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ヒメジョオンとハルジオン

2018年6月26日

いつの間にかハルジオンに入れ替わって,ヒメジョオンの花が咲いてます。
どちらも路傍に咲く,白い小さなキクの花です。
両種はよく似ていて,春に咲いているハルジオンと,夏に咲いているヒメジョオンの花が別の種類だとは,気づく人はあまりいないと思います。

ハルジオンはまだ少しは咲いているかなと探したのですが,九条山,岡崎周辺ではほとんど見当たりません。
ようやくインクラインの近くで,小さなハルジオンの株を見つけました。
このハルジオンの個体と,ヒメジョオンを比較してみました。

長田武正著『原色野草観察検索図鑑』(1981年)には,ヒメジョオンについて次のように書いてあります。
北アメリカ原産の1~越年草。茎は高さ50~130cm,あらい毛がまばらに生え,中心部は白いずいに満たされる。根もとの葉は長柄があり,形も円い(図B)が,茎につく葉は狭くてほとんど無柄。頭花は数多く,径1.5cm,舌状花は白色,雌性でおしべはなく,冠毛もない。筒状花は黄色,両性で長い冠毛がある。花期は夏。

明治維新(1868)直前に渡来,当時は柳葉姫菊とよばれて珍重されたという。単為生殖をするので繁殖力が非常に強く,たちまち日本じゅうに広がり,1975年現在はブナ・ミズナラ帯からさらにその上まで侵入している。

ハルジオンについては,次のように書いてありました。

北アメリカ原産の多年草。茎は高さ30~80cmで,ヒメジョオンよりやや花期が早く,花は白色ときに淡紅色。

ハルジオンはハナアブなどで受粉,結実する。ヒメジョオンにくらペ広がり方がおそいが,多年生なので一度入ると消えない。渡来は大正末~昭和初期で東京から広がり出したものと思われる。

ヒメジョオンとの区別点については,次のようにまとめてありました。

ハルジオン ヒメジョオン
多年草 1年草
茎は中空で,葉とともに軟毛が多い。 茎は中空ではなく,毛はもっとまばら
根生葉は幅が狭く花時まで残る。 根生葉は円形に近く花時には枯れている。
茎上の葉は基部で茎を抱く。 茎上の葉は基部が狭く,茎を抱かない。
花序ははじめ茎ごとうなだれる。 花序は一部うなだれるが,茎ごとではない。
頭花は径2~2.5cm,舌状花は150~400個,冠毛があって白色~淡紅色。 頭花は径2cm,舌状花は100個内外,冠毛がなく白色。



ハルジオン……多年草
ヒメジョオン……1年草

ハルジオンは多年草ですが,ヒメジョオンは1年草(越年草)です。
多年草は,毎年開花して種子を作り,冬の間も枯れずに残り,翌年再び成長を始めます。
一方,1年草は,発芽,開花結実,枯死するまでの生涯が1年で完結します。
越年草とは,1年草のうち,冬をまたぐものをいいます。
ヒメジョオンは越年草で,秋に発芽しロゼットで越冬,翌年夏に開花結実します。
ハルジオンは,春に開花結実しいったん地上部は枯れますが,秋に発芽,ロゼットで越冬,翌年春に再び開花結実を繰り返します。
生物の進化という面からみると,1年草の方が,遺伝子変異の拡散速度が早く,環境変化への適応に優れているそうです。

ハルジオン……茎は中空で,葉とともに軟毛が多い。
ヒメジョオン……茎は中空ではなく,毛はもっとまばら

ハルジオンの茎の高さは30~80cm,ヒメジョオンは50~130cm。
全体的にヒメジョオンの方が背が高いです。

[写真8]は,ヒメジョオンの茎断面。
[写真9]は,ハルジオンの茎断面。
ヒメジョオンの茎は白いずいに満たされていますが,ハルジオンの茎には空洞があります。
両種の見分け方として,茎が中空かどうかは重要な目安ですが,手で茎を折るとつぶれてしまって,よくわからないことがあります。
ナイフなどでスパッと切るとよくわかると思います。

[写真10]は,ヒメジョオンの茎表面。
[写真11]は,ハルジオンの茎表面。
拡大してみると,ハルジオンの茎は毛むくじゃらですね。
実際に見ると,これほど毛むくじゃらには感じませんが。

