満開になったサクラの花を,スズメが次々にちぎり落としています。
嘴で萼筒部分を切断して,蜜を食べているのです。
[写真1]~[写真3]は,スズメが萼筒部分を切断している様子。
[写真4]は,樹下に散らばっているサクラの花。
自然に散ったサクラの花は花弁がバラバになっていますが,スズメが切り落としたものは5枚の花弁が揃ったまま落ちています。
[写真5]は,花の切断口。
蜜のある萼筒部分が切断されています。
[写真6]は,花の構造を見るためにソメイヨシノを縦に切ったもの。
萼筒部分には蜜が詰まっていて,舐めてみると甘い味がします。
スズメがサクラの花を食べる行動は昔からあったようですが,人の目をひくほど大量に花を落下させるようになったのは,近年のことのようです。
唐沢孝一著「スズメのお宿は街のなか」(1989年)に,1987年~1988年に調査した内容が詳しく載っています。
…ここ3,4年で急増していることに気づく。過去5年間の観察例は150例(92パーセント)となる。古い昔の観察例は少ないのは,記憶が薄れることもあるし,実際にこの行動が少なかったことと必ずしも一致はしないだろう。しかし,結構目立つ行動なので,もし数十年前から増加しておれば,とっくに話題になっていたはずである。やはり,急増したのは最近のことといえよう。
同書には,江戸時代に既にスズメがサクラの花を食べていた事例も載っています。
そして,山桜と小禽図シリーズの中に,なんと1羽のスズメが山桜の花を食べている掛軸を発見したのである。満開の桜花の梢で花をつつき,雌蕊の部分の蜜をなめているのである。この図では,花の正面から嘴を差し込み,花弁はばらばらになって落下している。最近話題になっているような,萼筒をちぎりとって蜜をなめ,5弁が揃ったまま落下しているものではないが,桜花を食べているのは明らかである。解説文によれば,江戸時代中期の三熊花顛(みくまかてん)(1730~94)の筆によるもので,彼は長崎派系の写生画を学び,中年以降は対象を桜に限定し諸国を旅しては描き続け,桜画の名手として活躍したという。
石垣の間から,ヒメスミレの花が顔を出していました。
ヒメスミレは全体にスミレを小さくした様な花です。
スミレに似て小形であることから姫スミレの名がついています。
今まで単に小さなスミレと思ったいたものも,ヒメスミレの名を知ってから見ると,スミレとは違う種類なのだということがよくわかります。
スミレとの違いは
・スミレより小形。花の直径は,スミレが2cm前後なのに対し,ヒメスミレは1~1.5cm。ヒメスミレの花を見てからスミレの花を見ると,スミレの花がずいぶん大ぶりに見えます。
・スミレの葉がへら形なのに対し,ヒメスミレは三角状披針形。スミレの葉の方が細長い形をしています。
・スミレの葉柄に翼があるのに対し,ヒメスミレの葉柄には翼がほとんどありません。
・スミレの葉の裏面は白っぽい緑色なのに対し,ヒメスミレの葉裏は紫色をおびるものが多い。(スミレにも紫色を帯びるものがあるそうです)
・スミレの根が褐色なのに対し,ヒメスミレの根は白色。
「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には,ヒメスミレについて次のように書いてありました。
本州から台湾にかけての人家近くのやや日当たりの良い場所を好む多年生の小草本で,無茎種であり,ふつう植物体には毛はない。根は白色で地中に深く入っている。葉は束生,葉身はほこ形の長卵形または長三角形で長さ2~4cm,基部は矢はず状の心臓形になるものが多く,深い緑色でやや光沢がある。葉柄は狭長で葉身より短い。4月に開花し,花柄は葉むらより高く伸び長さ10cmほど,中途に皮針形の包葉を2枚つける。花は濃紫でスミレに比べると大分小形で,横向きに咲き,径は10~12mmである。がく片は狭長でとがる。花弁は狭長で,側弁の内側には毛がはえ,唇弁の距は長さ3~4mm,ほとんど白色で紫の斑点が入っている。さく果は卵形で短かくとがり,断面はほぼ三角形,毛はなく,長さ7mmぐらいである。本種はスミレに近縁であるが,全体が小形,根は白色,花は小形,葉は矢はず状心臓形になるのでたやすく区別できる。
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トガリアミガサタケを初めて見つけました。
サクラの散る頃に発生するというのは本当だったのですね。
今までトガリアミガサタケと思っていたのは,アシボソアミガサタケでした。
(→2008/3/26)
