見なれないキノコがはえていました。
ヒトヨタケのなかまだと思うのですが。
傘の周縁部から溶けはじめ,破れた傘のようになっています。
ヒトヨタケの仲間は,名前のとおり一晩のうちに傘がとけてしまう短命なキノコです。
「山渓カラー名鑑 日本のキノコ」には次のように書いてありました。
『胞子の成熟にともなって,傘の周縁部から中心へと,ひだが液化する。胞子紋は黒色,黒褐色。子実体は夜間成長し,胞子を放出する。湿度の高くなる夜に適応した現象といえる。』
傘のうえに鱗片がのっているようすはマルミノヒトヨタケに似ているのですが,はっきりとしません。
マルミノヒトヨタケは積みわらや畳から発生するので,発生状況が違います。
このキノコは,イノシシが掘り返した穴を埋め戻した土から発生していました。
土のなかに,発生源になる何かが混じっているのだと思います。
ヒトヨタケのなかまの多くは腐生菌で,生物遺体や老廃物などの有機体から栄養をとって生きています。
マグソヒトヨタケやウシグソヒトヨタケといった名前からわかるように,動物の糞から発生するものもあり,あまりクリーンなイメージがありません。
食用になるササクレヒトヨタケにしても,生えていると逆に,どうして生えたのだろうと疑ってしまいます。
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動物園南の疎水べりにカタツムリが「落ちて」いました。
夏眠中の個体らしく,殻に白い膜を張っています。
九条山の家のまわりでは見ない種類なので,名前を調べようと図鑑をめくりましたが,お手上げです。
どれも同じように見える上に,地域による個体差が大きくて,図鑑に載っている写真があまり参考になりません。
カタツムリは地域によって生息する種類が違うので,図鑑を1ページずつめくって総当りで調べるよりも,その地域に生息する種類をまず調べたほうが早いようです。
ネットで調べると,関西に生息するカタツムリの代表種はクチベニマイマイとナミマイマイだそうです。
クチベニマイマイは家の周りによくいるので馴染みぶかい種類です。
ナミマイマイは見たことがなかったので図鑑で調べると,どうやらこのカタツムリがナミマイマイのようです。
いろいろと調べましたが,何のことはない,関西では最も普通の種類でした。
(ナミマイマイのナミとは並の意味でしょうか?)
保育社「原色日本陸産貝類図鑑」には,ナミマイマイについて次のように書いてありました。
『殻高16.5~25mm,殻径32~40mm,5 1/2~6 1/4層。殻皮は鮮黄色の火炎彩で虎斑がある。色帯はヒラマイマイ模様で,1234型,全部消失するもの,あるいは不明瞭となるものなど変異にとんでいる。螺管は次第に太くなる。殻口は下降し,斜位で半月形となる。臍孔は広く浅い。軟体部は淡褐~淡黒色で,背部は太い黒縦条がある。ときにはまったく背帯のない個体もある。
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原生林や神社の落葉の堆積するところに生息する。近畿地方に普通に分布する。分布の東限は三重県,西限は兵庫県,北限は福井県,南限は和歌山県。』
「近畿地方に普通に分布する」と書いてありますが,「京都府レッドデータブック」には要注目種として上がっています。
選定理由が「基産地(京都)」となっているので,個体数が減少しているからというわけではないようです。
「京都府レッドデータブック」の概要には,次のように書いてありました。
『京都を代表する大型のマイマイで、原名亜種で山地型のニシキマイマイ、平地型(亜種)のナミマイマイとも、「京都」が基準産地とされている。大型(殻径40~50mm程度)で、地色が濃色で色帯の発達する傾向のある山地型は、滋賀県西部から京都府の京都市・乙訓地域以北を経て兵庫県にかけて分布する狭義のニシキマイマイ(螺塔が低く特に大型、地色が赤褐色と黄褐色の2型がある)のほか、滋賀県東北部から北陸にかけて分布するコガネマイマイ(オカノマイマイ) E. sandai okanoi(螺塔が低く、地色が黄褐色の型のみ)、兵庫県西部から中国地方にかけて分布するダイセンニシキマイマイE. sandai daisenica(螺塔が高く、地色が赤褐色の型)に区別される。一方、小型(殻径32~42mm程度)で、淡色(ときに赤褐色~黒褐色の暗色の型も出現する)、色帯が発達しない(0204型が多いが1234型も出現する)傾向の平地型は、京都府全域の平野部に生息するものを含め、概してナミマイマイと称されている。このようにニシキマイマイの亜種の区分には地理的分布に基づいた変異と、山地~平地の環境勾配による生態的変異とが混在しており、今後の分類的解明が待たれるところである。なお、若狭湾冠島の集団は、これまでカンムリマイマイE. kanmuriensisとして独立種または亜種として扱う見解もあったが、最新の生化学的分析ではニシキマイマイの地域集団に含まれるものであることが示されている。』
