道にハチがうずくまっていました。[写真1]
かすかに肢を動かしていいます。
黒い体と胸に密生した黄色い毛は,一見クマバチを思わせます。

図鑑で調べてみると,オオハキリバチのようです。
意外に獰猛な顔をしていますね。[写真5]
花粉や蜜を集める草食系のハチにしては,大きすぎる大顎です。

[写真7]は,オオハキリバチの大顎とオオスズメバチの大顎を比較したもの。
比べてみると,オオハキリバチの大顎は肉食のオオスズメバチよりかなり華奢な感じがします。
やはりオオスズメバチの大顎は,肉を切り裂くために鋭く頑丈にできています。

北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑』(2008年)には,オオハキリバチについて次のように書いてありました。

体長♀22~25mm。体は黒色。胸部および第1背板には黄褐色毛を密生;第2背板以下黒色短毛あり;第2背板後縁外側に白色臥毛あり;第3背板のものは不明瞭,腹面刷毛は基部黄褐色で末節に向かい黒変する。頭盾は短く,強く横に隆起する。腹部の点刻は特に粗大。本邦産最大のハキリパチで夏季出現,樹脂にて地上孔筒に営巣する。

・体長♀22~25mm
……この個体は体長25mm。[写真3]

・体は黒色
……[写真3]背面。[写真4]腹面。

・胸部および第1背板には黄褐色毛を密生
……[写真10][写真8]

・第2背板以下黒色短毛あり
……[写真8]

・第2背板後縁外側に白色臥毛あり
……[写真8]

・第3背板のものは不明瞭,腹面刷毛は基部黄褐色で末節に向かい黒変する
……[写真8][写真9]

・頭盾は短く,強く横に隆起する
……[写真5]

・腹部の点刻は特に粗大
……[写真8]

ハキリバチの名前は,葉を切り取って巣の材料とすることから来ています。
しかし,平凡社『日本動物大百科10』(1998年)には,オオハキリバチについて次のように書いてありました。

ハキリバチ属が植物葉片を利用するのに対し,ヤニハナバチ属では,樹脂(やに)を巣材に利用する。クズハキリバチと同じ体格でほぼ同時期に営巣するオオハキリバチは,樹木に穿孔(せんこう)する甲虫の坑道などを巣に選ぶと,マツなどの樹脂を大あごで採取,運搬し,俵(たわら)形の育子室を形づくっていく。その際,樹脂だけでなく,小石・砂・土・木片などをまぜ合わせて増量し,すきまを満たす。育子室がほぼ形づくられると,採餌(さいじ)行動に移る。貯食後産卵し,樹脂などを用いて育子室を閉鎖する。オオハキリバチでは,巣材採集が1日の行動の半分以上を占め, 1育子室の完成に1~2日をついやす。筒長には関係なく1~4室をつくり,樹脂などでふさいだのち,姿を消す。

何と,オオハキリバチは,ハキリバチと名前がついているものの,葉を切る習性がないということです。
ハキリバチの代表のような名前がついているのに,意外ですね。