4日前にポツンと1本だけ生えていた,オオシロカラカサタケと思われるキノコ。
同じ場所に,今度は10本ほどが群生していました。
採集して持ち帰り,名前を調べてみました。
図鑑を見ると,「オオシロカラカサタケ」か「ドクカラカサタケ」か迷ってしまいます。

『山渓カラー名鑑 日本のキノコ』(1988年)には,オオシロカラカサタケとドクカラカサタケについて,次のように書いてありました。

オオシロカラカサタケ

傘は径7~30cm,表面は白色で,帯褐色の鱗片をつける。肉は白色,不変色または多少紅変する。ひだは隔生し,白色のちオリーブ色となる。柄は長さ10~25cm,根もとはふくらみ,上部に厚い可動性のつばをもつ。

夏~秋,芝生,草地などに発生。毒。熱帯~亜熱帯を中心に分布。

ドクカラカサタケ

傘は径8~10cm,表面は白地に淡黄褐色の大きな鱗片をつける。柄は長さ10~12cm,可動的なつばをつける。肉は傷つけば赤変。

秋,タケやぶ,林地に群生。日本。

・傘の径は,オオシロカラカサタケが「7~30cm」,ドクカラカサタケが「8~10cm」。
今回の(開ききっていない)傘の径は9cmほどですが,4日前のものの傘の径は16cmほどあったので,傘の大きさからするとドクカラカサタケではないようです。

・肉は,オオシロカラカサタケは「不変色または多少紅変する」,ドクカラカサタケは「傷つけば赤変」。
[写真8]~[写真10]は縦に切った断面です。
結構,赤変しています。
ドクカラカサタケだけでなく,オオシロカラカサタケも柄やひだを切ると赤変するそうです。

・オオシロカラカサタケのひだは「白色のちオリーブ色となる」。
これがオオシロカラカサタケを見分ける一番の特徴のようです。
採集したものは発生したての若い個体だったので,ひだはきれいな白色をしています。
このあとどう変化したのか見たかったのですが,後日見にいった時には,残っていたキノコは跡かたもなくなくなっていました。

・発生場所は,オオシロカラカサタケが「芝生,草地などに発生」,ドクカラカサタケが「タケやぶ,林地に群生」。
今回のキノコが発生していた場所は,道路沿いの遊歩道のなかです。[写真1][写真2]
「タケやぶ」や「林地」ではなく,「芝生,草地」に該当します。
発生場所,大きさから見て,このキノコはオオシロカラカサタケで間違いないようです。

ランニングで十数年この場所を通っていますが,オオシロカラカサタケを見るのは初めてです。
オオシロカラカサタケが発生したということは,単に見慣れないキノコが発生したという以上の,もっと重要なメッセージが込められているようです。
オオシロカラカサタケは,地球温暖化が原因と思われる分布拡大が続いているキノコなのです。

オオシロカラカサタケは元々が熱帯性のキノコで,冬期の温度が一定以上ないと生息できないと考えられています。
熱帯性きのこ“オシロカラサタケ Chlorophyllum molybdites(Meyer : Fr.) Massee”の日本国内での分布の拡大状況』によると,日本国内での最初の確認例は,1937年(昭和12年)東京府立川町。
1972年に徳島県海部郡,1980年に大阪府高槻市,1991年に千葉県南房総市で確認。
「1990年前後に熊本県,大分県,高知県から近畿地方の兵庫県,京都府で発生が確認され,2000年前後には長崎県,福岡県,滋賀県,岐阜県,茨城県へと分布を拡大した。その後2010年前後には山陰地方,東北の宮城県で発生が確認された。」

地球温暖化による分布拡大の例としてはナガサキアゲハが有名ですが(→2007年5月8日),キノコにもそうした例があるのですね。
知りませんでした。