マツぼっくりの付け根に,変な虫がいました。
黒い体から,ごつごつした長い脚が出ています。[写真1]
2頭が連なっているようにも見えます。
黒いうえに,ててらてらとしていて,体の形がよくわかりません。
とりあえず写真を撮り,採取して持ち帰りました。

2頭だと思っていましたが,1頭の虫でした。
写真を見ると,2本の触角を揃えて前に伸ばし,身を隠そうとしています。
サシガメの幼虫のようです。
ネットで調べてみると,ヤニサシガメの幼虫でした。

学研『日本産幼虫図鑑』(2005年)には,ヤニサシガメの幼虫について,次のように書いてありました。

幼虫の体は長卵形で,樹脂のような物質をしばしばまとっている。腹部の側縁部や脚には肥大した突出部が連続して並ぶ。体色は黒色で,頭部の後方から中胸背板の先端にかけての中央部に,黄白色の細い縦帯がある。成虫と同様に,触角の第1節と腿節に2個ずつ,脛節に1個ずつの黄白色の環状紋が現れる。里山から低山地にかけてみられ,主にアカマツやクロマツの樹上で生活する。樹皮の隙間や割れ目などで,集団で越冬する。

・樹脂のような物質をしばしばまとっている
ヤニサシガメという名がついているように,成虫も幼虫も体中にべとべとしたヤニをまとっています。
このヤニは,マツが分泌している松脂を塗りつけたもので,獲物の捕獲率を上げる効果があるようです。

・腹部の側縁部や脚には肥大した突出部が連続して並ぶ
体全体がごつごつした感じがします。
樹皮に擬態しているのでしょうか。

・頭部の後方から中胸背板の先端にかけての中央部に,黄白色の細い縦帯がある
[写真4]

・触角の第1節と腿節に2個ずつ,脛節に1個ずつの黄白色の環状紋が現れる
[写真10]

・主にアカマツやクロマツの樹上で生活する
見なおしていて気づいたのですが,前回の「松ぼっくり」記事中[写真14]にも,葉の陰にヤニサシガメが写っています。
全然気づきませでした。

サシガメ類は長い口吻をもっています。[写真10]
これを昆虫の体にさして,体液を吸います。
ヤニサシガメも不用意に捕まえると,口吻で刺すことがあるそうです。