マツの木の下でキノコの写真を撮っていたら,いつの間にか服に虫がついていました。
ウバタマムシです。[写真1]
ウバタマムシのウバは姥でしょうか。マツの樹皮に擬態した,凸凹した模様があります。
保育社「原色日本昆虫図鑑(上)・甲虫編」には,ウバタマムシについて次のように書いてありました。
『うばたまむし Chalcophora japonica Gory
林間や路傍の切倒された新しいマツに普通の種で,一般によくタマムシの♀と誤認されているが全く別の種で,幼虫は枯死したアカマツ・クロマツを喰害する。本種は小楯板を欠くが,稀に点状に現われることがありこれを ab.scutellata thery といい本州(高尾山)・九州(鹿児島)から記録されている。』
「一般によくタマムシの♀と誤認されているが」と書いてありますが,現在はどうでしょうか。
これを見てタマムシの雌だと思う人はどれだけいるでしょう。
タマムシ自体をどんな虫かしらない人が多いのではないでしょうか。
あまり見ることがなくなったいわれるタマムですが,ところが私の家の周りでは,子どもがよく捕まえてくるのです。[写真2]
一本のカエデの枯木があって,その木を見に行くと,同じところによくとまっているそうです。
タマムシの幼虫はエノキ・サクラ・カシ・カキなどの木の中で育ちます。
近くにサクラの枯れた木があるので,そこで発生しているのかもしれません。
タマムシについて,保育社「原色日本昆虫図鑑(上)・甲虫編」には次のように書いてあります。
『たまむし Ptosima chinensis Marseul
7・8月の候,美しい翅を陽光に輝かしながら好んでエノキの梢上を飛ぶ。幼虫はエノキ・サクラ・カシ・カキ等の材部を喰害し,一世代3~4年を要するという。』
はっとするような美しい青色をした小鳥が飛び立ちました。
カワセミ?
目で追うと,少し離れた枝に止まりました。
とりあえず写真を1枚撮り,もっと寄ろうと近づくと,飛んでいってしまいました。
写真はきれいには写っていませんでしたが,鳥名は見分けることができました。
オオルリの雄のようです。
オオルリは雄は名前のとおりルリ色をしていますが,雌は地味な褐色をしているそうです。
オオルリについて,保育社「原色日本鳥類図鑑」には次のように書いてありました。
『形態 ♂はるり色で美しい。嘴峰12~14mm.翼長88~98mm.尾長57~66mm.跗蹠15~17mm.♂は頭上光沢あるるり色で以下の背面,尾は藍色。顔,腮,喉,胸は黒。以下の下面は白く脇は黒色。♀は上面暗緑かっ色で下面は淡黄かっ色である。♂の幼鳥は♀に似るが腰と尾はるり色を帯び,風切羽の外弁もるり色である。
生態 日本には夏鳥として渡来繁殖し各地に普通。低山帯に営巣することが多いが,渡りの際には市街地の庭園,公園にもまれでない。高いこずえに止まってピッ,ピッ,ギチ,ギチ,ギチと美声でなく。冬期は中国大陸南部・マライ諸島などに渡る。』
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」には次のように書いてありました。(こちらの説明の方がわかりやすいですね)
『高い梢でさえずる。目のさめるようなルリ色の背をした鳥。主に東アジアの温帯で繁殖する。日本でも夏鳥として渡来し,北海道から九州までの丘陵,山地で繁殖する。渡りの時期には市街地でも観察される。
生活 主に谷沿いのよく茂った林に棲息し,枝先から谷間の上空に飛び出し,フライングキャッチで飛んでいる昆虫類を捕える。オスは目立った高い木の梢に姿を現して,大きな声でさえずる。巣のそばに人や外敵が近づいた非常時には,メスもさえずることがある。----』
『声 繁殖期には高い木の梢や枝先などにとまって,「ピィーヒィーリリ,ピピーヒィーリ,ジジッ」などと,よくとおる声でさえずる。--------
日本の三鳴鳥の一つである。』
