動物園南の疏水際に生えている,カラムシとヤブマオ。[写真1]
両種は,よく似ていて紛らわしいです。
どちらであっても特に問題はないのですが,一応比較してみました。

カラムシについて,『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,次のように書いてありました。

高さは1~2mぐらいである。茎は円柱形で単一かあるいは多少分枝し,葉は互生し,広卵形あるいは卵円形で先端は鋭尖形,基部は円形あるいはくさび形,ふちには粗きょ歯があり,上面はざらつき,下面には白綿毛が密生する。夏から秋にかけて,分枝した花穂を腋生し,細かい花をつけ,茎の下方におばなの穂を,上方にめはなの穂をつける。おばなは黄白色でがく片4個,つき出したおしべが4個ある。めばなは淡緑色で小球状に集まり,それぞれ筒形のがくにつつまれ,花柱が1個ある。果実は細小,楕円形で有毛,集まって小球状をしている。茎には強い繊維があり織物を作る。

ヤブマオについては,次のように書いてありました。

茎は直立し,高さ1m前後,枝を出さず,皮の繊維は弱い。葉は対生,有柄,ほぼ円形ないし卵形で,先端が尾状に尖り,ふちには粗大なきょ歯があり,3本の主脈がある。葉質は厚く,ひどくざらつき,茎とともに綿毛がある。葉間托葉は皮針形で離生する。秋,葉液から長さ20cmぐらいの花軸をぬき出し,淡緑色の細かい花を密穂状につけ,下部の花穂はおばなを,上部の花穂はめばなをつける。おばなのがくはおおむね4裂,おしべは3~4個。めばなは筒形のがくにつつまれ,花柱は1個,柱頭は線形で宿存する。そう果は細小,長倒卵形で小剛毛があり,多数集って球形となり,緑色である。

分かりやすい違いは,次の2点でしょうか。
・カラムシの葉は「互生」,ヤブマオの葉は「対生
・カラムシの葉の「下面には白綿毛が密生する

[写真6]と[写真7]を見ると,カラムシは互生,ヤブマオは対生なのが分かります。

[写真4]と[写真5]は,両種の葉の表裏を比較したもの。
カラムシの葉裏が白くなっているのが分かります。

[写真8]は,両種の果実を比較したもの。
一見するとかなり異なりますが,拡大してみると,どちらも同じように「果実は細小,楕円形で有毛,集まって小球状をしている」のが分かります。

このあたりは年に2~3回除草されます。
根が残るせいか,その後にも必ず両種が生えてきます。
葉が生えて次の除草までの期間に,アカタテハやフクラスズメが卵を産み,幼虫は両種の葉を食べて育ちます。
しかし見ていると,蛹になるまで生き残れるものは多くありません。
アリやクモ,アシナガバチや寄生バチ,鳥など多くの外敵に捕食されているのだと思います。
両種にとってはありがたいことなのですが。