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スジクワガタとコクワガタの比較

2015年8月15日

スジクワガタとコクワガタの♂を比較してみました。
スジクワガタは,ひと月前に水路閣付近で採集したものです。
当初コクワガタとしていましたが(→2015年7月14日),スジクワガタではという指摘を受けて訂正しました。
比較するコクワガタは,大小2頭で,いずれも10年ほど前に自宅付近で採取したものです。

保育社『原色日本甲虫図鑑2』(1985年)に記載されている,スジクワガタとコクワガタの特徴を比較してみました。(スジクワガタを(スジ),コクワガタを(コクワ)と略しています。)

・体長

(スジ)♂13~23mm,大あご1~8mm。♀15~21mm。
(コクワ)♂17~32mm,大あご3~13mm。♀12~28mm。

大きさ的には重なりますが,コクワガタの方が大きくなるようです。
スジ標本は体長(大あごをのぞく)21mmで,スジクワガタとしては大型のようです。[写真1]
コクワ標本(大)の体長は31mmで大型,コクワ標本(小)の体長は23mmで小型~中型に該当しそうです。[写真2][写真3]

・体色

(スジ)黒褐色ないし赤褐色, ♀はほとんど黒色。
(コクワ)暗褐色ないし黒褐色,一般に♀は♂より暗色。

コクワ(小)標本はすこし赤みを帯び,茶褐色に見えます。

・頭楯

(スジ)♂の頭楯は横長,幅は長さの約4倍,前縁は2弧状に浅く湾入し,中央は角ばる。
(コクワ)♂の頭楯は横長,幅は長さの4倍以上,顔面との境は明確ではなく,前縁は弱い2波状。

[写真4]で頭楯の横幅と縦の長さの比率を測ってみると,スジ標本では約3.4倍,コクワ(大)標本では約5.3倍でした。コクワガタの方がすこし幅広いようです。
[写真5]はコクワ(小)標本の頭楯です。顔面と頭楯がつながっているように見えます。「顔面との境は明確ではなく」とは,このことを言っているのでしょうか。

・眼緑突起

(スジ)眼緑突起は複眼の前半を緑どるか,またはそれよりやや短い。
(コクワ)眼緑突起は複眼の中央に達するが,これをこえることはない。

[写真6][写真7]を見ると,スジクワガタの眼縁突起の方がすこし短いですね。
コクワガタの方は複眼のほぼ中央に達していますが,スジクワガタの方は複眼の中央に達していません。

・頭部

(スジ)複眼の前後の突出はほとんどなく,後方は両側ほぼ平行で狭まることはない。
(コクワ)複眼の前後の突出は弱く鈍く,後方は前胸に向けて狭まる。

[写真8]を見ると,スジクワガタの頭部は四角い感じを受けますが,コクワガタの頭部は,複眼の後方が狭まっているので丸みを帯びた感じがします。

・大あご

(スジ)大あごは,大型のものでは,先端の内方に向く小歯があり,中央前に2本の内歯が合して平盤状となった大きい歯があるが,中型および小型のものでは端歯は消失し,中央の内歯は1本となるが,消失することも基部に近づくこともなく,つねに存在する。
(コクワ)大あごは細長,中央前にやや大きい内歯,先端直後に小歯があるが,小型になるにしたがいまず小歯が消失,さらに小型になると内歯も消失する。

スジ標本は大型個体なので,大あご先端の小歯も,「2本の内歯が合して平盤状となった大きい歯」もあります。[写真9]
コクワ(大)標本には大あご先端の小歯がありますが[写真11],コクワ(小)標本には大あご先端の小歯がありません[写真10]。内歯はどちらにもあります。
スジクワガタとコクワガタを見分けるには,この大あごの形状で判断するのは一番分かりやすい方法のようです。

・前胸背板

(スジ)前胸背板は大型,中型のものではつや消し状であるが,小型のものでは光沢があり,強い点刻を散布する。側縁は後方1/3で鈍い小歯状に突出,それより先は大型,中型では波曲して前方にややひろがるが,小型のものはまるみを帯びて前方に狭まる。
(コクワ)前胸背板はほぼ中央でもっとも幅広く,側縁は中央でやや突出,その前後で波曲,後方1/3のところに小さい突出があり,後角はまるい。

[写真12]を見ても両種よく似ていて,どちらも側縁の後方1/3のところが小さく突き出しています。それにくわえて,コクワガタの方は,側縁の中央部分がややでっぱって波打っています。

・上翅

(スジ)上翅は大型では一様に微細な点刻があり縦条はなく,中型では点刻が粗となりわずかな不明瞭な縦条が現れ,小型では多くの明暇な縦条が現れ,間室には粗大な強い点刻を散布する。
(コクワ)上翅の点刻は細かく密。♀は頭胸部に光沢があり,上翅の点刻は♂にくらべ粗大,会合部に光沢がある。

スジクワガタは名前に「筋」とついているように,上翅に筋が入っているのが特徴ですが,大型の個体では筋が消えるようです。スジ標本には,[写真13]のように縦条が残っています。この個体は,大型というよりは中型の部類にはいるのかもしれません。

・脛節の外棘

(スジ)(記載なし)
(コクワ)脛節の外棘は,中,後脛節各1本,♂は後脛節の外棘を欠くものが多い。

コクワ標本にはどちらも,後脛節の外棘がありません。
スジクワガタの解説には脛節の外棘については触れられていないのですが,スジ標本の中,後脛節にはそれぞれ外棘が1本あります。[写真14]

スジクワガタとコクワガタはよく似ていて,近縁の種だろうと思ってしまいますが,意外とそうではないようです。
学研教育出版『日本産コガネムシ上科標準図鑑』(2012年)には,次のように書いてありました。

以前,本種(スジクワガタ)はコクワガタやアマミコクワガタとともにコクワガタ属Macrodorcasとされてきたが,ミトコンドリアCOI遺伝子や酵素タンパク質による系統解析からコクワガタとは別系統であることが示されている。

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