『見分け方 オスの配色はコルリに似るが,オオルリではのどは黒く,体を立ててとまる。メスはキビタキノのメスなどに似るが,大きさはより大きく,背面は赤みがあり,のどと腹部ははっきりと白い。』
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キツリフネの花が咲いていました。
「キツリフネソウ」だと思っていましたが,図鑑を見ると「キツリフネ」でした。
黄色いツリフネソウという名前の付け方からして,日本ではツリフネソウの方がメインですが,世界的にはキツリフネの方がメジャーなようです。
ツリフネソウの分布は東アジアの狭い区域に限られていますが,キツリフネは北半球の温帯に広く分布しています。
キツリフネの学名「Impatiens moli-tabgere L.」のL.はリンネのことです。
「朝日百科 植物の世界」によると
『リンネ(C. von Linne,1707~78)により1753年に記載されたツリフネソウ属の最初の7種のうちの1種である。種小名は「触れるな」という意味で,触ると急にはじける果実の性質によっている。北半球の温帯に広く分布し,東アジア,シベリア,ヨーリッパ,北アメリカに産する。日本では,北海道から九州の山地や,林下の湿ったところにはえる。』
ちなみに,学名には記載者の正式な氏名を記さなければなりませんが,リンネに限ってはL.と略称で表記されるそうです。
属名「Impatiens」をローマ字読みしてみると「イムパチエンス」。
どこかで聞いたような名だとおもったら,以前我が家でもベランダのプランターに植えていたことがある,園芸植物の「インパチェエンス」です。
インパチェンスは正式な和名をアフリカホウセンカといい,ツリフネソウ属のなかまです。
属名「Impatiens」は,「耐えられない」という意味です。果実に触れると急にはじけることによります。
私もある日,インパチェンスの果実に触れるとはじけることを発見し,子供達に得意になって報告したことを覚えています。
キツリフネとツリフネソウは,花の色が違うだけでよく似ていますが,その他にも
『全体毛がない。葉は小さく,ツリフネソウにくらべ先が鈍く,きょ歯は数が少なくて低い。がく片の距は先が曲がるだけで,くるくる巻くことはない。』(保育社「原色野草観察検索図鑑」)
花のかたちは人目をひく奇妙な形をしています。
帆掛け舟をつるしたような形ということで「ツリフネ」の名があります。
がく片が3個,花弁が3個からなっています。
正面の目立つ唇弁状のものは花弁ですが,後ろに突き出ている距のある袋状のものはがく片です。
保育社「原色野草観察検索図鑑」には次のように書いてありました。
『花ががく片3,花弁3,おしべ5,めしべ1よりなり,下のがく片が距をもつことはツリフネソウと変わらない。おしべ5は花糸が短く,しかも,葯の部分で互いに合生,全体ひとかたまりとなり,めしべはその中にかくれている。果実はまだ緑色で水気あるうちに熟し,さわると果皮が5片に裂け,ぐるりと巻き込む力で種子をはじき跳ばす。』
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動物園南の疎水べりに,羽化したばかりのハグロトンボがいました。
胴体も翅も,うすい色です。
羽化してからどのくらい経っているのでしょうか。
正面からの写真を撮ろうと,カメラを顔に近づけると,ひらひらと飛び立ちました。
飛べるということは,かなり時間が経っているのかもしれません。
飛び立ったハグロトンボはすぐ近くの石垣にとまり,またじっとしています。
羽化した後の若い個体は,水域を離れて薄暗い林の中で生活するそうです。
この近くで,木がたくさん茂っているところといえば,道を隔てたとろこにある無隣庵庭園でしょうか。
トンボのなかまは,体の特徴で大きく3つのグループに分けられます。
・均翅亜目(イトトンボ亜目)
