冬の間,葉を落としていたケヤキの木に,新緑が芽吹き,黄緑の葉が覆い始めています。[写真1]
若葉をつけた細い枝をよく見ると,葉と一緒に小さな花がたくさんついています。[写真2]
花びらのない,目立たない花です。
虫や鳥を惹きつけるような姿をしていないところを見ると,風媒花のようです。

ケヤキの花について,平凡社『改訂新版日本の野生植物2』(2016年)には,次のように書いてありました。

花は4月,新葉とともに開き,単性で雌雄同株。雄花は新枝の下部の葉腋に束生または単生し,4~6裂する花被と4~6個の雄蕊からなる。雌花は上部の葉腋に単生,またはまれに3個ほど束生し,雄蕊をまったく欠くか,または両性花となって小さい1~数個の雄蕊を備え,雌蕊は1個,花柱は2裂し,上面に乳頭状突起を密布し,柱頭となる。

・新葉とともに開き,単性で雌雄同株
花は「単性で雌雄同株」,つまり同一の木に,雄しべだけを持つ雄花と,雌しべだけを持つ雌花が咲きます。
新枝の上部に雌花が数個,下部に雄花が多数ついていました。
雌花には雄しべはまったくありませんでしたが,小さな雄しべを数個つけている両性花もありました。
新枝の最上部に雌花,その下に両性花,その下に雄花と3層に分かれた咲き方をしています。[写真3]

・雄花は新枝の下部の葉腋に束生または単生し,4~6裂する花被と4~6個の雄蕊からなる
[写真7]は花粉放出前の葯が閉じている雄花,[写真5]は葯が裂開し花粉を放出した後の雄花。
[写真6]は,雄花を縦に切った断面です。

・雌花は上部の葉腋に単生,またはまれに3個ほど束生し,雄蕊をまったく欠くか,または両性花となって小さい1~数個の雄蕊を備え
[写真13],[写真14]は,雄しべのない雌花。
[写真9],[写真10]は,雄しべを備えた両性花。
両性花の雄しべは,雄花の雄しべよりもやや小さいです。

・雌蕊は1個,花柱は2裂し,上面に乳頭状突起を密布し,柱頭となる。
[写真16]は,雌花を縦に切ったところ。
[写真12]は,両性花を縦に切ったところ。
柱頭についている黒い粒は,道路粉塵ではないかと思います。
道路際に咲いている花はきれいに見えても,接写すると,こうした黒い粒がついていることが多いです。