図鑑で見比べても,両種の違いはもうひとつ実感できなかったのですが,トガリアミガサタケを実際に見てみると,茎の部分が随分太くて長く,アシボソアミガサタケが「足細」と呼ばれる理由がよくわかります。
[写真3]は,トガリアミガサタケ(左)とアシボソアミガサタケ(右)を,ほぼ同じ縮尺で並べたものです。(アシボソアミガサタケを採ってきて並べてみようと思ったのですが,いつもアシボソアミガサタケが発生している場所では既に発生時期を終えたらしく,1本も見つけることができませんでした。)
保育社「原色日本新菌類図鑑(Ⅱ)」によると,
トガリアミガサタケは
中形菌で高さは通常10cm内外,ときには16cmに及ぶことがある。
・・・
茎は円筒形でほぼ同幅で長さは頭部の長さとほぼ同長,上方は頭部の幅の約2/3内外
小形菌で高さ5cm内外
・・・
茎は円筒形,頭部より短くあるいはほぼ同長,上方はその幅頭部の1/2内外
トガリアミガサタケは茎の部分の色も濃くて,全体に大きくたくましい感じがします。
半分に切ってみると,中は虫が食ってぼろぼろになっていました。[写真4]
アシボソアミガサタケは今まで虫が入っていたことはなかったのですが,トガリアミガサタケは虫がつきやすいのでしょうか。
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ここ数日,同じところでカワラヒワを見かけます。
数羽が地面に降り立ち,餌をついばんでいます。
今は繁殖期です。
非繁殖期には数十羽の群れで生活するそうです。
飛ぶと羽の黄色い帯が目立ちます。
印象としては,黄色いスズメという感じです。
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(1996年)には,カワラヒワについて次のように書いてありました。
翼に鮮やかな黄色い模様を持った,市街地でも見られる小鳥。アジア北東部で繁殖し,日本では北海道から九州までの各地に留鳥として普通に分布し繁殖する。
繁殖期には平地から低山地のいろいろな林で見られるが,スギ林,マツ林などやや針葉樹を好む傾向があるように思われる。都市部の市街地でも普通に繁殖している鳥の一つで,公園の木や街路樹に営巣し,オスがメスに求愛給餌している場面も観察される。巣は枝の茂みに作られ,細根や枯れ枝が材料で椀形をしている。市街地ではビニールひもが多く使われる。産卵期は3~7月,卵数は3~5個,抱卵日数は11~13日位,巣立ちまでの日数は14日位である。非繁殖期には数十羽から数百羽の群れで生活し,川原や農耕地などの草の上や地上で草の実を食べる。
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ムラサキケマンの花に奇妙な虫がとまっていました。
花の蜜を吸っているわけでもなく,じっと動きません。
朝早くて体が温まっていないのでしょうか。
ハチかガの仲間かなと思ったのですが,アブのなかまでした。
ビロードツリアブといいます。
保育社「原色日本昆虫図鑑(下)」(1990年)には次のように書いてありました。
ビロウドツリアブ Bombylius major LINNAEUS
体長7~11mm。翅長9~13mm。体は太短く,地色は黒色で,白色長毛と淡黄褐色毛を密生する。触覚は黒色で細い。口吻は黒色で長く体長の7割の長さ。胸部背面には黒色長毛がまじる。あしは細い。翅は細く,基部と前半部は黒褐色。腹部は幅広く,側面と尾端には黒色長毛がまじる。成虫は春に現れる。幼虫はヒメハナバチ科の幼虫に寄生する。分布 日本全国;北半球。
口吻は体長の7割の長さと書いてあります。確かに長い口吻です。
しかも先がとがっていて,刺されたら痛そうな感じがします。
でも刺すことはないようです。
アブのなかまには,動物の血を吸うもの,昆虫の体液を吸うもの,花の蜜や花粉を食べるものがいます。
ビロードツリアブは花の蜜を食べるタイプです。
長い口吻をつかって,飛びながら花の蜜を吸うのです。
[写真3]を見ると,口のまわりに花粉がついているのがわかります。
花の蜜を吸うときに,ホバリングしながら空中に静止している姿が,吊り下げられているように見えることから「吊りアブ」の名がつけられています。
「学研生物図鑑 昆虫Ⅲ」(1999年)には,ビロードツリアブについて次のように書いてありました。
春にあらわれ,日当たりのよい林縁部などでよく見かけるふつう種。外見はマルハナバチとそっくりで,全面に黄色の軟長毛を密生し,腹部背板(第1節をのぞく)の各後縁には黒色の太い毛の列がある。雄の複眼は上部で接する。長い口吻(こうふん)は飛びながら花蜜を吸うのに適している。幼虫はAndrena属,Halictus属などのヒメハナバチ科の幼虫に寄生する。