腹部が細く,前ばねと後ばねが同じ形をしています。複眼は左右に大きくはなれています。ふつう4枚のはねを閉じてとまります。
ハグロトンボはこの均翅亜目に属します。
・不均翅亜目(トンボ亜目)
腹部が太くて頑丈な体つきをしています。前ばねより後ばねのほうが幅が広く,早く飛ぶことができます。多くの種で左右の複眼が接しています。はねを開いてとまります。
・ムカシトンボ亜目
腹部が太くて,前ばねと後ばねは同じ形をしているという,均翅亜目と不均翅亜目をまぜたような姿をしています。複眼は左右に離れています。はねは,とまったときは半開きで,とまっているうちに閉じてきます。
[写真4]左は均翅亜目のハグロトンボ,右は不均翅亜目のオニヤンマ。(オニヤンマも羽化直後なのではねを閉じています)
[写真2]を見ると,あしにたくさん刺がはえています。これは獲物を捕らえるのに役立ちます。
トンボのあしは後ろにいくほど長くなっていて,枝先にとまったり,獲物を捕らえるのに適したかたちになっています。
学習研究社「原色ワイド図鑑 昆虫Ⅰ」には,ハグロトンボについて次のように書いてありました。
『6~10月(南日本では5月中旬~11月中旬),平地の小川に多い。からだは,おすでは金属緑色であるがめすでは黒褐色。水面をひらひらとぶのはすずしげで,夏の風物詩といえるが,いっぽう,小川のそばの木かげの草の葉などにとまってはねを開閉しているのは神秘的である。この姿から各地にホトケトンボやカミサマトンボなど方言名がある。めすは単独で“植物組織内産卵”をおこなう。』
「めすは単独で」とは,雄と交尾後,連結をといて雌が単独で産卵するという意味です。
「植物組織内産卵」とは,水草などの植物の茎の中に産卵することをいいます。
トンボの産卵のしかたにはいろいろな方法がありますが,主な方法としては「植物組織内産卵」と,飛びながら尾を水に打ちつけて産卵する「打水産卵」があります。
これらの産卵方法は,種によって決まっています。
写真追加:[写真5]2007年7月19日撮影
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インクライン近くの砂利道にオオミスジコウガイビルがいました。
なぞの地球外生物として,一部で都市伝説化している生き物です。
この個体は30~40cmですが,1mに達するものもいるそうです。
平凡社「世界大百科事典」にはコウガイビルについて,次のように書いてありました。
『渦虫(かちゅう)綱コウガイビル科Bipaliidaeに属する扁形動物の総称。頭が半円形で,くびが急に細くなっているようすが,昔の髪にさした笄(こうがい)に似ているところからこの名がある。またヒルという名がついているが,環形動物のヒルとは異なる。体は細長くて扁平。体長はふつう5~10cmであるが,長いものでは80cmにもなる。』
『頭葉部の全辺縁と頚部(けいぶ)の両側に無数の小単眼が並んでいる。口は腹面中央よりやや後方にあり,生殖孔は口と尾端との間に開いている。雌雄同体。森林の石の下や湿気の多い場所にすみ,梅雨のころに道や庭,台所などにも現れる。体から透明な粘液を出しながら移動するのではった道筋が光っている。とくに害を与えるものはない。』
口は当然,頭にあると思っていましたが,お腹にあるようです。
早川いくを著「へんないきもの」には,食事風景について次のように書いてありました。
『食物はミミズやナメクジである。じたばたと暴れるミミズに,別れないワとすがる女のように絡みつき,こんがらがったヒモのようになって相手を拘束すると,腹部にある口から咽頭部を露出させ,消化液で相手を溶かしてすすりあげてしまう。ちなみに口は肛門も兼用している。』
コウガイビルにはいくつかの種類がありますが,特別大きくなるものは外来種のオオミスジコウガイビルです。
平凡社「世界大百科事典」コウガイビルの項の最後に,
