路上にハチが死んでいました。[写真1]
黒いずんぐりした体に,胸部を覆うふさふさとした黄色い毛。
クマバチです。
枯木のなかで長い冬を過ごし,ようやく外の世界に出てきたばかりなのに。

クマバチは顔面の模様で♂♀を見分けることができます。
両眼の間に三角形の黄色い模様があるものが♂で,ないものが♀です。
この個体は♂ですね。[写真3]

数日後,また路上にクマバチがいました。[写真2]
今度は♀です。
急に冷え込んだせいか,動けないようです。

♂♀が揃ったので,雌雄の形態を比較してみました。
ちなみに普段見かけるクマバチは,正式にはキムネクマバチといいます。
日本にはクマバチ属が2亜種5種が知られているそうですが,その中で胸部背面部が黄色いのはキムネクマバチだけです(北海道大学図書刊行会『南西諸島産有剣ハチ・アリ類検索図説』(1999年))。

♂の顔面は,頭盾(とうじゅん),頭盾上区(とうじゅんじょうく)といわれる部分が黄色くなっています。[写真4]
♀の頭盾,頭盾上区は,まわりと同じ黒色です。[写真5]
♂と♀の顔面を見比べてみると,随分印象が違います。
別の種類のようです。

文一総合出版『日本産ハナバチ図鑑』(2014年)には,キムネクマバチについて,次のように書いてありました。

♀♂:体長18~25mm

この個体は,♂が23mm,♀が24mm。[写真6][写真7]
♂♀はほぼ同じ大きさです。

♀の体毛は胸部の背面と,側面の一部が黄色で,そのほかはほぼ一様に黒色。♂の体毛は♀とほぼ同じパターンを示すが,中胸盾板中央部には黒色毛が混じり,前脚の脛節・付節の外面の毛は黄味を帯び,触角柄節外面は黄色。♂の後脚腿節下面の,中央よりやや基部よりに歯状突起がある。

・♂の体毛は♀とほぼ同じパターンを示すが,中胸盾板中央部には黒色毛が混じり
[写真8]

・前脚の脛節・付節の外面の毛は黄味を帯び
[写真9]

・触角柄節外面は黄色
触角第1節を柄節(へいせつ),第2節を梗節(こうせつ),その先を鞭節(べんせつ)といいます。[写真10]
確かに♂の触角柄節(第1節)は黄色くなっていますね。
頭盾,頭盾上区と同じように黄色くなっているということに,意味があるようです。
節数を数えてみると,♂は13節,♀は12節でした。

・♂の後脚腿節下面の,中央よりやや基部よりに歯状突起がある
[写真11]

翅を比較してみました。[写真12]
♀の前翅後縁部の色が薄くなっています。
以前のクマバチ♀の写真(→2011年6月26日)では,こうした模様はないので,この個体だけの変異なのかもしれません。

腹部の節数を数えてみました。
[写真13]が♂,[写真14]が♀です。
スズメバチの腹部は,♂が7節,♀が6節からできています。
同じように,♂は7節かと思いましたが,♂も♀も6節のようです。