「雄の複眼は上部で接する」ので,複眼が離れているこの個体は雌ですね。
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クチベニマイマイがシャガの花を食べていました。
カタツムリの口の中には,歯舌(しぜつ)と呼ばれる,微小な歯がたくさん並んだヤスリのような舌があります。
これで食物を削りとるようにして食べます。
二つの大触覚の間に瘤状の隆起が現れています。[写真5]
これは「頭瘤(とうりゅう)」と呼ばれるもので,生殖期になると大きくなります。
カタツムリの生殖期は5月から6月頃です。
触ったわけではないのですが,気配に気づいて触覚を縮めました。[写真4]
カタツムリの触覚は大小2対あり,大きいほうの触覚の先に目があります。
これは切りとっても100日ぐらいで再生するそうです。
小さいほうの触覚は食べ物の味やにおいを感じます。
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オドリコソウの花が咲いていました。
シソ科の特徴である唇形(しんけい)の花は,一見しただけではどんな構造になっているのかよく分かりません。
[写真3]は花を縦に切ったところです。
シソ科の花の特徴について,「朝日百科 植物の世界」には次のように書いてありました。
シソ科の花は,5枚の花びらが筒状にくっついた合弁花冠(かかん)である。左右対称で,上下に裂けた唇形(しんけい)をしている。科の学名も「くちびる」を意味するラテン語の「ラベア(labea)」に基づいている。日本でも,シソ科をクチビルバナ科や唇形科といっていたことがある。ふつう,上唇(じょうしん)は2つの裂片,下唇(かしん)は3つの裂片からなる。下唇の中央裂片がとくに大きくなり,側裂片が小さい場合が多い。
雄しべは4本が花冠につき,しばしば2本が長く,まれに2本に退化する。雌しべは1本で2心皮性,子房上位で,それぞれ2室からなり,各室に1個の胚珠(はいしゅ)ができる。子房は縦に4裂し,中央の裂け目の下部に花柱(かちゅう)がつき,種子が熟すと,子房は4つに分裂し,それぞれが中に1個の種子を入れた分果になる。がくの中に4個の種子があるように見える。種子には胚乳がない。
筒状になった花のつけねには蜜が入っていて,切断すると流れ出しました。
大柄な花なので,蜜はかなりの量になります。
踊り子の傘に擬せられる上唇に隠れて,雄しべと雌しべがあります。
実際に上唇は傘の役目をしていて,花粉が雨で濡れるのを防いでいるそうです。
4本ある雄しべのうち2本はすこし短くなっています。
雌しべはどこにあるのかよく分かりませんが,よく見ると雄しべの葯の間に二股に割れた柱頭が見えます。[写真4]
茎は4角形です。[写真5]
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ショカツサイによく似た花が咲いていました。[写真1]
アブラナ科の特徴である十字型の花びらで,花の大きさ,色合いもよく似ています。
でもよく見ると,実が違います。
ショカツサイの実が細長い蒴果なのに対して,ついている実は楕円形の平べったい形をしていて,中の種子が透けて見えます。
調べてみると,この花はゴウダソウといいます。
[写真2]は,ショカツサイの花とゴウダソウの花を並べて写したもの。
[写真3]は,葉を比較したもの。
左がゴウダソウ,右がショカツサイです。
[写真4]は,実を比較したもの。
左がゴウダソウで,右がショカツサイです。
ゴウダソウの実は,これからまだ大きくなって,形も丸くなってきます。
「朝日百科 植物の世界」には,ゴウダソウについて次のように書いてありました。
ギンセンソウ(銀扇草)の別名でも知られるゴウダソウはヨーロッパ南東部原産の二年草で,春の花壇や切り花用にしばしば栽培されるが,ヨーロッパ各地や北アメリカでは野生化している。また最近では,花を観賞するのではなく,劣開した後にも宿存する果実の隔膜をつけた枝を,ドライフラワーとして観賞する。別名のギンセンソウは,この果実が薄く半透明で銀色に輝くように見えるので,これを銀色の扇に見立てたことによる。また和名のゴウダソウは,この植物を1901年にフランスから導入した東京実術学校(現・東京芸術大学)の合田清の名に由来する。
属名はラテン語で月を意味する「luna」に由来し,果実を月に見立てたものといわれる。
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