『これらのほかに最近,東京都内ではミスジコウガイビルに似ているが,体長が80cmもある種類がときどき出現している。』とあります。
これがオオミスジコウガイビルをさしているものと思われます。
オオミスジコウガイビルは中国南部原産の外来種で,1986年に皇居で見つかったのが日本での最初の記録だそうです。
その後東京を中心に拡がり,現在では日本各地に棲息しています。
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アジサイの花にきたヨツスジハナカミキリ。
ハナカミキリのなかまは,花の花粉や蜜を食べます。
シロスジカミキリやゴマダラカミキリといった,木や草を食べるカミキリムシは大顎が発達していますが,ハナカミキリ類の大顎は小さく,体もほっそりしています。
ヨツスジハナカミキりには名前のとおり,背中に4本の黄色い帯模様があります。
黒と黄色の縞模様はスズメバチやアシナガバチなどに擬態したものといわれています。
ヨツスジハナカミキリはハチに見間違えることはありませんが,同じカミキリムシのなかまのトラカミキリはスズメバチにそっくりな姿をしているそうです。
そのうえ,動きや飛び方まで似ていているとか。一度みてみたいものです。
擬態といえば,体の色を木の葉や樹皮に似せて体を隠すものを思いうかべますが,逆に危険なものや有毒なものに似せて目立たせる戦略をとるものもいるのですね。(こういった擬態をベイツ型擬態というそうです。)
「学研生物図鑑 昆虫Ⅱ」には,ヨツスジハナカミキリについて次のように書いてありました。
『成虫のからだは黒色で黄金色の微毛でおおわれており,上翅に4条の黄褐色帯がある。雄の後肢の脛節の先端半分は肥大する。上翅の斑紋や色彩は地域的に変化が見られる。成虫は6~8月にあらわれ,ノリウツギ・リョウブ・アカメガシワ・クリ・ミズキ・シシウド・アジサイなどの多くの花に集まることが知られている。』
「黄金色の微毛でおおわれており」というのは,実際に見たときには感じなかったのですが,[写真2]を見ると確かに首筋が黄金の毛におおわれています。
成虫は「多くの花に集まる」となっていますが,ネット上にある,花にきたヨツスジハナカミキリを写した写真は,大半がアジサイの花に来たものです。
とりわけアジサイの花が好きなのか,単にアジサイの花にいるところが人目につきやすのか,どちらでしょうか。
タグ: | ヨツスジハナカミキリ
動物園近くで見かけたカタツムリ。[写真1][写真2]
これもクチベニマイマイでしょうか?
[写真3]は九条山のクチベニマイマイ。
殻の模様が違います。
しかし,殻の大きさや形,殻の口が紅色をしている特徴は同じです。
カタツムリの殻にある線を色帯(しきたい)といいます。
保育社「原色日本陸産貝類図鑑」には,色帯について次のように書いてありました。
『マイマイ属の色帯は,基本的には4つの色帯がある。上周縁帯,周縁帯,底帯,臍帯で,上から1234と呼称する。そのうちの1,2,3がない時は,それぞれ0234,1034,1204という。色帯がすべてない型は,0000と記す。色帯でなく成長線にそって黄褐色班が現れるものを火炎型,それが顕著に区分けている場合をトラマイマイ模様という。色帯が1234あるものは完帯型で,その区画が明瞭なものをコガネマイマイ模様という。
-----------------
第1帯の消失するものを0234型(クチベニマイマイ模様)という。------ 』
[写真3]は0234型で,[写真1]は0000型です。
0234型をクチベニマイマイ模様ということは,この型がクチベニマイマイの標準的な模様らしいですが,
同じ種でも個体により変異するそうです。
同じく保育社「原色日本陸産貝類図鑑」の「クチベニマイマイ」の項には次のようにありました。
『色帯は0234型(山地に多い),0034型,0204型(ヒラマイマイ模様),0000型(無帯),0030型,0004型,(1~3)0型など多くの型がある。』
