)を固定し,越冬する。 ♀が羽化した蛹殻は,頭部上部後縁と胸部および第1腹節背面の背中線が裂けた状態である。

年1化,6齢幼虫越冬」「幼虫期は8月中旬から翌年5月下旬まで」ということは,採集した5月中旬の時点で6齢以上ということになります。

ミノを切り開いて,幼虫を取り出してみました。(2015/5/29)[写真5]
体長約15mm。
腹端が独特の形状をしています。

裸のまま,カエデの葉の上に置いておくと,1日後には新しいミノを作っていました。(2015/5/30)[写真6]

1か月後の6月下旬,カエデの葉を食べなくなりました。
ミノには,上端に頭部の,下端に胸部の脱皮殻がついています。(2015/6/29)[写真7]
そろそろ羽化したのかもしれません。
ミノガのオスは羽化すると,普通のガの成虫のように翅があり飛び立ちますが,メスは羽化しても翅がなくウジ状でミノの中に留まります。
羽化したメスがミノのなかにいるのではないかと思ったのです。

再び,ミノを切り開いて中身を取り出してみました。(2015/6/30)
幼虫らしき姿がありました。[写真8][写真9]
これがメスの成虫なのでしょうか。
いつもの通り葉っぱの上に置いたのですが,数日たっても葉を食べることはなく,ミノも作りませんでした。(2015/7/3)[写真10]

そして数日後気づくと,驚いたことに,蛹に変態していました。(2015/7/8)[写真11]
成虫ではなく,終齢幼虫だったのです。
近くに脱皮殻が落ちていました。[写真12]

今から思うと,6月下旬に餌を食べなくなったのは,蛹化前の準備だったのですね。
前蛹になりかけのところを,無理矢理に外に引きずり出してしまったようです。
蛹化するときに幼虫は,餌植物の枝や葉などにミノを固着させ,下垂させる
[写真7]を見ると,ミノの上端は茎に固定されています。

蛹には,翅の形が浮き出ています。
この個体はオスのようです。

しかし,それから1か月,今日(2015/8/6)もまだ羽化していません。
触っても動きが全くないので,死んでいるようです。
蛹化後はしばらく元気に動いていたのですが。
シャーレの中に横たえさせていたのが,いけなかったのでしょうか。

成虫の姿を見てみたかったですね。
残念です。