疏水沿いに生えたカラムシの葉に,フクラスズメの幼虫がいました。
大きくて,黒くて,黄色い帯のなかに赤い眼状紋が並んでいて,毛まではえていて,見ると誰でもギョッとしてしまう姿です。

私も苦手なのですが,一度名前を覚えてしまうと意外と「絶対無理」感は薄らぐものです。
カメラを近づけて写真を撮ることも,抵抗なくできるようになりました。

近づきすぎてカメラが茎にあたりました。
揺れがおさまるまでカメラを構えて待っていたのですが,なかなか静止しません。
よく見ると草が揺れているのではなく,幼虫が体を揺らしているのでした。
体を反り返らせて,ますます激しく揺すっています。

フクラスズメの幼虫が危険が迫ったときにとる威嚇行動です。
動画に撮ってみました。

学研『日本産幼虫図鑑』(2005年)には,フクラスズメの幼虫について次のように書いてありました。

幼虫の頭部は黒色,体は薄い黄色で,背中に黒の横縞がある。気門と尾部は鐙色で,気門の上に太い黒条が走る。秋に路傍のカラムシで大発生することがあり,刺激を与えると反り返って体を揺らす。老熟した幼虫は浅く土中に入り,繭を作ってその中で蛹化する。成虫は屋内に入り込んで越冬することもある。

フクラスズメの幼虫は「浅く土中に入り,繭を作ってその中で蛹化する」とあります。
そういえば,カラムシに幼虫がついているのはよく見ますが,繭が付いているのは見たことがありません。

「スズメ」の名がついていますが,フクラスズメはスズメガ科ではなくヤガ科です。
「ふくら雀」という語は冬の季語にもなっていて,寒中に全身の羽毛をふくらませている雀の事をいいます。
「福良雀」「福来雀」の字をあてることもある,縁起のよい語だそうです。
成虫の姿が「ふくら雀」に似ていることからフクラスズメの名がついたそうですが,地味なガなのに随分メジャーな名前がついているものです。

ちなみに,この場所にはフクラスズメの食草である,カラムシもヤブマオもどちらも生えます。
カラムシとヤブマオの葉はよく似ていますが,カラムシは互生,ヤブマオは対生です。
[写真1]を見ると,互生なので食草はカラムシですね。
ヤブマオについて→2008年10月21日
カラムシについて→2008年10月14日