どうやら[写真1][写真2]は,0000型(無帯)のクチベニマイマイのようです。
家の周りでは,0234型以外のクチベニマイマイを見たことがありません。
0234型は「山地に多い」とあり,やはり我が家のあるところは山なんだと,あらためて思いました。
タグ: | クチベニマイマイ
子どもたちがニイニイゼミを捕まえてきました。
玄関のすぐ前の道路にとまっていたそうです。
ニイニイゼミは梅雨明けに鳴きはじめ,8月中旬ごろまで鳴いています。
日本全国各地に分布し,夏空がひろがると一斉に鳴き始め,夏をしらせる使者です。
私にとっては,子どもの頃の夏休みの記憶と深く結びついて,懐かしいセミです。
保育社「原色日本昆虫図鑑(下)」には次のように書いてありました。
『日本では梅雨あけのころから現れ,6月下旬から9月上旬にかけてみられるが,7月中旬~8月中旬が最盛期である。「チィー………」と連続した声で1日中鳴き,曇天や雨にもあまり左右されない。各地の主に平地や市街地に普通であるが,山地の樹林やかなり高標高の山頂などでもときに鳴き声がきける。』
私が子どもの時分を過ごした福岡県の田舎では,もっとも多いのがニイニイゼミで,次に多いのがアブラゼミ,そして滅多にいなくて,捕るとうれしかったのがクマゼミ(ワシワシと言ってました)でした。
このあたりは山のせいか,ニイニイゼミの声はあまり聞きません。
鳴き声をよくきくセミは,ミンミンゼミとヒグラシです。
九条山ではもともと少ないのかもしれませんが,ネットではいろいろなページでニイニイゼミが減ったということが書かれています。
ニイニイゼミの減少について,1994年の誠文堂新社「カラーアルバム 昆虫 アブラゼミ ニイニイゼミ」に次のように書いてありました。
『最近20年ほどの間にこのセミが大変少なくなってしまった所があります。東京はその代表的な地域の1つでしょう。
初めのうち,それは天敵のオナガやヒヨドリが都心部に進出してきたせいではないかと考えられたりしましたが,これらの鳥はかかわりがあるとしても二次的な役割を演ずるにすぎないことがわかってきました。鳥たちはセミがたくさん鳴いているときはあまり攻撃せず,少ししか鳴いていないとき熱心に"セミ狩り"をするからです。一方で,同じ東京でもミンミンゼミのように増えているセミもいるのです。
都会では舗装がゆきわたり,地下水脈が荒らされ,乾燥化が進んでいるので,幼虫期に地下生活を送るセミの場合,もしそういう環境を好むセミと耐えられないセミがあるとすれば,明暗がはっきりしてしまうのは当然ともいえます。』
タグ: | ニイニイゼミ
シイの切り株からマンネンタケが出ていました。[写真1]
まだ幼菌で,黄色い傘をしています。
これから成熟すると茶褐色となり,ニスを塗ったような光沢が出てきます。
1月ほど前に見たときは,[写真2]の状態でした。
子のう菌類かと思って調べたのですが分からず,傘が出てきてようやくマンネンタケであることが分かりました。
マンネンタケはサルノコシカケの一種で,食用にはなりませんが,装飾品,漢方薬として昔から珍重されてきました。
平凡社「世界大百科事典」には,つぎのように書いてありました。
『中国では霊芝(れいし)といい,古来の道教では瑞祥の象徴とした。《日本書紀》《続日本書紀》《日本後紀》などに記述がみられ,日本でも吉祥の象徴とされてきた。ヨーロッパ,アメリカ,アフリカ,アジアに広く分布し,日本では本州以南の広葉樹の根際や切株に発生する。
-----------------------
装飾品(置物),漢方薬として利用される。漢方では他の生薬と配合して,滋養強壮鎮静薬として不眠症,頭痛,消化器疾患,病後の回復,老人性慢性気管支炎,慢性関節炎などに応用されてきた。近年その含有多糖類の免疫増強作用が研究されている。』
「霊芝」でネット検索すると,たくさんの健康食品サイトが表示されます。