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スズバチがネジリバナの蜜を吸っていました。
スズバチは泥で徳利型の巣をつくるトックリバチの仲間です。
トックリバチの仲間には,ミカドトックリバチ,キボシトックリバチ,キアシトックリバチ,サムライトックリバチなどがいますが,スズバチはその中で一番大きな体をしています。
黒い体に黄色の縞。細い腹柄。体つき,顔つきが実にシャープです。
スズバチの名は,鈴のような形の巣を作るところからきています。
スズバチとキボシトックリバチは平らな石の表面などに数個まとめて巣を作り,他のトックリハチは1個ずつつくります。
トックリバチが巣を作るのは子育てのためで,巣の中に卵を産み,孵化した幼虫の餌にするためにアオムシを狩って巣の中に閉じ込めます。
ですから私はトックリバチは肉食だとばかり思っていましたが,成虫は蜜を吸うようです。
スズメバチも肉食のようですが,成虫の栄養源は蜜や樹液などの炭水化物だそうです。
そういえばスズメも,雛は親のあたえる虫を食べて育ちますが,成鳥になると穀物を食べるようになります。
人間も大人になったらベジタリアンになるのがいいのかもしれません。
タグ: | スズバチ
子どもがつかまえてきたトゲナナフシです。
小学館の図鑑「ネオ」にはトゲナナフシは載っていなくて,私は単純にひげの短いものがナナフシ,長いのがエダナナフシと思い込んでいました。
「学研生物図鑑 昆虫Ⅲ」には,ナナフシについて次のように書いてありました。
『からだは緑色で触角は長くない。雌は頭部に1対のとげがある。ナラの木の林に多く,その葉を食べて生活する。
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本種に似て触角が長く腹部に達し,雌の頭部にとげのないのはエダナナフシ』
ナナフシの雌にはトゲがあると書いてありますが,それも「頭部に1対のとげ」でしかなく,体中にたくさんトゲをもつのはどうやらトゲナナフシのようです。
「学研生物図鑑 昆虫Ⅲ」には,トゲナナフシについて次のように書いてあります。
『光沢のない黒褐色で背面には小さな棘が散布する。前胸の前部には1対の長い棘がある。秋に成虫があらわれ,雑多な植物につくが高い木には登らない。体長:60mm内外。分布:本州・九州。本種に似て中胸の前部に2本の長い棘のあるのは,トゲナナフシモドキ N.ligens Brunner von Wattenwyl であるが少ない。』
トゲナナフシがネオに載っていなかったのは,分布が関西以西であるためかもしれません。
関西では普通種です。
ただ気になるのは,体の色は「光沢のない黒褐色」となっていますが,この個体は緑色を帯びていることです。
また「前胸の前部には1対の長い棘がある」となっていますが,これもよく確認できません。
実物は既に放してしまっているので写真で捜すしかないのですが,それらしきものが見当たりません。
ナナフシ類の卵は植物の種子によく似ていて,種類ごとに色や形が異なり,種を判定するのによい手がかりになるそうです。
保育社「原色日本昆虫図鑑(下)」には,ナナフシ目について次のように書いてありました。
『樹上性で植物の葉を食べ,ときには樹を丸坊主にする。夜行性で,卵は1個ずつバラバラに産み落とす。1♀は100~1,300卵をうむ。卵は樽型で表面の複雑な彫刻や斑紋で植物の種子に酷似し,分類上よい決め手となる。不完全変態。♂がみられず,♀だけで単為生殖する種が多い。アンテナや脚が失われても再生能力がある。』
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口吻の長い独特の風貌をしたヤマトシリアゲ(雌)。[写真1][写真2]
この細長い口はどう見ても、何かを吸いとるためにのものですね。
昆虫の死体などの体液を吸うそうです。
シリアゲムシは「尻上げ虫」で、お尻を上げていることに由来します。
雄はサソリのようにお尻を巻き上げています[写真3]が、雌は少し持ち上げている程度です。
[写真4]は初夏の頃のヤマトシリアゲ(雄)。[2004年6月5日撮]
黒い体色をしています。
初夏にあらわれる黒い体をしたものをヤマトシリアゲ,晩夏にあらわれる体がすこし小形で赤褐色のものをベッコウシリアゲと別種に分類されていたこともありましたが,現在は同じ種であることがわかっています。
