崖を覆う茂みの中に,オレンジ色の実がたくさんなっていました。[写真1]
毎日,横を通っていますが,この場所でこんな実を見るのは初めてです。
ここは,2年前に崖の落石予防の工事がおこなわれたところです。[写真12]
当時,周辺の低木は全て刈り取られていたので,この木はそれから2年間のあいだに芽吹いて茂みをつくり,実をつけたことになります。
生命力の強い木ですね。

崖をすこし登って、近づいてみました。
コジキイチゴです。

実に触ると,オレンジ色の部分がポロリと取れました。[写真3]
中は空洞です。[写真4]
実の部分はちょっと触っただけで落ちてしまうほど取れやすいですが、これは多分、鳥に食べてもらうためだと思います。
メジロが実の部分をくわえて、飛んでゆくのを見ました。[写真14]

すこし離れた場所にも別の株があって、こちらにはまだ白い花が咲いていました。[写真13]

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には、コジキイチゴについて次のように書いてありました。

本州中南部,四国,九州の山地の日当りの良い所にはえる落葉小低木。茎はかたく,直立して高さ60~120cmぐらい,葉柄とともに紅色で有柄の長さ3~5mmの腺毛を密布し,平たいかぎ状に曲ったとげをまばらにつける。葉は奇数羽状複葉で長くのびる花枝の上に互生し,小葉は5~7個。卵状楕円形または皮針形,鋭尖頭,基部は円形,不ぞろいな重きょ歯がある。葉質はうすくやわらかで,頂小薬はやや大形,長さ3。~6cmぐらい,花は枝の頂に集散花序を作って数個つき,がく筒の外面は小枝とともに有柄の腺毛を密生して紅色となり,がく裂片は5,三角状卵形,ふちと内面には白色の短毛がある。果実になる頃はそりかえる。花弁は5,へら形でがく裂片とほぼ同長。果実は長楕円形で直立し,長さ1cmぐらい,核果は極めて多数で,小形で無毛である。ヒメバライチゴとは柄に腺毛があること,果実の集まりが球でない点で区別できる。

・茎と葉柄には「紅色で有柄の長さ3~5mmの腺毛を密布し,平たいかぎ状に曲ったとげをまばらにつける」
→[写真10][写真9]

・葉は「奇数羽状複葉で長くのびる花枝の上に互生し,小葉は5~7個」
→[写真8]

・花は「枝の頂に集散花序を作って数個つ」く
→[写真13]

・がくは「裂片は5,三角状卵形,ふちと内面には白色の短毛がある。果実になる頃はそりかえる。」
→[写真2]

・果実は「長楕円形で直立し,長さ1cmぐらい,核果は極めて多数で,小形で無毛である」
→[写真2]