霊芝を毎日飲み続けることにより,免疫力がつき体質改善がはかれるというものらしいです。
そのなかには「幻のキノコ」などの宣伝文句が書いてあるものもありますが,マンネンタケはそれほど珍しいキノコではないと思います。
タグ: | マンネンタケ
薄暗い林のなかに,白いキノコが優雅に立っていました。
ドクツルタケです。
猛毒を持っており,欧米では「destroying angel(死の天使)」と呼ばれています。
中毒症状と毒成分について,「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」には次のように書いてありました。
『食べて10~20時間して,急に激しい腹痛,嘔吐,激しいコレラ様の下痢,肝臓,心臓,じん臓障害が起こる。1本以上食べると,病院で適当な処置を行わない限り,1~2日ないし3日以内に死亡する。毒成分はイオウを含む環状ペプチドで,アミノ酸7個からなるファロトキシン類と,8個からなるアマトキシン類からなる。前者はファロイジン,ピロイシン,後者はα-アマニチンなど多数の化合物が知られている。』
こういう毒物が野放し(?)にあるというのは,ある意味不思議な感じがします。
10年ほど前,有毒な外来生物としてセアカゴケグモが一世を風靡しましたが,それどころではないですよね。
タグ: | ドクツルタケ
ハチのように見えますが,スカシバという蛾のなかまです。
「スカシバ」は「透翅」で,翅が透明であることに由来します。
保育社「原色日本蛾類図鑑(上)」によると,
『外見上ハチに似ているばかりでなく,昼間活動性なので,ハチに間違えやすい。多くの種は,花に蜜を求めているとき,または幼虫の寄生植物付近で得られる。ほとんど全世界に分布し,日本では現在29種知られている。幼虫は樹木の幹中で生活し,成虫になるには2年かかるのを普通とする。』
上記の図鑑で名前を調べたのですが載っていませんでした。
ネットでさがしたところ「ムナブトヒメスカシバ」だとわかりました。
どういうわけか左右の前肢をばんざいをするように上げています。
ネット上の写真を見ても,みな同じように肢をあげているところを見ると,そうした習性があるようです。
ちょうどアリグモがアリの触角に似せるために,いつも前脚を上げているのに似ています。
でも,もともと触角をもたないアリグモが肢を持ち上げて触角に見せているのはわかりますが,触角をもつスカシバがさらに触角に似せることはしないような気がします。(毛まで生えていますし・・・)
どういう理由があるのでしょうか?
自分以外の何者かに外見や臭い,動きなどを似せて,生存上の利益を得る現象を擬態といいます。
平凡社「世界大百科事典」によると
『その機能によって隠蔽的擬態,標識的擬態,種内擬態などに区別される。
[隠蔽的擬態 mimesis] 保護色ともいい,外見を周囲の色や模様に似せて外敵から隠れるものをさす。
------
[標識的擬態 mimicry] わざと目だつことによって利益を得るもので,これはさらにベーツ型擬態,ミューラー型擬態,攻撃擬態の三つに分けられる。
------
[種内擬態 intraspecific mimicry] 隠蔽的擬態も標識的擬態も,自分とは別の種に対して効果をもつものであるが,自分と同じ種に対して効果を及ぼすものものをとくに種内擬態と呼んで区別する。
-------』
スカシバがハチに似ているのはベーツ型擬態です。
ベーツ型擬態について,平凡社「世界大百科事典」には次のように書いてありました。