シリアゲムシ目について,保育社「原色日本昆虫図鑑(下)」には次のように書いてありました。
『完全変態群の中でもっとも早く(二畳j期)地球上に出現し,現生のものも原始的性質を多く保持している。中型で細長く,よわよわしい体をもつ。頭は下の方にクチバシ状にのび,その先にそしゃく型口器をもつ。
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翅は膜質で前後はほぼ同形,同様な脈相をもつ。静止のときは背上にほぼ水平にたたむ。
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♂交尾器は大形で複雑な構造をもち,シリアゲムシ科ではサソリのように背上に曲げる(scorpion-fly)。特化した産卵器はない。
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成虫は小昆虫や傷ついた虫,その屍体を食べ,花に来ることもある。やわらかい植物体を食べることもある。』
タグ: | ヤマトシリアゲ
南禅寺水路閣近く,土手から突き出た木にとまっていたイトトンボ。
「アオイトトンボ」,「オオアオイトトンボ」かどちらでしょうか。
アオイトトンボは「木立のない開けた止水に多」く,オオアオイトトンボは「周囲に木立のある池沼に発生」するので,見つけた場所からいえばオオアオイトトンボのようなのですが。
写真を拡大して胸の金緑色部分を確認してみました。[写真4]
あまり鮮明な写真ではないですが,[写真4]丸印の部分を見ると,金緑色部分が胸部側面を分かつ線に届いています。
これが届いているのが「オオアオイトトンボ」,届いていないのが「アオイトトンボ」だということです。
生息場所からしても,「オオアオイトトンボ」でしょうか。
「学研生物図鑑 昆虫Ⅲ」には,オオアオイトトンボについて次のように書いてありました。
『前後翅の四角室はほぼ同形,頭の後面は黒緑色。
アオイトトンボに似るがやや大形,未熟なものは肩縫線(けんぽうせん)の上下にわずかに黄色部があり,胸側の金緑斑は上端で後方にのび第2側縫線に達する。
雄の下付器は短くて上付器の内歯にとどかず,細くてくの字形に曲がり先は外を向く。
成熟しても白粉でおおわれない。
雌の産卵器は発達し,第8,9腹節は太くふくらんで,かたい木本植物の組織内に産卵できる。
周囲に木立のある池沼に発生し,羽化後かなり水域をはなれ,木かげで見られる。
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分布:北海道・本州・四国・九州・天草・壱岐。』
ちなみに,アオイトトンボについて次のように書いてありました。
『雌と未熟雄では,翅胸前面中央の背隆線(はいりょうせん)や肩縫線(けんぽうせん)が細く黄色。
雄は成熟すると金属緑色以外の部分が黒くなり,さらに白粉でおおわれる。
胸側の金属緑斑の上端は後方にのびるが第2側縫線にとどかないことが多い。
雄の下付器は長くて上付器の内歯に達し,棒状で先端平たくスプーン状だが内方に曲がることはない。
雌の産卵器末端はほぼ尾端で終わる。
平地の池沼から山地の湿原まで生息地は幅広いが,木立のない開けた止水に多い。
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分布:北海道各地から本州北半ではふつう。本州南半・四国・九州と南ほどまれとなり,からだは大形になる。』
動物園の塀にくっついていたクモ。
名前を調べると,珍しいクモでした。
ヒトエグモといいます。
すべてのクモの中で最も扁平なクモだそうで,上方から写した[写真2]を見ると,押しつぶされたような形をしているのがよくわかります。
「ヒトエ」とは多分「一重」でしょうね。
新海栄一著「ネイチャーガイド 日本のクモ」には,ヒトエグモについて次のように書いてありました。
『分布:本州(静岡県,京都府,奈良県,大阪府)
すべてのクモの中で最も扁平な体のクモ。農家,旧家,古い寺院などから採取される。昼間は壁のすき間,柱の割れ目,床のすき間等に潜んでいるが,夜間隠れ場所から出て壁や畳を歩き回って小型の昆虫やクモ等を捕らえる。分布は2府2県に限られているが,他県でも生息している可能性があり,今後各地で注意が必要である。』
ヒトエグモは京都府デッドデータブックでは絶滅危惧種に指定されています。
京都府デッドデータブックには次のように記されています。
『選定理由: 採集例が少なく、京都市が主要な分布地の一つであるため。
形態: 体長7~8mm。身体は扁平で,背面から押しつぶしたように見える。