ハルジオン……根生葉は幅が狭く花時まで残る。
ヒメジョオン……根生葉は円形に近く花時には枯れている。

[写真6]は,ヒメジョンの茎全体。根元の葉は枯れています。
[写真16]は,ヒメジョオンの根生葉。
[写真7]は,ハルジオンが咲いている様子。根元にタンポポのように根生葉が残っています。

ハルジオン……茎上の葉は基部で茎を抱く。
ヒメジョオン……茎上の葉は基部が狭く,茎を抱かない。
[写真12]は,ヒメジョンの葉基部。
[写真13]は,ハルジオンの葉基部。
[写真14]は,ハルジオンの茎上の葉。
[写真15]は,ヒメジョオンの茎上の葉。
[写真16]は,ヒメジョオンの根生葉。
[写真3]は,ヒメジョオンとハルジオンの茎を並べたもの。
葉の形も,両種を見分ける重要な目安になります。

ハルジオン……花序ははじめ茎ごとうなだれる。
ヒメジョオン……花序は一部うなだれるが,茎ごとではない。

[写真14]は,両種の蕾がうなだれた様子を比較したもの。
ハルジオンの方がうなだれ方がきついですね。
茎がU字に曲がっています。

ハルジオン……頭花は径2~2.5cm,舌状花は150~400個,冠毛があって白色~淡紅色。
ヒメジョオン……頭花は径2cm,舌状花は100個内外,冠毛がなく白色。

ハルジオンの方が頭花の大きさが少し大きく,花びらの幅が細いという違いがありますが,個体差もあるのでほとんど同じに見えます。
[写真15]は,ヒメジョオンの頭花にハルジオンの頭。を近づけて撮ったもの。
[写真16]は,頭花だけを並べて撮ったもの。
頭花の写真だけでは,どちらかを見分けるのは困難です。

[写真17]は,ヒメジョオンの頭花を縦に切った断面。
[写真18]は,ハルジオンの頭花を縦に切った断面。

[写真19]は,ヒメジョオンの筒状花。
[写真20]は,ハルジオンの筒状花。
両種とに冠毛があります。
この冠毛が,種についている綿毛になります。

[写真21]は,ヒメジョオンの舌状花。
[写真22]は,ハルジオンの舌状花。
ハルジオンの舌状花には冠毛がありますが,ヒメジョオンの舌状花には冠毛がありません。

典型的なキク科植物の花の特徴を,ツワブキをもとに解説しているページがありました。
ヒメジョオンの花にも当てはまるので引用します。

  1. 多数の小さい花が丸く密集して、1つの花のように見える。このような花序(花の集まり)を頭花と呼ぶ。頭花を構成する花(小花[floret]と呼ぶこともある)には、中心部の筒状花、周辺部の舌状花の2タイプがある
  2. 頭花の下には「総苞(そうほう)」と呼ばれるつぼのような部分があり、つぼみの時には頭花全体を保護している。総苞は、花序の軸(円盤状になっている)と花序につく細い葉(総苞片)が集まってできている。
  3. 萼の代わりに、「冠毛」と呼ばれる毛の集まりがある
  4. 子房[雌しベ=子房+花柱+柱頭]は、花びら・雄しべ・冠毛より下にある(下位子房)
  5. 5枚の花びらが、互いにつながって、子房の先に続く筒になっている(合弁花)
  6. 5つの葯(やく)[雄しべ=葯+花糸]も、互いにつながって筒になり、花柱を取り巻く
  7. 葯は花粉を筒の中に出す。花柱が伸びて、ところてんのように花粉を筒の先に押し出す。その後で、花柱はさらに伸びて先端が筒から顔を出す。花柱の先が2つに分かれて、内側の柱頭が露出し、受粉できるようになる。

ヒメジョオンの花をコップにさして机の上に置いていたところ,数日後には綿毛のついた種がたくさん落ちていました。
上から見ると,冠毛がきれいに放射状に伸びてます。[写真24]
受粉から種子ができるまで随分早いなと思ったら,ヒメジョオンは無融合生殖をおこなうようで,花が開く前から,胚や胚乳の発生が始まっているそうです。

両種とも元々は観賞用として移入されたものですが,逸出して雑草化し,今では「侵略的外来種ワースト100」に含まれる要注意外来生物になっています。
種として繁栄しすぎると,希少価値がなくなり,人間から疎まれるというのは,野生生物一般の傾向ですね。

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