『ベーツ型擬態は,本来まずくない動物がまずい味や毒をもつ別の動物(モデル)に外見だけを似せることによって外敵からの免れるもので,まねをしている動物は擬態者mimicと呼ばれる。ベーツ型擬態はとくに昆虫で多く見られ,カバマダラ(毒をもつ)に擬態するメスアカムラサキの雌,ジャコウアゲハ(毒をもつ)に擬態するオナガアゲハやアゲハモドキ,まずい汁を出すテントウムシに擬態して昼間動きまわる東南アジアのゴキブリのなかま,毒針をもつハチ類によく似たスカシバガやトラカミキリの仲間などがこれにあたる。ベーツ型擬態は19世紀イギリスの動物学者ベーツH.W.Bates(1821-92)が,南アメリカ産のドクチョウとこれによく似たシロチョウの標本をもとにして提唱した概念であるのでこう呼ばれる。昆虫の最大の敵である鳥類が,擬態している昆虫をまずい餌とまちがえて食べないことは,ベーツ以来単に空想の形で述べられてきたが,それが真実であることは1950年代に入って実験的に証明された。』
タグ: | スカシバ | ムナブトヒメスカシバ
ミョウガの葉の上にゴマダラカミキリがいました。[写真1][写真2]
たまたま居ただけで,ミョウガの葉を食べているわけでありません。
ゴマダラカミキリの成虫はヤナギ,イチジク,ミカンなどの木の樹皮や葉をかじって食べます。
幼虫はこれらの木の幹の中で材を食べて育ち,羽化して外へ出た後もこれらの木の樹皮をかじります。
果樹栽培をしている人にとっては,ゴマダラカミキリは大悪人のようです。
保育社「樹木病害虫図鑑」には,ゴマダラカミキリの食害について次のように書いてありました。
『柑橘類の害虫として古くから知られ,幼虫が樹幹基部の材部に侵入し,内部を食い荒らし,食入孔より木屑をつぎつぎに外部へ排出する。蛹化がちかずくと下方の地際に移動し,樹幹の形成層を食害するので被害は急増し,樹勢がいちじるしく衰える。そのため葉は黄変し始め,落葉が増加し枯死することもある。また樹幹内部を食害されるため,幹は中空となり,強い風が吹くと折れやすい。
--------
本種の成虫による被害も幼虫に劣らず大きく,とくにヤナギ類ではしばしば大被害をこうむる。成虫が葉や細枝を食害するほか,枝の樹皮を環状に食害するので,その部分より先の枝は枯死する。』
子どもの頃,近所にあるイチジクの木にゴマダラカミキリがいました。
夏休みの朝,その木を見に行くのが日課でした。
行くと必ずゴマダラカミキリがいるのです。(そんなはずはないのですが,記憶としては行くと必ずいました。)
ある日,捕まえたカミキリを家に持ち帰り眺めていると,いつものゴマダラカミキリとすこし違う感じがします。
同じように黒い翅に斑点がありますが,どこか変です。
それに気づいた時,どういうわけが気持ち悪い感じがしたのを覚えています。
今から考えると,あれはキボシカミキリだったのではないかと思います。[写真3]
一匹のゴマダラカミキリに食害されるだけで枯れる木もあるそうです。
このイチジクの木もいつの間にかなくなっていました。
2007/8/2 追記:
阿達直樹著「昆虫の雑学事典」に,ゴマダラカミキリがアメリカで猛威をふるっているという記事が載っていました。
『遠く離れたアメリカで,このゴマダラカミキリは大変な問題になっています。
ニューヨークのセントラルパークで繁殖したゴマダラカミキリが発見された1996年以来,4000本もの木を枯らしてしまいました。
広いアメリカならではの言葉に"coast to coast"というのがありますが,まさにこの言葉があてはまるようにアジアから梱包材とともに移入して10年間で,ニューヨークからカリフォルニアまで,すなわち西海岸まで14州にも及んで被害を与えています。』
タグ: | ゴマダラカミキリ
道にアオサギの羽根が落ちていました。
長さが42cmある大きな初列風切羽根です。[写真2 左]
同じ日に別の場所で,これもアオサギの羽根を拾いました。
長さ28cm。次列風切羽根のようです。[写真2 右]
アオサギは今,換羽の時期なのでしょうか。
すべての鳥類は少なくとも年に1回は全身の羽毛が生え変わり,その時期としては繁殖期の後が多いそうです。
そういえばこの頃,羽色の変なアオサギを見かけます。これは換羽中の個体なのかもしれません。[写真4](幼鳥かも(^_^.))