分布: 日本と韓国に分布する。日本では京都府(京都市),大阪府(大阪市、堺市、河内長野市、松原市、豊能町),奈良県で採取または確認されている。採取例は少ない。沖縄県でも採取記録があるが,採取者・採取地とも不明で,おそらくは誤報と思われる。京都市では,東山区,左京区,北区で採取されている。
生態的特性: 徘徊性。寺院や旧家の屋内で採集されることが多いが,新しい家では見られない。庭や人家付近の墓地などにも見られる。韓国では,積み重ねられた瓦の間などに生息しているという。生活史は不明である。
特記事項: 日本蜘蛛学会は本種を環境省の絶滅危惧種IAとしてRDBに登載するように提案したが,屋内性の動物はその対象にならないとして,登載されなかった。しかし,屋内にだけ生息するわけではなく,採集例が極めて稀であることことから,京都府の絶滅危惧種とした。』
主に屋内に生息するようですが,今回の発見場所は屋外でした。
動物園北側の塀にくっついていました。
所在地は京都市左京区になります。
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ジュズダマの花を写していたら,葉っぱの陰にクロコノマチョウの幼虫がいました。[写真1]
頭を下に中脈に沿って体をのばし,じっとしています。
明るい黄緑色の体色は葉っぱの上では割と目立ちますが,茎にいるとどこにいるのか分からなくなります。[写真3]
カメラのファインダーから目をはずしたとたんに,見失ってしまいました。
地面に落ちたのかと辺りを探したのですが,よく見ると茎にくっついたままでした。
クロコノマチョウはもともと南方系のチョウのようです。
学習研究社「日本産蝶類標準図鑑」(2006年)によると,クロコノマチョウの分布に関して次のように書いてありました。
『屋久島,種子島,九州中南部,四国南半ではやや多く,平地より1000m程度の山地帯まで見られる。それより寒地に向かうにしたがって一般に次第に個体数が少なく,本州における分布の東北限は神奈川県,千葉県付近。越冬後の成虫は,千葉県,山梨県,長野県,静岡県,愛知県,岐阜県,三重県,島根県,岡山県および四国,九州で確認されている。東北地方では山形県で記録があるが,これは明らかに南方地域からの迷チョウである。以北の地域ではまったく採集例がない。』
[写真5]は同書にあった分布図です。
これを見ると,京都市はぎりぎり分布域に入っていますが,京都府でも京都市より北の地域には生息しないようです。
同書には生態について,次のように書いてありました。
『成虫越冬。越年したチョウは4~5月にあらわれて産卵,第1化(夏型)は6~7月より出現,第2化(秋型)は9~10月に羽化し,越冬にはいる。以上は分布の北限に近い地域や山地帯での発生過程で,暖地(たとえば九州の平地から低山地帯)ではさらに発生回数を増し,夏型は2回にわたって出現する。すなわち第2化は8月中・下旬より第2回目の夏型として出現,第3化が初めて秋型となり10~11月に羽化する。日中は林間・林縁の薄暗い場所に静止しており驚かさなければ飛び立たないが,夕暮れには活発に飛翔し,家屋内などに飛び込むものを見ることがある。草原には決してこのチョウはいない。森や木立で,林内にはほとんど日光がとおらず下草の生え方がまばらか,あるいは林縁,疎林で食草のあるところが生息地となっている。越冬は下草がほとんど生えず,落ち葉が地上に堆積しているような場所で行う。飛び立ったチョウはあまり遠くには逃げず,間もなく地上に静止する。秋季のチョウは日光の直射をきらい日光の直射する場所には決して止まらないが,越冬早春にあらわれるものは日光の直射する場所にも止まることがある。』
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風もないのにクモの巣が激しく揺れていました。[写真1]
ナガコガネグモです。
ナガコガネグモは危険を感じると網を揺すって威嚇します。
何に危険を感じたのか,ずっと網を揺すり続けていました。
[写真2]は5年前に写したものです。(2002年9月19日撮)
この時は逆に,網を揺すらせようと何度もつついたのですが,全然動きもしませんでした。
新海栄一著「ネイチャーガイド 日本のクモ」には,ナガコガネグモについて次のように書いてありました。
『平地~山地まで広く生息する。山地では少ない。水田とその周辺,河原,草原,樹林地の周辺,林道などの草原,低木間に垂直の正常円網を張る。網の中央部には縦に直線状のかくれ帯を付け,クモはその中心に止まる。危険を感じると網を激しく揺すり威嚇する。幼体のかくれ帯はジグザグの渦巻状(コガネグモ類全種共通)である。』
[写真3]は幼体のかくれ帯。(2006年8月3日撮)
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