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マテバシイ

2018年5月26日

美術館の囲いからあふれ出すように,マテバシイが枝葉をひろげていました。
新緑と白い花が常緑の濃い緑を覆い,木全体がもこもことした感じになっています。[写真1]

実は,この木はシリブカガシだと,思っていました。
20年ほど前,落ちていたドングリを調べた時に,ややずんぐりた形から,マテバシイではなくシリブカガシだと思ったのです。
今回,シリブカガシとして調べていたところ,開花時期が違うことに気づきました。
シリブカガシの花期は9月~10月。
今の時期に花を咲かせるとすれば,同じオニガシ属のマテバシイです。

『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,マテバシイについて,次のように書いてありました。

 葉は細長く,倒卵形から倒披針形,長さ15センチほどで全縁である。裏面は淡緑色でやや銀色をおびる。若枝は淡緑色で縦に浅い溝がある。
 花は新葉が伸びた6月ごろ,葉腋から斜上する尾状花序につく。クリやシイ類と同じように,筍を茄でたときのような強いにおいがある。新枝の下部の花序は雄花序で,雌花序は上部につき,その先端部は雄花の集団となる。雄花序では苞腋に3~5花が集団となっている。6枚の花被片と12本の雄しべがあり,その中に白い毛におおわれ,蜜腺となった退化子房がある。雌花序では苞腋に1~3花がつく。6枚の花被片と12本の退化雄しべがあるが,開花時には退化雄しべは花被片に隠れている。雌しべは3心皮からなり,3本の花柱がある。柱頭は花柱の先の点状のくぼみである。この雌花の基本形態は,クリ属,クリガシ(シイ)属にも共通しており,クリ亜科としてまとめられる
 堅果は長楕円形で長さ1.5~2.5センチ,褐色で翌年の秋に熟す。それぞれの堅果が椀状の殻斗に包まれ,それが1~3個合着している。殻斗の表面は瓦重ね状に重なる鱗片でおおわれる。

・葉は細長く,倒卵形から倒披針形,長さ15センチほどで全縁である。裏面は淡緑色でやや銀色をおびる。
ドングリの木の葉は鋸歯があるものが多いですが,マテバシイの葉にはギザギザがありません。[写真4]

・若枝は淡緑色で縦に浅い溝がある。
若枝の断面を確認してみると,溝は5本ありました。[写真7]

・花は新葉が伸びた6月ごろ,葉腋から斜上する尾状花序につく。
コナラやクヌギなどコナラ属の雄花序は垂れ下がりますが,マテバシイの花序は葉腋から斜上します。[写真8]
コナラ属が風媒花であるのに対し,マテバシイは虫媒花であることと関係あるようです。

・クリやシイ類と同じように,筍を茄でたときのような強いにおいがある。
強い臭いがするのは虫を呼び寄せるためとされています。
虫媒花であるクリやシイ類が同じように強い臭いがするのはわかりますが,風媒花とされるコナラの花も同じような臭いがするのはどういうわけでしょうか。

・新枝の下部の花序は雄花序で,雌花序は上部につき,その先端部は雄花の集団となる。
花の数は圧倒的に雄花が多いですね。
雌花には蜜や臭いなどの虫を呼び寄せる仕組みがないように思えます。
雌花序の上部にも雄花が咲くのは,雄花に来た虫が雌花に花粉をつけてくれることを期待しているのではないでしょうか。

・雄花序では苞腋に3~5花が集団となっている。6枚の花被片と12本の雄しべがあり,その中に白い毛におおわれ,蜜腺となった退化子房がある。
満開の雄花序は,密集した雄花同志がくっ付きあって,何がどうなっているのよく分かりません。
開花し始めたばかりの雄花序を観察してみました。[写真10]
開花し始めた1個の雄花に接して2個の蕾があり,3個が一つの集団になっています。
花の集団の基部に苞が確認できます。
開花した雄花を上から見ると,6枚の花被片と12本の雄しべがあります。[写真11]
花の中央は白い毛で覆われています。
蜜腺となった退化子房」です。
[写真12]は雄花の断面。[写真13]は雄花序を縦に切った断面。
蜜腺からはかなり蜜が出ているのか,たくさんのミツバチが飛び回っていました。[写真14]

・雌花序では苞腋に1~3花がつく。6枚の花被片と12本の退化雄しべがあるが,開花時には退化雄しべは花被片に隠れている。雌しべは3心皮からなり,3本の花柱がある。柱頭は花柱の先の点状のくぼみである。
苞腋に1~3花がつく」となっていますが,どれが苞なのかよく分かりません。
総苞に紛れていますが,基部にそれらしきものが。[写真15]
ごつごつした総苞はドングリの殻斗になる部分です。
雌花は2mmほどの小さな花です。
肉眼で見ただけでは,花の構造はわかりません。
拡大すると,花被片から突き出した3本の花柱がわかります。[写真16]
[写真17]~[写真19]は,雌花の断面。
花被片の内側には,白い糸状のものが詰まっています。
これが退化した雄しべだと思います。

堅果は長楕円形で長さ1.5~2.5センチ,褐色で翌年の秋に熟す。それぞれの堅果が椀状の殻斗に包まれ,それが1~3個合着している。殻斗の表面は瓦重ね状に重なる鱗片でおおわれる。
マテバシイのドングリは1年半かけて成熟します。
[写真21]は,昨年枝についている未熟なドングリ。
昨年春に受精し1年経過しています。
膨らんだ総苞に埋もれているのは,花柱と花被片の名残です。
[写真22]は,それを縦に切った断面。
[写真23]は,横に切った断面です。
[写真24]は2年前の秋に,落ちていたドングリ。ドングリは全てが大きくなるわけではなく,シイナのままで終わるものも多いようです。

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