立派な羽根なので,羽根ペンを作ってみました。[写真1]
といっても,カッターナイフで縦に切り込みをいれ,ペン先のかたちに削るだけなのですが。
ペンpenの語源はラテン語のpenna(翼,羽毛)で,もともとは羽根ペンをさすようです。
平凡社「世界大百科事典」には次のように書いてありました。
『語源はラテン語のpenna(翼,羽毛)で,もとは羽毛の軸の先にインキをつけて書くものを指した。羽根ペン,鷲ペンquillともいわれ,5世紀ころから19世紀まで使われていた。』
『羽根ペンの羽根は大型の鳥の翼からとり,北ヨーロッパのガチョウ,ガンを最良とし,ハクチョウ,シチメンチョう,ペリカンなどが利用された。細字用にはカラスの羽根も使われた。一般には羽枝を切り落として羽軸だけにし,小型ペンナイフで先をとがらせて用いたが,羽根を節約するため短く分割し,ホールダーにつけるくふうも19世紀には行われた。』
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動物園南の疎水岸に,釣り上げられたばかりのニゴイが放り出されていました。
まわりに釣り人は見当たりません。
ニゴイは「似鯉」で,コイに似ていることからきています。
北海道を除く日本全土に分布していて,各地でいろいろな呼び方がされています。
滋賀県,京都府では「マジカ」と呼ばれているそうです。(魚釣りをしないので,この呼び名を実際に聞いたことはありません。)
コイとのおもな相違点は,平凡社「世界大百科事典」によると
『体が細長いこと,口ひげが2本(コイは4本)なこと,背びれの付け根が短いこと,口が下を向き上あごが下あごを覆う(コイでは両あごがほぼ同長)こと,幼期には体側に黒色の斑点が1縦列に並ぶことなどである。』
小骨が多いものの食用になるそうです。
『大型魚はさしみにするのが良いが,あしが早いので注意のこと。冬季には,塩焼きもうまい。小骨が多く,小型魚を夏に食べるのはやめたほうがよい。なれずしは古くから著名であったが,最近はあまり用いられない。』(保育社「原色日本淡水魚類図鑑」)
『小骨が多いが肉質はよい。あらい,天ぷら,唐揚げなどにする』(「山渓カラー名鑑 日本の淡水魚」)
日本産のニゴイは長いあいだ,日本固有種であるHemibarbus barbus1種とされてきましたが,近年コウライニゴイHemibarbus labeoも分布していることが分かっています。
「山渓カラー名鑑 日本の淡水魚」には次のように書いてありました。
『日本産のニゴイは従来Hemibarbus barbusの1種とされてきた。---。しかし,竹下・木村(1990),竹下・大嶋・木村(1991)は,ニゴイを下唇皮弁が発達したlabeo型と,未発達なbarbus型の2種に分け,前者がコウライニゴイに相当すると述べている。亜種以上の分化を遂げていると考えられる。』
要するに下唇が薄いものがニゴイ,厚いものはコウライニゴイということらしいです。
[写真2]は顔の拡大写真ですが,はたしてこれはどちらなのでしょうか。
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歩いていると,飛び立ったハンミョウが草むらに飛び込みました。
そっとカメラを向けると,草の葉陰で安心しているのかじっとしています。
いつもはなかなか近づけないのですが,今日はかなり近づいて撮ることができました。
ハンミョウはいつもは土の露出した地面を飛び回っているので,葉っぱの上にいるこの写真はすこし妙な感じがしますね。
「人が近づくと前へ前へと飛ぶ習性があり,ミチオシエ(道教え)とも呼ばれる。」と図鑑などには書いてあります。
私は訳の分からない「ハンミョウ」という名前より,「ミチオシエ」という名前の方が好きなのですが,実際に「ミチオシエ」と呼ばれているのを聞いたことがありません。
今でもこの名前は残っているのでしょうか。
習性としては確かに人の前へ前へ飛び,ジョギングしていると踏みつけそうになります。
ハンミョウには毒があるとか漢方薬になるとかいわれますが,そのハンミョウはツチハンミョウのことで,ハンミョウには毒はなく,したがって薬にもなりません。
昔は美しい甲虫類はみな「はむみょう」と呼んでいたようです。
「新装版山渓フィールドブックス6 甲虫」によると
『江戸時代には美しい甲虫はみな「はむみょう」であったらしく,当時からの薬屋に秘蔵されている「はむみょう」を見せてもらったら,ミドリゲンセイのほかにハンミョウとオオサルハムシが多数あった。全部中国から輸入したものらしく,どちらも日本型ではなく大陸型であった。当時はこんなものも霊験あらたかな妙薬とされていたのである。』
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